中央都市ディパレスト
話が進まないですね。
しかしこのVRMMOの設定をいまいち活かせていない…。
ステータスの振り分けを終えた私たちは、ジョセフさんに話しかけ町まで飛ばしてもらうことにした。……なんで飛べるのかなんて知らないんだけどね。
「ふむ、それでは町まで飛ぶかね?」
「はい、お願いします」
ああ……。これでおじいちゃんともお別れだ……。
「おじいちゃん……ありがとう……」
「ありがとうございましたー!」
「うむ、さらばじゃ」
そしてログインした時のように白い光に包まれたのだった。
光がやむと広場のような場所に出ていた。周りにはレンガ作りの家が多く建っており、まるで外国に来たかのような気持ちになった。
「うわーすごい……」
噴水や植木が良い雰囲気をだしている。
「現実じゃ見られない風景だよね~」
探せばあるかもしれないが……。
「町というより都市……」
「ディパレストって名前らしいよー」
「なんで知ってるの?」
「そこの掲示板に書いてあったから」
視線を向けると「中央都市ディパレスト掲示板」と書かれていた。
「パーティーの募集やアイテムの交換依頼なんかが載ってるみたいだね」
なるほど。パーティーの募集は今後するかわからないが、アイテム交換なんかは何度かやる機会があるだろう。掲示板の周りには数人のPCがいた。その人たちを見ていてふと気付いたことがあった。
「ねぇなっちゃん、あの人たち剣や槍なんかとは別に杖もってる」
掲示板の周りにいた人たちは、武器の他に杖を携帯している人がほとんどだった。
「たしかにそうだね……。たぶん魔術の熟練度をあげるためじゃない?」
うん、まぁそうなんだろうけど……。
「なんか新しい戦い方ができる気がする」
「たとえば?」
「ハンマーでぶっ飛ばしたら、杖に持ち替えて魔法で追撃みたいな……」
「それいいかもしれないねーハンマーだけじゃなくて魔術の熟練度もあがるし」
二人とも魔法ハンマーと魔法弓を目指しているのだから魔術は鍛えなければいけない。そもそもそんなスキルあるのかわからないが……。
「でも私は魔術との併用は難しいかなー。どっちも遠距離っぽくない?」
「自身の周りを攻撃する魔術もあるかもしれない」
「んー、そうだね。なにはともあれ杖がないとねー……」
「武器屋を探す?」
「観光も兼ねてそこらへん見て回ろっか」
「うん」
中央都市ディパレスト観光が始まった。
街を歩くたびに、目に入る全てのものが新鮮に映る。商店街のような場所に入るとパン屋や骨董品のようなものを売っている店、暗い路地に入ってもバーやちょっと怪しい占い師の店など目新しい発見が多くあった。そんな中、ガラス細工を取り扱う店を見つけ、商品を眺めていた。
「あ……」
「どうしたの?」
「このガラスの鳥……」
目の前には、鳥には見えるがあまりにも不格好なガラス細工の置物があった。
「このガラスの鳥がどうかしたの?」
「このガラス細工の鳥、私が昔作ったのと、ほとんど一緒だ…」
「え、ほんと?」
「うん、小学校の頃、学校の授業で体験させてもらったことがあったの、その時作ったものなんだけど…二か月くらい前に落として割っちゃったんだ……」
これがここにあるということは私の記憶を読み取りオブジェクトとして創造したということなのだろう。
「思い出の品だったりする?」
「ううん、思い出というより記念品みたいな感じかな……」
なんとなく飾っていたら、そのまま部屋の一部になっていた。
「買わなくていいの……?」
「うーん……いや、いいよ、現実に持って帰れるわけでもないから」
「そっか」
結局はこのガラス細工はゲームの中で創造されたものであって、私が部屋に飾っていた物とは別なのである。
「それよりあれ武器屋じゃない?」
前方に剣と剣が交差している看板をぶら下げた店がった。
「なんかそれっぽいねー」
「杖買って、さっさと狩りに行きたい……」
「ゆーちゃん、怖い」
失礼な。
そして私たちは武器屋の扉を開けた。