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勇者パーティの一員ですが、転生チートがまさかのマヨビームでした。……マヨビームで世界って救えますか?  作者:


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“海老で鯛を釣る”はよく聞くけれど……


このピンチを切り抜けられるのでは?という希望が湧いてきて、そっと親鳥へと手を伸ばす。


グアッッ!!


威嚇され、「ちがう!ちがう!」と両手を顔の前でブンブン振った。


「ちょっと見てて?」


声をかけてから、今度は親鳥でなくクルトの方へと手を伸ばす。


傷口に手を当てて「癒しよ」と瞳を閉じて呟く。

柔らかな光が瞬き、手を翳した部分の傷口がゆっくりとふさがっていぐ。


「他に怪我は?」


「痛いのは背中」


「わかった」


そんなやりとりをしてから、服の下と違いわかりやすく傷が消えたクルトの手を持ち上げてみせた。


「ね?治ってるでしょ。私、癒しの力が使えるの。この子の傷を治させて?」


じっと見てくる沈黙を肯定ととって、ゆっくりと親鳥へと手を伸ばす。

今度は威嚇されなかった。


羽の付け根の部分の傷が少しずつ塞がっていった。

ヒナがまるで喜ぶみたいにピィピィと鳴きながら親鳥へと寄り添う。


「私たちはあなたと戦いたくありません。どうか見逃して……くれませんか?」


お願い!の気持ちをこめて上目づかいで頼めば、怪我を治したことに感謝してかこくりこくりと頷いてくれてほっと息をついた。


「あっ、一応お薬も塗っとこうか」


まだまだ癒しの力は半人前のエマだ。

念のためと薬を取ろうとあたりを見渡す。


ボールを取り出したときに魔法の鞄(マジックバック)を開けっぱなしだったことと、転んでしまったことで鞄と中身がいくつかあたりに散らばっていた。

それらを拾いつつ、軟膏を探す。


丸缶のフタを開け、親鳥の傷があった部分へと塗りこんだ。

お礼をいうようにヒナが体をすりつけてくれるのがすごく可愛い。


「どうしたんだ?」


クルトの声に振りむけば、ドラゴンはどうやら散らばったエマの荷物に興味津々なようだ。


さっきのボールの件があるからか注意深く、そっと爪先でつん、としてみたり顔を寄せたりしている。


そのうち、あるものにすごく興味を示した。

ふんふん、くんくんと鼻先を寄せては匂いを嗅ぐのは、それが食べ物であるとわかるからだろうか。


ズバリ、今日のお昼ご飯・てりやきバーガー。


いい具合に包み紙が少しまくれていたぶぶんに爪先をひっかけ、パクリ。


「テメッ!俺のてりやきバーガー!!」


「なにやってんの?!せっかく危機回避したのに争う気?!」


眉を吊り上げ、剣をかまえるクルトに慌ててしがみつく。


「だって俺のてりやきバーガー!」


「まだあるから!クルトもハリソンさんもいっぱい食べるから大量に作ってあります!安心して!」


「でも……」だの「だって……」だの不満気に口を尖らせるクルトだが、しぶしぶ剣はおろした。

だが目が「俺だってまだ食べてないのに」と露骨に不満を訴えている。


そしてそんな怒りを向けられたドラゴンといえば……。


あむり、と口を動かし、ぱぁぁ!!と表情をほころばした。

なんか周囲に花が散ってそうなぐらいに喜んでいるのがわかる。


あむあむ、ごっくんしたあと周囲をきょろきょろ。

お目当てのものが落ちていないとわかると、きゅぅぅんと捨てられた仔犬みたいなめをエマへと向けてきた。


その様子を見て、ふむとエマは考える。


ゴソゴソと魔法の鞄(マジックバック)に手を突っ込むエマを見て、「エマ?」とまさかやる気かと不満げなクルトの声がかかる。


取り出されたてりやきバーガーの包みに、ぱぁぁ!!とドラゴンが破顔した。

だけどエマは手の中のそれを渡さない。

こてん?と傾げられたドラゴンの瞳をじっと見る。


「私たち、世界を救う旅をしてるの。私は力も体力も足りないから、強い従魔が欲しい。賢くて強いあなたはとても理想的だわ。ねぇ、あなた。私と契約してくれない?」


不思議そうにドラゴンもじっとエマの瞳を見る。


「この食べ物はてりやきバーガーっていうの。作り方を知っているのは私だけ。だからきっと今後同じものを食べれることはないわ」


ガーン!!とドラゴンの表情が歪んだ。


わりと感情表現が読み取りやすいドラゴンだ。


「あなたの力を私に貸してほしいの。代わりに私はあなたに美味しいごはんを提供するわ。このてりやきバーガー以外にも美味しいものをいっぱい食べさせてあげる。だから、どうかしら?」


そう言って、真剣な表情で包みをといたてりやきバーガーを左手に差し出した。

握手をもとめるように空の右手も差し出す。


隣ではクルトが「マジで?てりやきバーガーで釣る気なの?」と言いたげなドン引きな表情を向けているがガン無視です。


数十秒の沈黙。


そしてこくりと頷いたドラゴンはチュッと口付けるように鼻先をエマの右手へと当てた。

魔力が流れるような不思議な感覚。

その感覚を確かめるように手をにぎにぎしていると、左手にわずかに湿った感触がした。


ぱぁぁ!!と満面の笑みでてりやきバーガーを食べるドラゴンを呆然と見つめ、あははとエマは笑いだした。


エマだってまさかうまくいくとは思わなかった。


けど結果は……。


「やりました!」


サムズアップをしてドヤ顔すれば、あんぐり口を開いたクルトもつられたように笑いだした。


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