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現代最強呪術使い、鶴破下郎  作者: もふもふ男爵


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3/5

笛吹き男・上

 牛鬼討伐から約半年、この日蒼介は珍しく一人で呪術組合に訪れていた。この半年、蒼介は下郎のサポートとして活動し、以前と比べれば見違えるほどの成長を遂げていた。


「あれぇ? あんたハゲ郎ちゃんのとこの葦草だっけ? 今日は一緒じゃないのぉ?」


 蒼介が一人で、現在確認されている怨霊についての掲示板に目を通していると、横から甘ったるい声をした少女が話しかけてきた。


「あっはい。下郎さんなら今日は娘さんの送迎をしなきゃいけないらしくて。あなたは確か……曽場さんでしたっけ?」


「ソフィー」


「えっ?」


 困惑する蒼介。


「ソフィーと呼びなさい!」


 派手な金髪を後頭部で纏め、明らかに校則に違反してそうな着こなしの制服姿をした日本人と思われる少女に、蒼介は困惑しつつも強引に押し切られた。


「アンタ階級は?」


「えっと、B級です。B級呪術使いの葦草蒼介っていいます!」


「ちっ! アンタ短大出かよ。いいわね金持ちは、階級まで金で買えて! でも調子に乗るんじゃないわよ? ここでは私の方が先輩なんだから、ソフィーさんと呼びなさい!」


 少女は舌打ちすると、蒼介に詰め寄った。


「あっはい。よろしくお願いしますソフィーさん……?」


 少女は蒼介を品定めするように眺める。


「ふーん……案外素直じゃない? いいわ! 今日は私の仕事を手伝わせてあげる。どうせ暇だったんでしょ? 報酬は7:3ね。もちろんアナタが3よ?」


 口早にそう告げると、少女は出口へと向かう。


「なに? 文句でもあるのっ?!」


 あまりの一方的さに蒼介は呆気に取られて反応することができなかった。


「いっいえ! 今行きます! いやでも三割は少なくないですかっ?!」


 こうして、蒼介とソフィーこと和子の凸凹コンビは、街に潜み人を害する怨霊の討伐に向かうのだった。


「あんた、車は?」


「持ってないです」


「ちっ! 使えないわねー。しょうがないバスで行くわよ」


****************


「あの、怨霊討伐ですよね? どこに向かってるんです? このバス都心の方に向かってないですか?」


 和子を追いかけバスに乗り込んだ蒼介だったが、バスの行き先がいつもとは違うことに気づく。普段の下郎との怨霊討伐では、光を嫌う怨霊が発生する夜の郊外に向かうことが多かった。


「あぁ、ハゲ郎ちゃんは大物専だからね。でも都会も怨霊が発生しないわけじゃないの。むしろ数だけならこっちの方が多いし、身近な分人に悪さもしやすいわ」


 そうだけ言うと和子はスマホを取り出し、黙り込んだ。


「ソフィーさんはなんで呪術使いになったんですか? それもまだ高校生なのに」


 移動時間の沈黙に耐えかねた蒼介は和子のことを聞いてみることにした。


「はぁ? そんなこと普通聞く? 別にふつうよ。たまたま呪術使いの家に生まれて、たまたま家が貧乏だったから。低級の怨霊相手にする分にはそんなに危険もないし、バイトするよりか割りが良かったってだけよ」


 多少不機嫌になりつつも質問には答えた和子。またしばらくの沈黙が流れ、一行は目的地に到着した。


*************


「それにしても、こんな大都会の真ん中に本当に怨霊が出るんですか? それもこんな昼間に?」


 繁華街で人混みを縫うように歩く和子に、蒼介は必死について行く。


「なに? アンタそんな事も知らないの? まったく……そもそも怨霊はこの世に未練を残したまま死んだ魂が変容したもの。つまり、人が多い場所ではそれだけ発生しやすくもなるのよ」


 蒼介の無知さに呆れつつも、和子は道中、怨霊について説明してやることにした。


「アンタみたいな呪術短大出のエリート様は最初からB級で強力な怨霊の相手をしてるのかもしれないけど、それ以外の大多数は私たちみたいなぽっと出の家系や弱い呪いしか持たないC級が退治してんのよ」


 和子は説明しながら、やや入り組んだ裏路地へと入っていく。


「都会の夜は明るいからね、むしろ昼間の裏路地の方が暗くて……ほらいたっ!」


 和子の視線の先には、真っ赤な顔をした、頭部のみのおじさんの様な怨霊がいた。頭部のみのおじさんは、さくらんぼの様にヘタの様なもので二人一組に繋がっている。


「あれは……チェリーゴーストですか?! 生涯女性と縁がなかった男性の霊が寂しさを埋めるため、同じ様な境遇のもの同士で融合した!」


 路地の角から顔を出し様子を伺う二人。


「そっ、でもってやっぱりこれはなんか違って、常に涙を流してるってわけ。見ててあげるから、アンタ一人で戦いなさい。低級の怨霊一体くらい楽勝でしょ?」


「えっ? ソフィーさんは戦わないんですか?」


「私の呪いは実体がない奴には効かないのよ。ほらっ、人避けの結界は張ってやったから。S級呪術使い、脇宮薫の汗から作られたスプレーよ。これをしとけばよっぽど強い目的意識がない限り、なんか嫌な感じがしてこの道は迂回するわ」


 おえっと吐きそうなジェスチャーをしながら結界を張る和子。蒼介は観念して一人怨霊と向かい合う。


「えっと、俺の呪いは足の臭い、『足臭さ(あしくさ)』です。直接顔に足を当てれれば、中級までくらいの怨霊は一発で倒せるし、人なら気絶させれます」


 怨霊と向き合った蒼介はリズムをとりながら間合いを詰めていく。


「問題はどうやって足を相手の顔に当てるかで、そこで葦草家の出した答えが、このカポエイラです。直接当たらずとも、こうして相手の攻撃を躱しながら足の臭いを充満させ相手を弱らせてっ! こういう風に倒します! どうでしたか?!」


 足の臭いで弱った怨霊は徐々に勢いを無くしていき、ついには蒼介の蹴りをモロにくらい消滅した。


「えっ? ふーん、まあいいんじゃない?」


 見ててあげるとは言いつつも、和子の視線はスマホに向いていた。


「ていうか時間かけ過ぎ! そんなザコさっさと倒しなさいよ! まだ報酬が少なすぎるから次行くわよ?!」


 その時、どこからともなく笛の音のようなものが聞こえてきた。


「なんです? この音? あれは……小さいおじさん?」


 蒼介が見たのは、身長一メートル前後の小さい緑のおじさんがラッパのようなものを吹きながら、白いワゴン車に乗り込んでいくところだった。奇妙なのは、その後ろを小学生くらいの少女たちが笛の音に導かれるように、ゾロゾロと五人程度ついて歩いていた事だ。


 白いワゴン車は、少女たちが全員乗り込むと、バンと音を立てドアが閉まり走り去っていった。


「えっと、なんすかあれ?」


「なにやってんのよ! バカ蒼介っ! どう見たってあれは怨霊じゃない! 警察に連絡! 呪術案件だって言えば伝わるから!」


 呑気な蒼介に対して、和子は血相を変えワゴン車を追おうとするも、すでに走り去ってしまっていた。


 蒼介が今見たことをそのまま、警察に通報し終わると、和子は何やら路上に停めてあった大型のバイクの鍵穴周りをガチャガチャといじくり回していた。


「よしっ! かかった!」


 突然、バイクがブウォン! となると和子はそれに跨り蒼介に後ろに乗るよう指示する。


「何やってんの! さっさと乗りなさい!」


「はっ、はい! えっと、これソフィーさんのバイクじゃないですよね? 免許持ってるんですか?」


 蒼介はまだ事態を読み込めておらず困惑しながら和子の後ろに跨る。


「緊急事態! 心配しなくていいわ! 私昔からレースゲームは得意なのよ!」


「あっ、安全運転でお願いしますぅ!」


 二人がワゴン車を追うため発車した直後、路地裏には怒声が響いていた。


「おい待て! ガキども! ふざけんじゃねー! 俺の買ったばっかのハーレーかえせぇっっ!!」

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