職質で荷物チェックされたらヤバいやつ
樹々や葉で巧妙に隠された道を通り、洞窟を抜け、たどり着いたドワーフの隠れ里。
一歩足を踏み入れれば、不思議な感覚がして振り返る。
「どうしたんだ?」
クルトとハリソンは特になにも感じなかったようだ。
周囲を見渡すエマたちの行動にこそ不思議そうな顔をしている。
一方、レオンやミレーヌはやはりなにか感じたようだ。
そしてその答えは足を止めたカイジンがくれた。
「結界に反応したんだろ」
「結界……?」
「おう、そのせいでめったによそ者が紛れ込んだりせんから“隠れ里”なんて呼ばれとる。もっとも一番の理由は別だがな。ほら、そこにもう1つ結界がある。そこ潜れば理由がわかる」
目視では確認できないが、結界は2重に張られているらしい。
止めていた足を進め、斧で指された場所を超えると再びの違和感。
そして…………。
音と活気に満ちた様子に「わっ……」と声が漏れた。
金づちを打ち鳴らすカンカンと甲高い音、湧き出る蒸気と威勢のいい怒鳴り声、そこは音に満ちていた。
「なっ?結界が必要な理由がわかっただろ。ワシらドワーフは鍛冶が生業だ。朝から晩までうるせぇったらありやしねぇ」
結界の目的は物理的に里を守るのともう1つ、防音対策のためらしい。
たしかにこれだけ音が響いていたら、魔物を呼び寄せてしまうだろう。
「おぅカイジン!そいつらはなんじゃ?」
地面までついてしまいそうなほど長いおひげのドワーフが話しかけてきた。
「狩りの途中で足をくじいてな。この娘っ子が治してくれた。それにそっちの坊主らが大物を仕留めてくれたぞ!」
大物……というのは途中で襲ってきたイノシシだ。
見事返り討ちにして、手土産代わりにお持ち帰り。
感謝や喜びの声をあげ、次々とドワーフたちが集まってくる。
名前を名乗ってくれるのはいいのだが…………ずんぐりした体型に、顔が隠れるおひげという共通点によりとっても見分けがつきにくい。
ええっと、あっちが……こっちが……と頭の中がひっちゃかめっちゃかだ。
ギ、ギブ!!
工房に案内してくれたカイジンが腕まくりして椅子代わりだろう石に座った。
「さっそく礼をしなきゃな!ほれ、坊主ら剣を寄越せ」
「え……?」
「え?じゃねぇ!剣だ剣!!いくらいい剣だって手入れが悪けりゃ切れ味が落ちんだよ!!魔物だろうが一刀両断できるように研いでやるから貸せ」
どうやら剣の手入れをしてくれるらしい。
手入れがなってない!と怒りながらもよどみなくカイジンの手は動く。
磨かれるたびに艶を増していく白刃は美しく、エマたちは身を乗り出してその手元を覗き込んだ。
「あんま近寄んなよ」
怒られた……。
まずクルトの愛用の剣が「ほらよ!」と返された。
鏡のように顔がはっきり映るぐらい磨き上げられた剣にクルトが興奮した声を出す。
「試し斬り!なんか試し斬りするもんない?!」
「やんならあっちでやれ」
クイッと親指で指された方で鉱石を差し出されたクルトがそれを斬る。
エマに剣の良し悪しはまったくわからないが、クルトやハリソンの反応からそれが素晴らしい出来なのだということはわかった。
「ねぇカイジンさん。私のもお願いしていいですか?」
今度はハリソンの剣を研いでいるカイジンにおねだりしてみた。
快く請け負ってくれたカイジンにいそいそと魔法の鞄からまず取り出したのは……。
なんでも切れる万能包丁!
「包丁?!」
「私の武器です」
「包丁がか?!」
「包丁がです」
てっきり剣だのナイフだのがでてくると思っていたカイジンは2本の包丁にビックリだ。
しかも、手に取ってさらに……。
「なんじゃこの切れ味……!どうなっとる……」
「なんでも切れる万能包丁なんで」
「いや、だからなんで武器が包丁……。これ持って戦うって……絵面相当怖くねぇか?」
「めっちゃ怖い。立ち姿、ガチヤバい」
「うっさいな!仕方ないじゃない!」
エマだって自覚している。
1人フライパンを持ってるのも相当絵面オカシイが……両手に包丁はその上を行く。
うっかり遭遇したら全力で逃げる絵面だ。
「そもそもこの包丁、研ぐ意味あるんか……?」
「あっ、やっぱそーですか?じゃあこっち……」
ぽぽぽいと出てくるナイフ、ナイフ、ナイフ、包丁、包丁、ナイフ、アイスピック……。
その数々にギョッとするカイジンらドワーフたち。
「どんだけ刃物持っとるんだ?!娘っ子、暗殺者かなんかか?!」
「ブッブ―!看板娘でーす」
職業:看板娘のエマが宝箱なんかから出した戦利品の数々だった。




