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追放されたけど、最弱スキル〈保存庫〉で辺境スローライフ満喫します  作者: 妙原奇天


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第7話 王都からの黒い馬車

 翌朝、砦の門に再び角笛が鳴り響いた。

 見張り台の兵が叫ぶ。


「王都からの使者だ!」


 霧を割って現れたのは、漆黒の馬車。

 車輪には銀の装飾が施され、護衛の騎士は十騎以上。

 塩商会とは比べ物にならない威容だった。


 砦の兵たちがざわめく。

 サラの表情が硬くなる。


「……やはり動いたか。商会の背後にいるのは貴族だ」


 馬車が止まり、扉から一人の男が降り立った。

 細身の体に深紅の外套。

 長い髪を後ろで束ね、口元には冷たい笑み。


「辺境守の皆々よ、ご機嫌よう」


 その声はよく響き、広場にいた全員を黙らせた。


 会議室。

 男は名を名乗った。


「私はカーヴェル侯。王都より参った。……聞いているぞ。保存の術を持つ者がいると」


 その目が、真っ直ぐに俺を射抜いた。

 冷たく、底知れない光。


「術を王都へ献上せよ。さすれば褒美を取らせ、爵位を与える」


 将たちがざわめく。

 爵位――それは平民にはあり得ぬ栄誉。

 だが俺は首を振った。


「……できない」


「なぜだ?」


「保存庫は俺自身のスキルだ。方法を渡すことはできない」


 カーヴェル侯の目が細くなる。

 次の瞬間、笑みが冷たく深まった。


「ならば、そなたごと王都に連れていこう」


 空気が凍りついた。

 護衛の騎士たちが剣に手をかける。

 兵たちがざわつき、剣を抜こうとする。


 だがサラが卓を叩き、声を張った。


「ここは辺境守の領域! 王都の命であろうと、力ずくで奪うことは許さない!」


 剣が抜かれ、会議室は一触即発の空気に包まれた。


 その夜。

 砦の石壁の上で、俺とサラは肩を並べていた。

 星は雲に隠れ、風は冷たい。


「リオン。……彼らは必ずもう一度迫る。王都の命を楯にして」


「わかってる」


「なら、どうする?」


 俺は空を見上げた。

 静かに暮らしたい。

 けれど、この力を狙う者は次々と現れる。


「……守るしかない。俺の保存庫を、俺自身の手で」


 サラがわずかに笑った。


「ならば私の剣は、あなたを護るためにある」


 灰色の瞳が夜の中で光る。

 その強さに、胸が熱くなる。


 翌日。

 砦の広場に兵たちが集められた。

 カーヴェル侯の騎士団が門の前に陣取り、最後通牒を告げた。


「保存の術を献上せよ。さもなくば――この砦ごと討つ」


 緊張が走る。

 兵たちの視線が俺に集まる。

 心臓が激しく打ち、喉が乾く。


 ――ここで選ばなければならない。


 静かに暮らすために、黙って従うのか。

 それとも、力を守るために戦うのか。


 サラが隣に立ち、囁く。


「リオン。決めるのは、あなた自身だ」


 俺は息を吸い込み、声を張り上げた。


「俺は――保存庫を誰にも渡さない!」


 その瞬間、兵たちの士気が沸き立ち、剣が一斉に掲げられた。

 カーヴェル侯の目が冷たく光る。


「ならば力づくで奪うまで」


 霧の中で、戦の火蓋が切られようとしていた。


(つづく)

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