第21話 評議会の崩壊
王都の鐘が重く鳴り響く。
王命による特別評議が開かれる日だった。
俺とサラは王宮の大広間に足を踏み入れる。
豪奢なシャンデリアが光を放ち、円卓には貴族たちが並んでいた。
だが、その視線は一様に冷たい。
俺を英雄と見る者もいれば、脅威と見る者もいる。
ざわめきが渦巻く中、王が入場し、場が静まり返った。
「今日の議題は、保存庫の扱いについてだ」
その声に空気が張り詰める。
まずカーヴェル侯が立ち上がった。
赤い外套を翻し、鋭い視線を俺に突きつける。
「保存庫は確かに民を救った。だが同時に、国の秩序を揺るがす。塩商会は崩れ、財は乱れ、軍の補給すら危うい」
「ではどうするつもりだ?」
王が問う。
「簡単なこと。保存庫を王家の管理下に置く。リオン・グレイを拘束し、力を徹底的に利用するのだ」
広間にざわめきが広がった。
反対の声もあれば、賛同の声もある。
民の歓声が外から届いているにもかかわらず、貴族たちは耳を塞いでいるようだった。
俺は一歩前に出た。
保存庫を開き、白炎を掌に宿す。
光が広間を照らし、ざわめきが止む。
「保存庫は奪うものじゃない。これは俺自身の一部だ。もし拘束されれば、力は沈黙するだろう」
その言葉に、数人の貴族が顔をしかめる。
カーヴェル侯は嗤った。
「虚勢だ。ならば試してやろう!」
彼の合図で、天井から煙幕が落ち、黒装束の兵が雪崩れ込んできた。
広間はたちまち戦場と化した。
「リオン!」
サラが剣を抜き、俺を庇うように前に立つ。
俺は保存庫を開き、白炎を放った。
光が波のように広がり、黒装束の刃を鈍らせ、鎧を錆びさせていく。
兵たちが次々に膝をつき、呻き声を上げた。
だが、白炎は止まらなかった。
広間全体を包み込み、絨毯や柱さえも柔らかな光に染めていく。
「これは……」
王が驚きの声を上げる。
白炎は暴れることなく、すべての性質を「均す」。
怒りも憎悪も、力も――静かに調律していく。
やがて煙が晴れ、黒装束たちは剣を落としていた。
広間は静寂に包まれる。
カーヴェル侯だけがなお立ち、歯を食いしばる。
「化け物め……その力こそが災いを呼ぶ!」
叫びを残し、侯は退いた。
だがその目は狂気に燃えていた。
王は立ち上がり、俺を見据えた。
「リオン・グレイ。汝の力は確かに危うい。だが同時に、この国を救う光だ」
その言葉に、民衆の歓声が外から轟く。
王は続けた。
「ゆえに命じる。お前は“食を守る者”に留まらず――“国を支える柱”となれ」
広間が揺れた。
貴族たちがざわめき、サラが息を呑む。
俺は拳を握り、深く息を吐いた。
静かに暮らす夢は、もう遥か彼方。
それでも――歩みを止めるわけにはいかない。
保存庫の奥で、白炎がひときわ強く燃え上がった。
(つづく)




