全員もれなく堕ちました
魔王さまと、ついでに「ぼくもお昼寝―」と便乗したソルトを見送り、さて、と城の住人であるアストたちへと視線を向けた。
「起きたらきっちり栄養もとらせないとね。魔王さまの好きなものでも用意してもらったら……なに?」
難しい顔をしたり、困ったような笑みを浮かべる四天王のみなさんの様子に首を傾げる。
「好きなもの……一番よく食されるのは携帯食料だろうか」
「あー、あれ。書類片しながら合間によく食べてるわね」
「おい」
「グリオン様はぁーちょっと偏食なのよねぇ。お肉も薄いのならともかく、脂身ダメだしぃお野菜も嫌いだしぃぃ」
「そこはお子さま」
「そーいうソアラだって菓子とフルーツしかほぼ食わねぇじゃねぇか」
「アンタだって肉ばっかでしょ。人のこと言えないわよ」
「問題児ばっかりか」
四天王たちの自由な会話にエマのツッコミがとまらない。
はぁー、とためいきを吐いたエマはソファから立ち上がる。
「厨房貸してください。私がなんか作ります」
「え?でもぉ……?」
「いいから。魔王さまの好きな食材は?」
「う~ん、たまごとかかしらぁ?」
「たまごか……。ならオムライスでも作るかな」
お子さまが好きな鉄板メニューだし、と思ったところで予想外の食いつきがあった。
「オムライス?!!」
しゅぴっ!と手をあげたアストが「僕も食べたい」と身をのりだす。
「オムライス……あっちの世界の料理……」
あまりに感激している様子にてっきり大好物なのかと思いきや……純粋にあっちの世界の料理に焦がれていただけっぽい。
気持ちはわかる、と腰に手をあてた。
「食べたいものとかある?作れそうなものなら作ってあげるよ?」
ぱぁぁ!と音がしそうなぐらい顔が輝いた。
もはや出会ったときの知的キャラどこいった状態です……。
「いいの?!えっと……グラタン……いや、さっき言ってたてりやきバーガーも捨てがたい。でもでもパスタ……シチュー……」
「……ゆっくり考えてて。とりあえずそれは次回ってことで!」
とっととオムライスの準備をしよう。
「な、なんだ……これはっ……!」
「オムライス。あとサラダとスープ」
「酸味と甘みの融合したこの赤い液体。毒々しい色なのに優しい味わいのライスに、ふんわり優しく包み込むトロトロのたまご……」
「食レポはいいから食べなさい。ほら、サラダも」
「む、生野菜……」
「お子ちゃまはお野菜食べれないかー。ソルトは食べれるもんね?魔王さまよりちょっと大きいし」
「食べれるー!」
「な、ななな……食べれるに決まってるだろう!…………この白いべちゃっとしたのはなんだ?」
「これって子狼を陥落させた謎の物体じゃねぇか……」
「マヨビーム」
「「「……これが例の……!!」」」
なんだかんだでにぎやかな食卓だった。
一部の偏食さんたちもちゃんと全部完食したし、マヨネーズは魔族のトップ陣も堕とした。
「ハレンチだっっ!!」
部屋の前で顔を真っ赤にしてグリオンが叫ぶ。
「どうしたんだ?」
その様子に通りかかったクルトがアストたちへと声をかけた。
「それが……部屋わりの件でグリオン様が……」
グリオンが騒いでいるのはエマとミレーヌの部屋の前だ。
窃盗事件の犯人捜しや、和解にむけての同盟の協議などでエマたちは魔王城への滞在が決まった。それに伴い各自部屋を用意されたのだが……。
「お、女子と同室で寝るなど……ハレンチであろう?!」
きゅー。
ぷいっと興味なさそうに顔をそらすソルト。
どうやらグリオンの抗議の相手はソルトのようだ。
宿などに泊まる時もソルトは基本エマたちと同室だ。
寝るときはエマのベットに置いた籠ベッドで寝ている。
少年態になれることが発覚してからはクルトたちと同室に……という案もでたが、「どうして?」というようにきゅぅぅ?と鳴かれ撃沈。
不思議そうにいやいやとくっつかれ、「こどもだし、別にいっか」ってなったエマたちだった。
そもそも……。
「魔族ってそーいうの気にしないのかと思ってた」
少なくともソルトはそうだ。
以前、温泉に入ったときも男女別なことにきゅ??と首を傾げてた。
人化したこともほとんどなかったし、人間と感覚が違う部分もちょこちょこある。
「そこら辺は種族差もあるわね。個人差もあるけど」
「そっか。少なくともアストはミレーヌと同室には出来ないな」
「なっ……!」
にしし、と笑うクルトに一言に眼鏡が盛大にくもった。




