1/17
―空の上から―
人は、空を見上げるとき、何を想っているのだろう。
願い。後悔。憧れ。──あるいは、恋。
それらすべてを見守るのが、私たち天使の役目だった。
喜びも悲しみも知ることなく、ただ静かに、見下ろすだけ。
……そう、“彼”が恋をしてしまうまでは。
天使は人間に恋をしてはならない。
それは永遠に変わらぬ掟。
それでも、彼は選んだのだ。天使であることを捨て、恋を取るという選択を。
この物語は、そんなひとつの“禁忌”から始まる。
――空の下、誰かを見つめてしまった天使と。
空を見上げて生きてきた、孤独な少女の話。