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婚約破棄されたので距離を置いたら、なぜか周囲が過剰に優しくなりました ―悪役令嬢は何も取り戻さないと決めたのに、静かに溺愛されています―  作者: リリア・ノワール


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第14話 便りのない日

その日は、朝から静かだった。


庭の空気はやわらかく、

風もほとんどない。


足音が一つ。

そして、もう一つ。


並んで歩く。


午前、書斎に向かう。


机の上には、

何も置かれていなかった。


港町からも、

南の町からも、

新興地域からも。


便りが、ない。


私は椅子に座り、

何もない机をしばらく眺める。


以前なら、

不安を覚えたかもしれない。


問題が起きているのではないか。

判断を求められているのではないか。


今は違う。


動いているから、

便りがない。


確認が不要だから、

沈黙している。


それでも、

胸の奥に小さな空白が生まれる。


午後になっても、

何も届かない。


アレクシスが静かに告げる。


「本日は外部からの文書はございません」


「そうですか」


私は答える。


声は落ち着いている。


けれど、

内側が少し静かすぎる。


夕方、庭に出る。


足音が重なる。


「何も届きませんでした」


私は言う。


「良いことでは」


彼は穏やかだ。


「ええ」


私は頷く。


「ですが、少しだけ」


言葉を探す。


「空白のようです」


彼は歩調を変えない。


「空白は、悪いものですか」


私は首を横に振る。


「いいえ」


空白は、

私が望んだ結果だ。


自立が進み、

判断が内部で完結する。


私が不要になる。


それが理想。


夜、書斎に戻る。


机の上は、

朝と同じままだ。


私は紙を一枚取り、

何も書かずに置く。


便りがないということを、

記録する。


「外部報告なし」


短い一文。


それだけ。


窓の外に星が見える。


名が外れ、

合理が訪れ、

隣が問われた。


そして今日、

沈黙が訪れた。


私は気づく。


私は、

必要でなくなることを選んだ。


だから、

今日の空白は、

成功の証だ。


それでも、

少しだけ静かになる。


足音が重なった時間を思い出す。


並ぶ。


それだけは、

便りがなくても変わらない。


私は灯りを落とす。


空白は、

欠落ではない。


余白だ。


私はその余白の中に、

静かに立っている。


それが、

今の私の選び方だった。


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