武器屋とクエスト
武器屋に入ると、壁に様々な武器が飾られており、店内を見渡していると声をかけられた。
「いらっしゃいませ」
声をかけた主を見ると、茶色の髪をポニーテルにしている大体、二十代ほどの女性だった。
武具店の店主のイメージは厳つい親父のようなものを予想していたのにはずれてしまった。
「こんにちは、杖が欲しいんですけど……どんなものがありますか?」
「はい、杖でしたらこちらになります」
すると眼前にウィンドウが現れ、杖の一覧が出現する。
「一番安いので300ゴールド……」
「次に安いので1500ゴールドだから、それしか買えないね……」
所持金は1000ゴールドで、初期状態のままである。二人とも300ゴールドのステッキを購入し、オブジェクトの固定化、そのまま腰に装備する。
「お金も稼がないと」
「そうだねー」
二人してあれこれ、話していると店主の女性が声をかけてきた。
「お二人ともお金が必要なのですか?」
「は、はい……この街に来たばかりで、どうしようかと……」
「見たところ冒険者のようなので、私からちょっとした仕事があるのですが、受けてもらえないでしょうか?」
思わぬところでクエストが発生した。
「でも、私たちまだ駆け出しで、あまり難しいものは無理ですよ?」
それこそ、武器の材料が欲しいからドラゴンを倒してこい、など無理ゲーである。
「いえそんな難しいものではないので大丈夫ですよ、話だけでもいかがですか?」
内容がわからないことには判断しかねるので、とりあえず聞いてみることにした。
「では話だけでも……」
「はい、あ、まだ自己紹介がまだでしたね、サラと申します」
「ナツです」
「ユヅキ……」
自己紹介を済ませ、話しの続きを促す。
「仕事内容は、この都市から南にある海に出るサンドキャンサーの甲羅をもってきてほしいのです」
これは今の自分たちにはちょうどいいクエストじゃないだろうか。お金も稼げるし、経験値も入る。おそらくクエスト達成でも経験値がもらえる。しかし何個持ってくればいいのだろう?
「甲羅は何個……?」
「甲羅は何個でも持ってきてくれて大丈夫ですが、十個単位でお願いします。」
つまり何回でも受託が可能ということである。
「ゆーちゃんどうする?」
「受ける」
「ありがとうございます、場所の確認は大丈夫ですか?」
「都市から南ですよね?」
「はい、そうです、では頑張ってきてください」
そう言って、サラさんは柔らかくほほ笑んだ。
都市の南口に着いたため、装備とスキルの確認をする。杖で使えるスキルは、魔術、法術、呪術である。
魔術が『ファイアボール』、法術が『ヒール』、呪術が『ポイズンヴェール』である。見たところ魔術が攻撃、法術が回復、呪術が状態異常系になるようだ。おそらくヒールはINTが高ければその分、回復量を多くなるのだろう。状態異常系のものは、術のかかりやすさだと思う。
「確認終わった……?」
「うん、終わったよ。杖を持つだけで戦いやすくなるね」
特に回復ができるのはありがたい。
「蟹は固そうだから毒が役に立つかも……」
「そうだね、私の場合はファイヤボールは役に立ちそうにないかな」
「でも攻撃以外の術があってよかったね」
「だけど魔術スキルも上げなきゃいけないんだよね……」
「がんば……」
「それじゃあ、そろそろいこっか」
「うん」
こうして準備を整えた私たちは蟹狩りに向かうのだった。