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パッと見、不審者ですよねー

 

 さすさすと腰をさすりながらヨロヨロと歩く。

 初日の移動でも感じたが、長時間の馬車の移動は腰にくると痛感中のエマたちだった。


「腰……いた……」


「思った以上に辛いですね」


「一般の馬車とはあんなに揺れるものなんだな……」


 泣き言を零すエマ達をハリソンが心配そうに見ている。

 騎士として乗馬や長期間の移動になれているハリソンと、田舎から出てきて洗礼を受けているクルト以外は特にダメージがひどかった。

 なんなら魔物のとの戦いよりもダメージ。


「……これでも道がまだいいのでマシな方なのですが」


 困り顔のハリソンの言葉に一同大ショックを受けた。


 これに激しい揺れとか加わったら……世界の前に、腰が死ぬっ……!


「腰もだけど、痔になりそうだよなー」


 思ってても言わなかった一言をあっけらかんと口にするクルトを恨めしそうにジトッと睨む。


 そう、腰だけでなくお尻も痛い。

 けどそのワードは口にしたくなくて、みんな黙ってたのに……。


 これは本気で何か対策を考えなくちゃ!と決意したエマだった。


 そんなこんなでヨロヨロと腰をさすりながら辿り着いた小さな村。


 いかにものどかな村は冒険の“はじまりの村”って雰囲気でテンションがあがる。

 そうして一歩、村へと踏み出した。


「誰も居ませんね」


 木でできた簡素な柵をくぐって1分弱。

 キョロキョロと辺りを見渡すも、村人にはまだ出会わない。


「あっちの家が密集してる方に居んのかな?」


 クルトが指をさした方へと向かおうとすると……どこからか声が聞こえた。


「誰かぁ~」


 声は幼いこどものようだ。


「おっ、第一村人発見か?」


「でも……この声、どこから聞こえるんでしょう?」


 視線をさまよわせるミレーヌだが、声の主は見当たらない。


「おーい、どこだー?」


「っ!!助けて―!!ここだよー!」


 声の主を探すように大きめの声をあげれば、返ってきた泣き声交じりの返事。


 助けて、とはただごとでない。

 注意深く声の方をたどり、道をそれた茂みの方へとエマ達は向かった。


 そして目にしたのは…………。


 土管のような大きな管にはまったこども。


「よかったぁ。やっと気付いてくれたっ。たすけてっっ」


 ヒクッと涙ぐみながら男の子が必死に手を伸ばしてくる。


 キノコをGETすると大きくなるヒゲのおじさんが活躍するゲームのように、地面から生えた土管に顔をのぞかせるこども。


 ただ一つゲームと違うのは、それを通って地下の世界に行けるのでも、地上に出て来れるのでもなく……ぴったりとはまっていること。


「遊んでたら抜けなくなっちゃったの」


 やっぱりだった。

 なんでこどもって狭いところに潜りたがるんですかね。


 ハリソンが男の子へと手を伸ばし引っ張る。


 ……が、抜けない。


「痛いっ!痛いよぉ!!」


 泣き叫ぶ男の子を宥めつつ、もっと胴体の下の部分を持ち直して再度引っ張るがよほどぴったりとはまっているらしく、やっぱり抜けなかった。


「どうする?」


「最悪はこれを壊すしかないか……」


 どうしても抜けないのなら土管を壊すしかない。

 人命第一だし、最後の手段としてはそれしかないが無断で壊すのも得策ではない。エマ達は村の人間でないのだからなおさらだ。


 ふむ、とあごに手を当てて一つ頷いたエマは男の子がぴったりとはまった土管を覗き込む。


「ハリソンさん。その子をしっかり掴んでてくださいね」


「え?はい……」


 不思議そうにしつつ従ってくれるハリソンを見てから、エマは土管に指を差し向けた。


「マヨビーム!!」


 そして男の子と土管に向けてマヨビーム発射。

 たちまちマヨネーズ塗れになる男の子はわけもわからず目を白黒させている。


「なにやってんのっ、エマ?!」


「エマさん?!」


 驚くクルトたちにも構わずマヨビームを出し続けた。すると……。


 つるっと……それはもうつるりん☆と男の子の体が抜けてハリソンの腕により宙づり状態になった。


「よし、大成功」


 満足そうにエマが頷いたのと同時に「テオッ?!」と叫びながらまだ若い女性が現れた。

 しかも女性の背後には村人らしき数十人の男女。


 若い女性は男の子の母親だろうか?

 先程の男の子の叫びを聞きつけて探しにきたのかもしれない。


 見知らぬ不審者(エマ達)。

 屈強な男性に宙づりにされた幼いこども。

 そしてこどもは謎の白い物体まみれ。


「なっ、なんです!あなたたちっ!!」


 血相を変えた村人たちに叫ばれ、「違います!誤解です!」とエマ達は必死の弁明をするのだった。


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