第28話 戦後の処遇
黒炎の軍勢が退けられて三日。
王都は瓦礫の片付けと祝祭のざわめきに包まれていた。
広場には人々が集い、子供たちは「白炎の歌」を口ずさみながら跳ね回る。
だがその明るさの影で、重苦しい評議が開かれていた。
大広間。
捕えられた闇炎の術師や兵が並べられ、王と諸侯が見下ろしている。
その中央に、かつて仮面をつけていた男が跪かされていた。
黒炎を操った張本人――だが今は痩せ細り、ただの人に見える。
王が静かに告げた。
「汝らは闇炎を用い、国を乱した。罪は重い。だが……」
その声が一拍置かれ、広間が静まり返る。
「炎は人の心から生まれる。ならば本当に裁かれるべきは、炎を呼んだ“心の在り方”ではないか」
諸侯がざわめく。
「甘すぎる」「見せしめが必要だ」と声が上がる。
だが民衆の中からは「救ってやってほしい」という声も届いていた。
その視線が、俺に向けられる。
「リオン・グレイ。汝は白炎を扱う者。――この者たちの裁きを、どう考える?」
胸の奥で白炎が脈打つ。
闇炎に囚われた人々の目を見れば、恐怖と後悔が入り混じっている。
彼らはもとはただの人間で、弱さを抱え、絶望に飲まれただけだった。
俺は深く息を吸い、言葉を選んだ。
「彼らを斬り捨てても闇炎は消えません。人の心にある限り、また現れる。
ならば……均すことを諦めず、導き続けるしかない」
広間にざわめきが広がる。
賛同の声と反対の声が入り混じる中、王が口を開いた。
「よかろう。闇炎に触れた者たちは牢に繋ぐのではなく、食糧院の管理下に置く。
リオン、汝が見張り、彼らが再び立ち上がれるよう導け」
その宣言に反発はあったが、王の威光が押し切った。
評議の後、サラが俺に近寄った。
剣を腰に下げ、真剣な瞳で言う。
「……重い役目だな」
「わかってる。でも、これは俺にしかできない」
保存庫の奥で、白炎が淡く揺れる。
その光は炎というよりも、灯火のように人を照らしていた。
「均すだけじゃなく、導く……それが俺の次の役割だ」
口にした瞬間、胸の重さが少しだけ軽くなった。
夜。
牢の代わりに設けられた施設で、闇炎に囚われていた人々が横たわっていた。
俺は保存庫から取り出した清らかな水を渡し、一人ひとりに声をかけた。
「君たちは捨てられたわけじゃない。ここからやり直せる」
弱々しい瞳に、わずかな光が戻るのを見た。
白炎がその瞬間、ひときわ明るく燃え上がった。
だがその裏で――。
地下の密室では、まだ火は消えていなかった。
黒い燭火を前に、新たな影が立ち上がる。
「リオン・グレイが導く者だと? ならば我らは“断ち切る者”となろう」
声が重なり、冷たい笑いが響く。
闇炎は形を変え、再び国を試そうとしていた。
(つづく)




