結論!無茶ブリには変わりなかった
「でもなんでカイジンさんたちはこんな山奥で暮らしてるんだ?鍛冶に適してる、ってのはともかく……色々不便じゃね?」
皿に大量の肉を取り分けながらクルトが問う。
二日酔いも治って、完全にいつもの食欲と元気を取り戻したようだ。お皿にはお肉の小山ができている。
「まぁ、不便はあるがな。住み慣れた土地が一番だ」
「魔族領もわりと近いですが、魔族に襲われたりはしないのですか?」
ハリソンの質問にカイジンはフンと鼻を鳴らした。
「そんなことはねぇし、すべての魔族がそう危険なわけじゃない」
だいたいな、とカイジンは太い腕を組む。
「元々は魔族も人も、ドワーフやエルフだって共存していた時代はあったんだ。そりゃあ敵対することだってあるさ。中にはひでぇ魔族だっているだろうさ。けど人やドワーフはどうだ?全ての奴が善良だとでも?んなわけねぇだろうが。ワシらはそれほどあいつらに悪いイメージを持っとらん。なぜならなにをされたわけでもねぇからな」
口元をひん曲げたカイジンはどこか憤っているようでもあり、哀しそうでもあった。
「人が魔族に良い感情を持ってねぇのはわかる。お前らの間には凄惨な歴史があっからな。それが悪いとは言わねぇよ。けどな、魔族だからとか人だからとか関係ねぇ。傷つけられたら痛ぇし、奪われたら憎いんだよ。大切な者奪われたらそりゃ憎いだろうが。憎んで、争って……戦争ってのはそういうのの繰り返しなんだ」
カイジンの視線がエマたちの手を見つめる。
この世界の神であるエアリスに選ばれた“クラルスの花の紋様”が刻まれた手の甲を。
“世界を救う勇者パーティ”の一員であるその印を。
「争いでしか解決できない……って場合もあんだろうよ。けど、そんでもお前らには覚えといてほしい。争いは次の争いを生むってことをよ」
場に重苦しい沈黙が広がった。
魔族だからって悪ではない。
それはわかっていた筈のことだったけど……改めて考えさせられることだった。
傍らにいるソルトの背をそっと撫でる。
この可愛いマスコットキャラみたいなソルトだって同じだ。
この子だって魔族だけど、憎しみや嫌悪なんてもちろんない。
人じゃなくたってちゃんと意思疎通は出来るし、傷ついた親鳥を守ろうとしてた優しい子だ。
「あ~もうっ!!そもそも“世界を救う”って目的が漠然としすぎてんのよっ!!一体なにをさせたいわけ?!魔族がなんか被害出してんの?戦わせたいわけ?それともなんか解決してほしいことがあんの?具・体・的・な指示を出せー!!!」
急にテーブルをバンッと叩いて立ち上がり「責任者失格ー!」と天に向かって叫び出したエマに「ど、どうした娘っ子……?」とカイジンが驚く。
理由を知らなければ乱心したと思われて当然の行動。
そしてどこからか軽やかなメロディが流れ、エマの周囲がキラキラと輝きだしたことにさらに驚く。
「どうなっとる……?」
「彼女はエアリス神と言葉を交わせるんです」
「神にあの態度……ええのか……?」
「「「…………」」」
パーティメンバーがそっと視線をそらし口を閉ざすなか、エマはお構いなしにエアリスの返答を待つ。
『ぐ、具体的な指示っていっても…………!僕だってわかんないんだよ』
「はぁ?」
『世界の危機は事前に察知できるけど、その原因まではっきり見えるわけじゃないから』
「役立たず」
『ひ、ひどい……!』
神を半泣きにさせる美少女、その名はエマ。
もはやカイジンはギョッ!とした表情でエマを見ている。
おひげに隠れたお口があんぐり。
彼らにエアリスの声は届いていないが、エマの返しがあんまりなことは明らかなので。
「で、なにをすればいいかわかんないけど、とにかく“世界を救え”って?」
『だって仕方ないじゃん~』
もはやエアリスは泣き声だ。
「なんか手掛かりとかないの?」
『普段はもっとはっきりしてるんだよ。元々種族間の争いが強まってたり、火山が爆発しそうな前兆があったりとか……でも今回は不思議なほどそれがないんだ。見えた未来は人間相手に戦争を仕掛けようとする魔族の大群の姿だけ。なのに現時点ではそんな動きは微塵もない』
「つまり……今後戦争が起きるような問題が勃発するわけね?」
エマの言葉にみんながはっと息を飲む。
『人間だけじゃない、この世界に住む生命全ては等しく僕の愛し子だ。どうか争いが起きる前にその原因の芽を摘んでほしい』




