報酬と取引
都市についた私たちはとりあえずクエストを終えるために、武器屋に来ていた。
「はい、十個で1000Gだから一人5000Gですね」
サラさんがそう言うとウィンドウが現れ、5000Gと赤いポーションが15個入っていた。今の私たちにとってこれは大金だ。しかしポーションはヒールがあるので、使い道があまりないかもしれない。
「ポーションももらっていいんですか?」
「ええ、駆け出しの冒険者には渡すようにしているのですよ」
つまり初心者の救済か。
「では、また甲羅が手に入ったら、来ますね」
「はい待ってますね」
そしてクエストの完了を知らせる鐘の音が響き、レベル8になった。その後ステータスを振り分けた私たちは掲示板のある広場へと移動した。
広場についた私たちはさっそく、掲示板で蟹の肉と蟹味噌を募集している人を探す。掲示板ウィンドウを開くと大まかに、アイテム、パーティー、ギルド、イベント、その他といったものが表示された。さっそくアイテムをタッチするとさらに詳細が表示される。武器や防具といった項目に別れており、食材の項目があったためタッチする。すると食材の交換、買い取り依頼が表示された。
「七百件以上ある……」
多すぎて探すのも億劫である。
「あ、検索機能があるみたいだよ」
「蟹で検索」
「はいよー」
検索すると三件表示された。うち一件は、蟹味噌のみの募集、もう一件はどちらも買い取ってくれるが、数量の指定をしていた。残りの一件は何個でも買い取ってくれるようなので、そちらと取引をする。名前はsynnさんというらしい。
「シンさんっていう人に買い取ってもらうね」
「ん、わかった」
ナツは掲示板ウィンドウを操作し、「依頼者にメール」をクリック。そのまま挨拶文から始まり、アイテムの数量、自分たちのいる場所を記載し、メールを送信した。
「よし、これでオッケー」
「すぐにメール返ってくるかな……」
こないのならまた蟹狩りにでも行こうかと考えていた。
「あ、返ってきた」
「早い」
「あ、買い取り価格だけど、肉が100Gで味噌が150Gだって」
二人合わせて肉の方は百七個、味噌が四十七個ある。一人当たり8875Gになる計算だ。初期の所持金1000Gと比べると、かなり儲けたと思う。
「今からここに来てくれるそうだよ」
まだこの世界に来て移動手段が乏しい私たちにとっては相手側が来てくれるというのはかなり助かる。
返信が来てから五分ほど経ったころ、銀髪の男性に声をかけられた。……イケメンである。
「こんばんは、蟹の食材で来たんだけど、ナツさんで会ってますか?」
「あ、こんばんは」
「こんばんは…」
「えっと、そちらの方は?」
「ユヅキ、ナツのペアをやってる……」
「なるほど、こんばんはユヅキさん」
「こんばんは」
もう一度挨拶をする
「じゃあ早速だけど、買い取らせてもらいたいんだけどいいかな」
「はい、大丈夫です、食材の方は私が一括して持ってるので、取引するのは私だけで十分です」
「それはありがたい、じゃあ取引ウィンドウを開かせてもらうね」
そう言って操作を始める。
「全部で蟹の肉が10700G、蟹味噌が7050G、合わせて17750Gになるよ」
「はい、大丈夫です」
取引の完了ボタンを押し、無事に売買が終わった。
「ありがとうございましたー」
「ありがとう」
お礼を言う。
「いやいや、こちらこそありがとう……そういえば君たちは初心者かい?」
これで終わりかと思ったら、話しかけられた。
「あ、はい、二人とも始めたばかりの初心者ですよ」
「なるほど、いや服装が初期状態のままだったから気になってね」
そういえば服は初期状態のままである。旅人が着てそうな服でほとんどの生地が茶色で形成されている。なぜかスカートで膝丈まである。
「そうですね、防具は一度も変えてないんですよ」
「あ、このゲームは防具を変えても見た目は変わらないよ」
驚愕の新事実である。ならば服装を変える他の手段があるのだろう。
「なぜ……?」
「このゲームは一つの世界に留まることっていうのはまずないからだよ。例えばこの世界で作った厳つい鎧や魔法使いが着てそうなローブで、科学が発達した世界に行くと、とても不釣り合いだろう?だから防具を身につけても見た目が変わらないんだ。それでも服装を変えずにいる人もいるけどね」
話を聞いて納得する。たしかにこのファンタジー世界でロボットのようなスーツや現実にある服装なんか着てたら目立つだろう。いわゆるTPOをわきまえろということだ。
「じゃあ洋服店などで買うということですか?」
「うん、この都市にもあるはずだから探してみると良いよ」
自分好みの服があると良いのだけれど……。
「分かりました。わざわざ取引だけでなく、こんなことまで教えていただいてありがとうございます」
「ありがとう」
「いや、かまわないよ。代わりと言ってはなんだけど、次の取引も僕に連絡してくれると嬉しいけど」
そんなことならお安い御用だ。
「ふふ、では次もぜひ連絡させてもらいます」
「ありがとう、じゃあ僕はもういくよ、次回もよろしく頼むよ」
「はい、こちらこそ」
シンさんはポケットから丸い宝石のような物を出し、何か口ずさむと足元に魔法陣ができ、そのまま消えてしまった。移動系のアイテムか何かだろうか。
「良い人だったね」
「うん」
「あ、お金渡すね」
そういって先ほど取引で得た金額の半分をもらった。さて次はどうするか……。
「服屋探す?」
「そうだね、せっかく教えてもらったんだし、探そっか」
次の目的が服屋に決定した。
ステータス
yuduki
Lv.8
HP165 MP58
ATK35+(5) INT24
VIT12+(1) AGL12-(1)
LUC12
熟練度
ハンマー212/500 魔術203/500
法術47/500
natsu
Lv.8
HP160 MP64
ATK27+(3) INT27
VIT12 AGL17+(2)
LUC12
熟練度
弓 216/500 魔術201/500
法術38/500 呪術3/500
他の世界にはまだまだ行きません。