女子会って終わりが見えないよね
甘酸っぱさをかもしだす親友たちを見つめ、エマはわざとらしく「あ~あぁ」と声にだして肩をすくめた。
「どこもかしこも青春してるー。浮いた話の1つもないのは私だけですかぁ」
やれやれと言いたげにこぼせば、「なにを言っているんだ」とばかりに2人に見られた。
「なにを言ってますの、エマ」
そんでもって、実際口にも出された。
「そうですよ。エマさんこそモテモテじゃないですか」
「えぇー、婚約話ならミレーヌちゃんたちだって山のように来てるじゃん。「お慕いしています」とか手紙もらっても「嘘つけ」ってまったくときめかないんですけど」
なにせ一目ぼれどころの話じゃない。
少しでも交流がある相手ならともかく、互いに顔も知らないのに「お慕いしています」とかむしろ怖い。
「そっちじゃありませんわ」
「ほら、クルトさんとか……」
なおも納得せずに詰め寄ってくる2人にエマは再度「えぇー」と声を漏らした。
「あれはただのマヨ目当ての求婚じゃん。本気じゃないって」
あはは、と笑って答えたところでノックの音が響いた。
侍女が扉へと向かい、やがて半分ほど開かれた扉から顔をのぞかせたのはエリザベスの2番目の兄だった。
「失礼、レディ。ご歓談中のところをお邪魔して大変申し訳ない」
茶目っ気を含み、まるで芝居のように大げさに礼をしてみせる第2王子。
「乙女のお茶会に乱入するなんてなにごとですの?」
わざとぷんっと頬を膨らませてみせる妹に「ごめん、ごめん」と謝った王子の目的はエマだった。
同盟についての件で確認したいことがあるがレオンは会議中で時間が取れず、それで魔王城ではレオンの秘書的な役割を果たしていたエマのところに来たらしい。
「ごめん、ちょっとだけ抜けるね」
パタンと閉まるドアを見送り、残されたミレーヌとエリザベスは顔を見合わす。
どちらともなく身を寄せ合う。
「ねぇ、あれって本気かしら?全然気付いてませんの?嘘でしょ……」
「クルトさん……エマさんのこと……お好き、ですよね?」
確証はないがミレーヌはずっとそう思っている。
たしかに初対面の求婚は本気でないとしても(クルトは大真面目だった)、早い段階で好意を抱いていたと思う。
「……たぶんだけど……お兄さまもエマを意識してない……?」
こちらも確証はないが、エリザベスは帰還後の兄の姿に気になっていたことを問いかけた。
ミレーヌが少し目を見開き、口元に手を当てる。
「え……では、三角関係?」
「……ってこと?!」
2人はますます身を寄せ合った。
そしてあることに気付いたミレーヌがあっと声をあげる。
「お2人だけじゃありません。グリオン様もです」
「グリオン様……って魔王様ですわよね?!」
「ええ、こちらはたぶん確実だと思います」
なにせこちらはわかりやすくエマを意識していた。
大興奮したエリザベスにグリオンはどういう人物なのかと質問攻めにされる。
ソルトの少年態はエリザベスも目にしたことがあるので、姿は彼と同じぐらいの少年で……と話せば何かがツボったのか「年下ですの?!」と叫ばれた。実年齢はかなり年上です。
「ねぇ、待って。ソルトくんはあれってどうですの……?」
「恋愛感情……とはまたちがうのでは?ソルトはそもそもそういうのを理解してない気もしますわ。それと……こちらも恋愛とはまた別な気もしますが……」
「まだありますのっ?!」
「エアリス神様も、エマさんには随分と気を許してらっしゃるように見えました」
「エマ……、あなたいったいどれだけ……」
そんなこんなでエマが戻ってくるまで、ミレーヌとエリザベスはエマの恋愛模様で大盛り上がりしたのでした。
エマが戻ってくる直前、話題はハリソンへと移り……。
「ただいま」
「「おかえりなさい」」
椅子に腰かけたエマは糖分補給とばかりにお菓子に手を伸ばしさくりと歯を立てた。
「ねぇねぇ、なんか盛り上がってたけどなんの話?」
「今度ハリソンさんが結婚なさるそうです」
「え?!」
思わずエマは目と口を大きく開けた。
「神託のこともあって、一度は婚約解消も申し出たらしいわ。でもお相手の女性は「何年でも貴方を待ちます」って宣言したの。社交会では有名な話よ」
きゃっ!と声をあげつつエリザベスが語る。
なるほど、たしかに令嬢方がときめきそうな恋物語だ。
にぎやかな女子会は夕方までずっと続いたのでした。




