めちゃくちゃ年上だった……
はじめての人化の反動だろうか、ソルトくんはお疲れのようです。
「エマ、重い」
「ちょっ、ソルト?!」
聞き捨てならない発言再びです。
助けてくれた感謝はしているが、それはそれ、これはこれ。
エマはソルトの肩をぐわしと掴んだ。
「重いってなに?!なんなら前とかクルトとハリソンさん乗せたこともあるでしょっ?!」
「あのときは平気だった」
「2人より私の方が重いとでもっ?!!」
そんなバカな?!と叫ぶエマを落ち着かせたのはハリソンだった。
「恐らくですが……体型の違いではないでしょうか?あの時はドラゴンの姿でしたし、いまは少年の姿ですから」
それならば納得だ。
体格のいい男性2人より重いというとんでもない冤罪が晴れてなにより。
「だがなぜ人化したんだ?」
「最初はぱくりって咥えようと思ったけど……人間、脆い」
レオンの質問に答えたソルトの回答を聞き、エマは考える。
ぬいぐるみのようなミニサイズでエマを支えるのは当然ムリだ。
元の大きさのドラゴンの状態でパクリ。
本人は猫が子猫を咥えて運ぶような感覚でも、パクリのつもりがガブリ!となりかねない。
ならば腕で掴む……というのも鋭い爪でグワシ!となりそうだ。
「本当にありがとう!!超いい子なんだけど。今度いっぱいてりやきバーガー作ってあげるからね」
再び抱きつけば「わーい」と無邪気に喜ばれた。
とっても可愛い。和む。
「すごい可愛い。なんか弟ができたみたいで嬉しいかも」
一人っ子のエマにとって兄妹はあこがれだ。
サラサラの髪を撫でながら愛でていると、ミレーヌも「わかります」とうんうんと頷く。
「ドラゴンにしては小振りだな、って思ってたけど……やっぱまだこどもだったんだな」
「ねー」
ふと思い立ってエマはたずねた。
「ソルトって自分の歳とかわかるの?」
「わかんない」
数えてない……とふるふると首を振られた。
「たぶん……300歳ぐらい……?」
「「「…………」」」
推定年齢にしてもだいぶ年上だった。
絶句したエマたちにハリソンが笑いながら言葉をはさむ。
「種族的にもドラゴンは長命種ですから。それこそ数千年の時を生きるドラゴンもいますし、ドラゴンとしてはソルトはこどもなのでしょう」
「そ、そうなんですね」
引きつった笑いを浮かべていると、クイクイと袖を引かれた。
「ねーエマ、崖のちょっと下。おじいさんいた」
「おじいさん?」
「ん。エマを運んでるとき、チラッと見えた」
「こんな山奥に老人が……?ほかにも誰かいたか?」
その質問にはんーんと首をふる。
「1人だけ。怪我してるのかうずくまってた」
なんでもないことのようにさらっと報告してくるソルトにエマたちはちょっと焦る。
そのおじいさんが何者かは知らないが、森の中には通常の獣も出れば魔物だってでる。しかも怪我をしているというのなら早急に助けに向かわなければ。
……ということでエマたちはソルトが見かけた場所へと向かった。
お疲れのソルトはミニサイズのドラゴンになってエマが抱えている。
ドラゴン態ではしゃべれないので、手にした旗を向けた方向へとひたすら進む。
「あ、居た」
ソルトの言葉どおり老人が座り込んでいた。
邪魔な枝を掻き分けて進めば、その音に反応した老人が傍らの斧を手にする。
「……人間?」
近寄ってきたのが獣でも魔物でもないと見てとった老人が訝し気に呟いた。
だけど驚いたのはエマたちも同じだ。
地面に座り込んでいるのを考慮しても低い身長、だけどひ弱ではない屈強な体と長い長いひげ。頭には2本の角を象った兜を被っている。
その姿は……。
「……ドワーフ?」
怪我をしていたドワーフの名前はカイジンさん。
顔を覆う長いおひげのせいで老人のように見えたが、実際はもっと若く、狩りに来た途中で足をくじいてしまったようだ。
エマの治療のおかげで足も治ったカイジンさんは大喜びで立ち上がった。
「ありがとうな、娘っ子。とんだヘマをしちまって困ってたんだ」
痛くない、と足を振りながら斧を肩にかける。
「お礼に里に招待しよう!」
そうしてドワーフの隠れ里に招待してもらえることになりました。




