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勇者パーティの一員ですが、転生チートがまさかのマヨビームでした。……マヨビームで世界って救えますか?  作者:


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心の栄養、超大事です


「昨日は遅くまで作業されていたようですね?」


険しい獣道から比較的歩きやすい道にでたあたりで、不意に聞かれた。


声をかけてきたのは大きな石や邪魔な枝があるたびに、甲斐甲斐しく女性陣に手を貸してくれた紳士なハリソン。

さり気ないフェミニストぶりに「騎士、すげぇ」とエマを唸らせるパーティの頼れる最年長だ。


なお、前世年齢を加算すればエマがぶっちぎりで最年長だが、それは割愛する。

今世の人生では14歳。うら若き乙女ですので!


そんなハリソンの問いかけに、自然と顔がにまつく。


「今日のお昼ごはんはちょっと特別仕様ですよ。期待しててください!」


ふんす!と胸を張り気味に答えれば、その勢いに微かに目を見張ったハリソンも「楽しみです」と微笑んだ。


「特別仕様?」


「なになに?知りたい!」


食べ盛りの男子2人も興味深々。


「今日のお昼は…………てりやきバーガーです!!」


ためを作ったあとで告げれば、「マジで?!よっしゃぁぁ!!」とクルトから渾身のガッツポーズが放たれた。


「「てりやきバーガー??」」


「ん~、バーガーっていうのはパンにお肉や野菜なんかを挟んだもので、てりやきっていうのは調理法ですね。甘めの味付けのタレをからませたハンバーグを挟んであるって考えてもらえばわかりやすいかと。もちろん、マヨも使用してます」


「ハンバーグを……それはまた手間がかかりそうだ」


「甘めの肉、というのがあまり想像つきませんが……クルト殿の反応を見るにとても美味しいのでしょうね」


「マジうまい」


「私もとっても楽しみです」


早く食べたいとお昼を待ち遠しく思ってくれる反応に頬が緩む。


エマ自身も楽しみだし、がんばった甲斐もあるというものだ。


当然ながらこの世界に冷凍のハンバーグなんてものはなく、ハンバーガーを作るには一からお肉をコネコネし、ハンバーグを作るところから。

それでも手間を惜しまずがんばったのは、落ち込んだエマを慰めてくれたみんなの気持ちが嬉しかったから。


まぁ自分が食べたかったのもあるけど……。


それに……、落ち込んでいるときこそ美味しいものを食べるのは必要だと思うのだ。


前世の恵麻は忙しさに追われ、食も身の回りの家事もおろそかになりがちだった。

それは時間がなかったからなのだけど、適当な日々を送るうちにどんどん日常に張り合いがなくなった気がする。


忙しいときや落ち込んでいるときこそ、小さな楽しみやご褒美は必要だと思うのです。


心の栄養大事!


お昼ご飯を楽しみにルンルンと足取りも軽く進んでいた一同だが、予想外の事態が起こった。


「伏せろ、エマ」


クルトの叫びに頭を下げる。

ついでにフライパンで頭をガードすれば重い手ごたえがあった。

ジュッと不穏な音を立て、叫びをあげた灰狼が甲高い声をあげて飛びのいた。


忌々し気にエマを睨んだ灰狼が再び飛びかかろうとした刹那、クルトの剣がその身体を切り裂く方が早かった。


完全に息絶えたそれにほっと安堵の息を吐き出す。


「ありがと」


「いや。それより、これで最後かな?」


辺りを見渡すも、特に気配は感じない。

切れた息を整えるように、両手を膝についてはぁはぁと息をする。


再び獣道に差し掛かりいくらか歩いたところで、灰狼の群れに出くわした。

ウルフ系統の厄介なところは、群れで動くことと狩りに秀でた頭の良さ。


気付けばいつの間にかレオンたちと離され、森の深くへと追い込まれてしまった。

それでも一頭ずつ確実に数を減らし、ようやく襲い掛かってくる灰狼がいなくなった。


「ミレーヌちゃんたちは大丈夫かな?」


不安そうに声を漏らせば、大きな手が慰めるように頭をポンと撫でる。


「みんなだって強いし大丈夫だろ。それにレオンもハリソンもミレーヌを1人にしたりしないさ」


「うん」


「それより合流するのが大変そうだな。たしか来たのはあっち、だっけか?」


「たぶん……。必死だったから細かい道は自信ないけど」


そうして記憶を頼りに歩き出した。

いくらか歩いたところで、灰狼よりもよっぽど厄介な魔物に遭遇するとも思いもせずに。


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