マヨ最強説
「タ、タンマッ!!」
どうしよう、どうしよう……そんなことをぐるぐる考えていたエマの取った行動は。
両手を前に突き出して、タンマコールの発動。
フライパンを持ったままなので、かなり間抜けな絵面だ。
だけどその間抜けな絵面と必死さが功を制したのか戦いが一時中断された。
「ま、待ってください。変な魔法陣が現れてですね、私たちは気づいたらここに居て……。だから別に争う気とかはぜんぜん…………」
「君らを魔法陣で召喚したのは僕だ」
拉致った犯人発覚。
「妙な人間どもが魔族領をうろついてやがるみたいだったからな。他のヤツラに被害を出させるわけにはいかねぇ。そんで俺様たちが直々に相手してやることにしたってわけだ。下の者守んのは上の役目だろうが」
…………どうしよう。
忌々しそうに牙を見せる狼男の顔はすごく怖いが……発言が超まとも。
思わず感心してしまったエマだが、「いやいや、だからそもそも被害とか出す気ないし……」とぶんぶんと首をふった。
そりゃあ襲ってくる魔物は倒すけど、なにもしてない魔族に手を出す気など毛頭ない。
そうアピールするものの……。
悲しいかな、フライパンを持った怪しい女の言い訳など到底信じてもらえない。
「話しにならない。そっちの男、君の相手は僕だ」
「おい、俺はこっちのガキの相手してんだからあとの2人はお前だろ」
「…………僕は女の子相手に手は出さない主義だ。ラウム、君に任せた」
「俺だって女こどもの相手は御免だ」
どうやら敵さんは紳士らしい。
そんなことを思ったエマだったが、やっぱりそう甘くはなかった。
「仕方ない、眷属にでも相手をさせるか」
「だな。コイツらも結構強いし、とっとと片して戻らねぇと」
物騒な結論にひぃぃ!と再びフライパンを握りしめる。
狼男が天井を仰いで遠吠えをあげた。
すると次々に広間へ駆け寄ってくるたくさんの狼。
雪のように真っ白な毛皮を纏い、ふわっふわなその子らにエマは悲鳴をあげる。
「きゃあぁぁぁぁぁ~!!!」
「エマ、その悲鳴、どっちの?」
「両方!」
飛びかかってくる子狼たちの牙や爪をフライパンで防ぎつつ、つぶらな瞳が可愛いその子らをぶん殴ることができず逃げ回るエマ。
「さて、僕もそろそろ仕事をするか」
眼鏡を指で押し上げながら青年が呟いた。
動き回っている狼男のラウムと違い、登場から一歩も動かず高みの見物をしていた青年は靴音を響かせながら前へ出る。
まるで舞台役者のような仕草で胸に当てた手を突き出した。
「森羅万象に集いし闇よ、古の盟約により我に答えよ。我が求めに応じ、全てを焼き尽くせ。闇の炎よ!ここに顕現せ……」
「中二病っぽい!!」
高らかに奏でられる口上の途中で思わず叫んだ。
なんか恰好いいけど、恰好いいけどこう……絶妙に……。
「あー、俺も思った。こう、なんかな」
「ねっ?」
うんうん、と頷き合うエマとクルト。
口上を突然の叫びに遮られた青年はといえば……。
真っ赤な顔を両手で覆っていた。
手の隙間から見える眼鏡がうっすらと曇っている。
青年の周囲に渦巻いていたおどろおどろしい闇も霧散し、そこからいまにも這い出してきそうだったなにかも消失している。
「おいっアスト!どうした?!」
ラウムの叫びにもアストと呼ばれた青年は答える余裕がなさそうだ。
そんなアストの反応に違和感を感じつつも、エマたちは子狼たちの応戦に忙しい。なにせ数が多い。
必死に攻撃を防ぎながら応戦するも、戦況は芳しくない。
「くっ……!こうなったら、一か八かっ……」
覚悟を決め、エマはフライパンを手放した。
「マッヨビームッッッ!!!」
両手をびしゃぁあ!と交差させ、全力のマヨビーム。
「エマッ?!」
「エマ嬢っ?!」
クルトとハリソンからなにやってんの?!の意を込めて名を叫ばれた。
「だ、だってだって……!ワンチャンあるかもしれないじゃないですか!」
「あるか!んなもんっ!!」
だがしかし!
無謀とも思われた攻撃は効果があった。
放たれたマヨに群がる子狼たち。
その尻尾はブンブンとはち切れそうなほど振られている。
もっとくれ!とばかりに群がってくるもふもふたちに、ややビビりつつ「ちょっと待って!」追加のマヨビーム発射。
ご機嫌な子狼たちはもはや戦いよりマヨネーズに夢中だ。
「どうよっ!」
ほら見ろ!とばかりにエマはドヤ顔です。
「勇者もドラゴンも堕としたマヨビーム。効果絶大だったじゃない!」
「……さすがはマヨ。最強か」




