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追放されたけど、最弱スキル〈保存庫〉で辺境スローライフ満喫します  作者: 妙原奇天


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第24話 揺らぐ均衡

 食糧院が設立されてから一月。

 王都はかつてないほど穏やかだった。

 市場は豊かに満ち、飢えた者は一人もいない。

 街路では「保存庫粥」を食べながら笑う子供たちの姿があった。


 だが、俺の胸には微かな違和感が芽生えつつあった。


「リオン様! この魚も保存庫を通してください!」

「この薬草も! これで病を治したいのです!」


 人々は次々に頼みを口にする。

 喜びの声の裏に――依存の色が見え始めていた。


 サラが横で低く呟く。


「……均衡が崩れつつある。保存庫があるからこそ、皆が自分の力で工夫するのを忘れ始めている」


 その夜。

 保存庫を開くと、白炎がひときわ強く燃え上がった。

 炎は静かに脈打ち、まるで警告を告げるように揺れていた。


「……俺が、やりすぎているのか?」


 掌に宿した光は、温もりと同時に重さを帯びていた。

 俺が選ぶたびに、この国全体の在り方が変わっていく。


 その自覚が、胸を締めつける。


 翌日、王宮での会議。

 王が議題を告げた。


「食糧院の力をさらに広げ、遠方の諸侯の地へも供給を行うべきだとの声がある」


 諸侯の使者が次々に訴える。


「我が地も救ってくれ!」

「保存庫を通せば、すべてが安泰となる!」


 その言葉に俺は迷った。

 力を使えば確かに救える。だが、依存が広がれば国は脆くなる。


 答えを探そうとしたとき――突然、広間の扉が破られた。


 現れたのは仮面の一団だった。

 黒装束の兵、そして紅の紋章を刻んだ指揮官。


「保存庫を渡せ! その炎こそ、この国を滅ぼす根源だ!」


 叫びとともに、矢が放たれる。

 サラが即座に剣を抜き、矢を弾き落とした。


「リオン、下がれ!」


 俺は保存庫を開き、白炎を呼び出す。

 光が広間を満たし、矢を鈍らせる。

 だが、今回は違った。


 矢は炎に触れながらも、燃え尽きずに黒く歪んだ光を帯びたのだ。


 指揮官が冷笑する。


「我らは〈闇炎あんえん〉を得た。貴様の白炎に対抗する、もう一つの火だ!」


 闇炎は広間を覆い、白炎と激しく衝突する。

 光と闇が拮抗し、空気が軋んだ。


 サラが必死に剣を振るい、敵を押し返す。

 だが数は多く、押され始めていた。


 俺は拳を握り、白炎に問いかける。


「どうすれば……どうすれば、この均衡を保てる?」


 炎は揺らめき、答えるように掌へ力を宿す。

 その瞬間、白炎は糸のように伸び、闇炎を絡め取った。


 調律――それが唯一の答えだった。


 闇炎が弱まり、敵は狼狽した。

 だが指揮官はなお叫ぶ。


「均す炎など偽りだ! 力は必ず争いを呼ぶ!」


 その声が広間に残響し、やがて闇に消えていった。


 静けさが戻る。

 だが俺の胸には、深い疑念が残った。


 ――白炎と闇炎。

 もし二つの炎が均衡を崩したとき、この国はどうなるのか。


 保存庫の奥で、白炎が静かに揺れ、未来を問うように燃えていた。


(つづく)

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