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第4話「好きです——魔法少女さん」

 また別の日。


「今日は……正面から抱きしめてほしいの」


 月城さんが、さらに恥ずかしそうに言った。


「正面……ですか?」

「うん。その方が、魔力の伝達効率がいいらしくて……心臓同士が近い方が、信頼の波動が伝わりやすいの」

「信頼の波動……」


 なんだかファンタジーな説明だが、魔法少女なのだから仕方ない。


 つまり、向かい合って抱きしめるということ。

 彼女の顔が、俺の目の前に来る。

 彼女の胸が、俺の胸に押し付けられる。


 ……これは、まずい。


「じゃあ……お願い」


 月城さんが俺に向かって立った。

 俺は覚悟を決めて、彼女を抱きしめた。


 正面からだと、感触が全然違う。

 彼女の胸が、俺の胸に潰される。

 柔らかくて、温かくて、弾力がある。

 

 彼女の顔が、俺の肩に埋まる。

 彼女の息が、俺の首筋にかかる。

 温かい息。甘い香り。


「じゃあ……解除」


 光が収まり、彼女は下着姿になった。


 正面から抱きしめているせいで、彼女の体が俺に密着している。

 胸と胸。お腹とお腹。太ももと太もも。


 彼女の体温が、直に伝わってくる。

 柔らかい胸の感触が、俺の胸を押している。

 彼女の心臓の音が、俺の胸に響く。


 ドクン、ドクン、ドクン。


 速い。すごく速い。

 俺の心臓も、同じくらい速く打っている。


「……ねえ」


 月城さんが、俺の肩に顔を埋めたまま言った。


「もう少しだけ……このままでいい?」

「……はい」


 俺たちは、しばらくそのまま抱きしめ合っていた。


 仕方なく、している。

 そう言い訳しながら、二人とも離れようとしなかった。


 そして——毎回、彼女のことが好きになっていく。


---


 ある夜のこと。


「ねえ」


 変身解除の後、月城さんが俺に言った。

 まだ下着姿のまま、俺に抱きしめられている状態で。


「なんですか」

「どうして、こんなことしてくれるの?」

「こんなこと?」

「私の世話とか……変身解除の手伝いとか」


 月城さんは俺を見上げた。

 潤んだ瞳。赤い頬。


「普通、こんな面倒なこと、しないでしょ」


 俺は少し考えた。

 そして、正直に答えた。


「月城さんのことが、好きだからです」


 月城さんの目が見開かれた。


「……え?」

「三ヶ月前、助けてもらった時から、ずっと好きでした」

「で、でも……私、だらしないし、部屋汚いし……」

「知ってます。でも、好きなんです」


 月城さんの顔が、真っ赤になった。


「……バカ」

「はい」

「もっと早く言ってよ」

「すみません」

「……私も」


 月城さんは俺の胸に顔を埋めた。


「私も……あなたのこと、好き」


 俺の心臓が、跳ね上がった。


「最初に助けた時から、ずっと……気になってた」

「だから、二回目も助けてくれたんですか」

「……うん」


 月城さんは恥ずかしそうに頷いた。


 俺は彼女を抱きしめる腕に、少し力を込めた。

 彼女の体が、より密着する。


「月城さん」

「……美咲、って呼んで」

「美咲さん」

「……うん」


 彼女は俺を見上げた。

 潤んだ瞳が、俺を見つめている。


 そして——


 俺たちは、自然とキスをした。


---


 それから、俺と美咲さんは恋人になった。


 彼女は相変わらず魔法少女で、相変わらずだらしない。

 でも、俺の隣にいてくれる。


---


 恋人になってから、最初の変身解除の日。


「ねえ、今日も変身解除、お願い」

「はい」


 俺は美咲さんの後ろに回り、彼女を抱きしめた。

 いつもと同じ。彼女の体を抱きしめて、解除を待つ。


 でも——何かが違う。


「じゃあ……解除」


 光が収まり、美咲さんは下着姿になった。

 いつもの水色のブラジャー。お揃いのショーツ。


 今までと同じはずなのに——俺は、もう目を逸らさなかった。


「……見ないの?」

「……見たいですけど」

「バカ」


 美咲さんは真っ赤になって、俺の胸に顔を埋めた。


「……でも」

「でも?」

「……ちょっとだけなら、いいよ」


 彼女は恥ずかしそうに、俺を見上げた。


 俺は——その許可を、遠慮なく使わせてもらった。


「……見すぎ」

「すみません」

「……嘘。もっと見て」


 美咲さんは、いたずらっぽく微笑んだ。


 恋人になったからといって、変身解除の度に密着することは変わらない。

 でも、その意味は、少しだけ変わった。

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