ガッポリ稼いだ
右も左も大繁盛。
かき氷を売っている屋台と、酒類をはじめドリンクを売っている屋台に挟まれたエマは「負けてられない!」とゴゴゴッ!と背後に炎を背負う。
噂の勇者パーティということと、総じて顔がいいことで屋台の前にはそれなりな人だかり。
掴みはOKとエマはちゃちゃと準備を済ませる。
エマたちの屋台は食べ物メイン。
自分たちだけでは消費しきれないクラーケンの足と、大量に貰った貝が商品だ。
全部貰い物だし、「恩人だから」という理由で屋台もタダで貸してもらえたので元手ゼロです。
網で貝を焼くのはクルトとハリソンに任せ、エマはクラーケンの足を細かく刻む。なにせ大きすぎてある程度の大きさにしないと嚙み切れない。
ミレーヌとレオンは接客&会計担当だ。
「でも他の店めっちゃ賑わってるけど平気なのか?」
貝をトングで移動させつつ、クルトが不安そうに小声でささやく。
興味は引けているものの……それはあくまで自分たち。
焼かれるイカと貝への興味はいささか低い。
むしろ巨大なクラーケンの足にちょっと引いている客すらいる。
最初こそ興味本位で客を引けても、すぐに散ってしまうんじゃないかと心配そうなクルトにエマは鉄板の上でイカ焼きを作りながら不敵に笑った。
「大丈夫。秘策があるから」
ヘラを両手で操り、いい感じに焼けてきたところで秘策を取り出す。
エマの秘策・それはおしょうゆ。
しょうゆをかければ、たちまち香ばしいにおいが辺り一面に漂った。
鉄板で焦げるしょうゆの匂い、それは嗅覚への暴力!
香ばしい香りにつられ、あっという間に増えた人垣に向けエマは秘儀・看板娘スマイルを放った。
「いらっしゃ~い!おいしいイカ焼きと貝焼きですよー!ただのイカ焼きと貝焼きだと思ったら大間違い!この芳しい香ばしさ、たまらないでしょう?秘伝の調味料・おしょうゆを使った特別な一品です!!」
さらにはイカ焼きを紙皿にのせ、その横にマヨネーズと七味を添える。
「このままでもおいしいし、このマヨネーズと七味をつけても…………ああっ、おいしいっ……!」
ひとつ自分の口へと放り込み、頬を押さえる。
貝を焼いているクルトが「俺もっ!俺も!」と大騒ぎしてるので一皿まわした。
「とってもお酒にあうこと間違いなし!!」
言い切ったエマはきゅっきゅきゅぅ~!とおねだりしてくるソルトの口にも入れてやる。
パタパタと羽を動かしたソルトが短い手でお口をおさえて、きゅきゅっ~♡とハート乱舞する姿に女性客やこどもから「かわいいー!」と声があがった。
「ご覧の通り、このイカ焼きはクラーケンです。味のおいしさは保証しますよー。ここ1カ月弱、みなさんを散々苦しめたクラーケン!ぜひその腹に収めてやりたいとは思いませんか?!さぁ、おいしいイカ焼きと貝焼き!!ご注文の方はどうぞ前へ―!!」
我先に、と客が殺到した。
てんやわんやの状態で注文を聞き、商品を渡し、料金を受け取っては追加のイカと貝を焼く。
焼くのが追い付かないほどの大繁盛だ。
「なにこの香ばしさ……!奇跡の調味料だわ……」
「こっちの白いのと七味もスゲーよ。酒がすすんでしょうがねぇ」
「おかーさん、ぼくおかわり!もう1個買って!」
客が客を呼び、途切れない注文にエマたちはフル活動。
嬉しい悲鳴だが、同時にそれ以外の悲鳴も漏れる。
「私も貝焼き食べたいー!!しょうゆと潮の海のスープごとゴクリといきたいのにっ!忙しすぎて手が空かないっっ」
「俺だってマヨ七味一口しか食ってねぇし!ちょっ……!ソルト!お前だけずりーぞ!!働け!!」
「クルト殿、いまは手を動かしてください。そっちはもう焼けてます」
「3っつ、いえ4つですか?お待ちください、ただいま……」
「マズい。お釣りがもうない。ちょっと両替してくるからハリソンその間こっちに入ってくれ!」
休む暇もない大忙しです。
その甲斐あって、屋台用の材料は見事完売。
「つっかれたー……」
ある意味、戦闘時よりも疲れきって一息つけば、エマたちの屋台につられて大盛況だった両隣の店主がかき氷やらドリンクをサービスでくれた。
「スゲーなお嬢ちゃん、やり手だな!」
「ありがとうございます」
「マジですごかったな。職業・看板娘の本領発揮!って感じだった」
「お店ってこんなに大変ですのね」
わいわい言いながら打ち上げと称して自分たちも海鮮焼きを堪能した。




