出発前に衝撃事実発覚!!
マヨビームがただのマヨビームでないことを知った翌日、いよいよ旅立ちの日です。
お城からの支給品に両親が用意してくれた品々、たくさんのストック食品の数々など忘れ物がないかもう何度目ともなるチェックをすませたエマは時計を見て立ち上がる。
パタパタと足音を響かせドアに駆け寄るとほんの少し開いて外を眺めた。
見渡す範囲にお目当ての姿はまだ見えない。
「エマったら。もう何度目?まだ約束の時間までは少しあるでしょう?」
「そうだけど」
クスクスと笑うママに唇を尖らせて答えれば、「テーブルを拭いてくれる?」とふきんを渡され『ご予約』とかかれた札の立つテーブルを拭く。
今日はお店は臨時休業。
だけど朝からパパもママも厨房を忙しく動き回っているのは、エマたちにご馳走を準備してくれているからだ。
街を出るにはちょうどエマの住んでいる辺りを通る必要がある。
だからちょっと早めの昼食を食べてから出発することになっていた。
しばらくしてドアベルの音が響いた。
「いらっしゃい!ミレーヌちゃんっ」
エプロン姿のままミレーヌに抱きつく。
なにせお友だちの初訪問!うれしくないわけがない。
「こんにちは。お店にくるの、とっても楽しみにしてました。今日はお世話になります」
「歓迎はミレーヌだけかよ?ちわっーす、おじゃましまーす」
みんなの視線が厨房からでてきたパパやママへと向かった。
「お初お目にかかります。このたびは……フェリシア様っ?!」
お城でのキラキラした礼服ではなく、シンプルな服装ながらも王子感を隠しきれないレオンが丁寧なあいさつを述べようとして……とつぜん目を見開いて叫んだ。
なんかハリソンも真ん丸な目をしている。
「フェリシア?」
……ってか、誰?
状況から見るに、エマのママをフェリシアなる人と勘違いしているのはわかる。
他人の空似?とか思っていると、困ったように頬に手をあてたママが「あらあら」と呟いた。
「はじめまして、エマの母のフェリルと申します。フェリシアは私の姉です。もっとも、侯爵家に嫁いだ姉とも実家ともいまは関わりありませんけど」
んでもって、なにやら衝撃発言ぶっ放した。
…………。
…………………。
脳が発言の意味を理解するまで数秒を要した。
沈黙が広がる中、おっとりと「みなさん、ウチの娘をよろしくおねがいしますね」なんて笑ってるママ。
「ちょっと待ってっ?!どゆことっ?!!」
「こらっ、言葉は正しくつかいなさい。どういうこと、でしょう?」
「いま激しく論点そこじゃないし!」
え?え?と助けを求めてパパを見れば、困った顔で頬をかくパパ。
困った風でいてぜんぜん動じてないだろうママと違い、本当に困っているのだろうパパは言いずらそうに告げた。
「ママは元貴族の令嬢でね、パパと駆け落ちして平民になったんだ」
「なにそれ、初耳!」
「だってはじめて言ったもの」
うふふ、と笑うママのメンタルはきっと最強。
「そんなことよりすぐにお食事を準備しますね?」
「待ってっ、ぜんぜん“そんなこと”じゃないんだけど?!ちょっ、詳しく!経緯を詳しくっ!!」
「もうエマったら。お友だちも待たせてるのよ?」
「いえ……フェリルさま……さん。できれば私もお伺いしたく……」
「ならお食事のあとにでも。まずはみなさん、お席にどうぞ」
慣れ親しんだ故郷での最後の食事は、予想とぜんぜん違ったものになりそうです。