つ、ついに……!
結局、“世界の危機”が戦争っぽいことはわかったけど、それを防ぐためにすべきことはわからずじまい。
無理難題をぶん投げらたエマたちはドワーフの里をあとにした。
なお、最初っから「魔族の大群が戦争を仕掛けようとしている」と告げなかったのは、固定観念を防ぐためだったっぽい。
レオンたちは争いは望まない姿勢だったけど……そうはいっても人間の国の王族。戦争勃発の神託を聞けば、人間側が魔族討伐に舵を取る可能性は大いにあった。
魔族が世界を危険にさらすなら最終的に討伐しなければならない可能性はあれど、本来のエアリスの望みは危機の未然の回避。
それなのに逆に人間側から戦争を仕掛けるような事態となっては本末転倒だ。
「……そうはいっても、原因がまったくわからないというのが…………」
難しい表情でレオンが腕を組む。
そう、手掛かり ほぼゼロ。
「魔族による被害の話もほぼ耳にしませんしね」
ハリソンの言葉に一同頷き、うーんと頭をひねる。
「ソルト、なんか知らない?」
「しらない」
魔族ネットワークとかないのかな?と聞いてみるもダメだった。
ふるふると首を横に振られて終了。
そっか、と肩を落としつつ、たき火の火が小さくなったので足元の木をポイッと追加した。
串に刺したお肉をハリソンが火の当たりがいいところに刺し直してくれる。
「以前、食料問題が心配だ……とおっしゃってましたよね?」
「ああ、そのような報告はあがってはいるが………………正直、飢餓などが心配されるほど深刻な問題とはなっていないはずだ。その解決のため戦争……というのは考えずらいかな」
ミレーヌの質問にレオンは頷いたものの、難しい表情は変わらない。
深刻な食糧問題があって、他国を侵略してそれを解決しようというのならよっぽど切羽詰まった状態だろう。
けどそんな話は聞こえてこない。
うーん、と唸っているとハリソンとクルトが焼けた肉を取り分けてくれた。
切って、焼いた、味付けは塩コショウだけのシンプルなお肉だが、直火でこんがり焼けているのがとても美味しそうだ。
肉汁を垂らさないように慎重にかじりつく。
ん、ジューシー!
あむあむと嚙みながらいままで回った町や村を思い起こす。
場所によっては「今年は野菜の出来が悪くて……」とか、「デカい獲物が獲れない」なんて話もチラホラ聞いたが……あくまで「困ったわぁ」程度の会話であり、そこまで深刻な食糧難に見舞われていた地域はなかった。
魔族領ではまた別なのかもしれないが……もう魔族領は目と鼻の先のこの辺りでも大きな異変は特になし。
だいいち、そうならそうでエアリスが気付くだろう。
…………となると、やっぱ原因はこれから発生するのかなぁ?
突発的な自然災害?
地震とか水害とか??
「むー、わからん……」
2本目の串焼きに手を伸ばす。
とりあえずいまは考えるのは止めにして、ごはんに集中することにした。
それからさらに数日。
「なんかこの森……雰囲気が違う気がしません?」
辺りを見渡しながらエマはふと口にする。
ドワーフの里からさらにいくつかの山や森を超えた。
だけどその森はいままで通ったどの森とも違う感じがした。
空から差し込む麗らかな日差しと、木漏れ日のカーテン。
輝く緑の枝葉。どっしりと地に根を張った大樹に咲き乱れる花。
鬱蒼とした森が多いなか、美しい森もなかにはあった。
だけどそれだけじゃない。
なんというか、もっと、こう…………。
「荘厳で、神聖な感じがします」
「そう、それ!」
樹々を見上げて呟いたミレーヌに「我が意を得たり」と指を弾ませる。
緑が濃い、光に満ちて……空間そのものがどこか澄んでいる気すらした。
それは正しく、荘厳で神聖という表現がピッタリだ。
そんな森を歩いていると風きり音が響いた。
音に反応して振り返るより早く、隣を歩いていたクルトに腕を引かれる。
ビュンッ!!
頬の脇に風を感じた。
え?と思って視線をずらせば、樹の幹に突き刺さった弓。
自分が居た場所のすぐそばに刺さったそれにあわあわと口を動かし、樹を2度見した。
その間にもみんなは武器を構え、警戒態勢にはいっていた。
それでも殺気を剥き出しにしないのは、弓がエマの居た場所より数歩右……恐らくは外したのではなく威嚇として放たれたものだからだろうか。
クルトの背に庇われながら、弓が飛んできた方を見る。
カサリ、と草を踏む音とともに人影が現れた。




