才能とか素質とか、仕方ないよね……
話しを整理すると、4人の魔族さんは魔王の腹心であり四天王だそうだ。
転生者でもあるアストが『吸血鬼』、脳筋っぽいラウルが『狼男』、オネエ……もといバルバトスが『悪魔』、紅一点であるソアラが『淫魔』。
レオンたちと交戦していたバルバトスたちだったが、「できれば争いたくない」という説得に応じ、エマたちと合流した次第のようだ。
「だいたいなんで魔族がそっちに居んのよ。ドラゴン、しかも黒なんて最強種じゃない」
「へ、そうなの?」
色によりドラゴンのランクがあるなんて知らなかったエマが驚いていると、ぽんっ!とソルトが人化した。
「えっへん!ソルト、レオンたち守った。えらい?」
腰に手をあてえっへんするソルトを偉い偉い!となでる。
「えへへ、てりやきー」
すっかりご褒美=てりやきバーガーの図式が根付いてしまった。
だがまぁ可愛いし、えらいのは本当だから許す!
「てりやき……?」
石化がとけたアストが驚きに目を見開く。
「そ、てりやきバーガー。エマが作ってくれた」
「す、すごいな」
じゅるり、とアストの顔が輝いた。
やっぱり彼も食文化のレベルの違いに苦しんでいたようだ。
「そもそもアスト、お前以前は人間だったってことか?」
ラウムの問いにアストが気まずそうに俯く。
「ああ、そうだ」
「どうして教えてくれなかったのぉ?」
「言えなかったんだ。魔族の幹部である僕が、以前は人だったなんて……」
「関係ねぇだろうが。前世がなんだろうとお前はお前だ」
「そうよ。そんなことぐらいでアタシらが差別でもするとでも?隠されてたことの方が心外だわ」
バンバンッとアストの肩を叩くラウムに、不満そうにフンッと顔をそらすバルバトス。
仲良きことは美しきことかな、とか思っているとまたなにやら発生です。
「待つんだ、トート!」
制止をかける少年の声。
たたたたたたっと軽い足音が一直線に近づいてくる。
ミレーヌたちが来たのはまた別の奥の扉からかけてきたのはまだ幼い男の子。
「見つけたぞ人間!よくも魔王さまを!!」
瞳を吊り上げて向かってくる男の子がこけた。
一直線に走ってくる途中で、それはもうスコーンと。
なににつまづいたわけでもない。
原因はラウムたちのの戦闘中にエマが放ったマヨビーム。
子狼たちが大喜びでぺろぺろしていたマヨネーズですが、床にちょっぴり残っていたようです。
そしてマヨネーズの成分といえば卵と油。
そう、油。
滑りますよね、ツルッツルに。
そんなこんなで転んだ男の子はその場で止まらず、勢いのまま柱に突っ込んだ。
「いててて……」
「トート!大丈夫か?」
尻餅をついた男の子の様子を見ようと近づいたエマが動いたのは反射だった。
ぎゅっと抱き着くように少年を腕に庇ったところで右足に感じた鈍い痛み。
「……っあ!」
瓦礫に挟まれた足に声にならない悲鳴が漏れる。
先ほどまでの戦闘(主にラウムの攻撃)によりひび割れていた壁の一部が男の子が柱に突っ込んだ衝撃に崩れたのだ。
「「「エマ!!」」
瓦礫はすぐにどけられ、エマは腕の中の男の子を見た。
大きな目を見開き、ふるふると震えている。
「大丈夫?怪我は?」
「な、なんで……?ぼくよりおねえちゃんが……」
「怪我は?痛いとこない?」
再度問えば、こくりと小さく頷かれた。
真っ青な顔で駆け寄ってきた少年は彼の兄だろうか。どことなく顔立ちが似ている彼に男の子を託す。
少し体勢を変えれば足が猛烈に痛んだ。
まずは治療が必要だ。
真っ赤に腫れあがった足首はエマの治療魔法では一瞬で治療とはいきそうもない。
ポーションと併用すれば2、3日で治るかな?と思っていたエマだったが、ソアラが瞬時に完治してくれた。
……元『聖女』の職業の私より、淫魔のソアラさんの方が治療魔法を使いこなしてる件。
改めて自分の聖女としての素質のなさを痛感したエマだった。




