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もはやマヨではない……

 

 お菓子に手を伸ばそうとしたところで、エマは思い出した。

 自然に思い出したというより、じっと注がれるクルトの視線で。


 ガサゴソと鞄をいじる。

 鞄は許容量が見た目をはるかに上回る魔法の鞄(マジックバック)は旅の装備のひとつで、お城からの支給品。大変便利なのでエマの大のお気に入りだ。


「今日はサンドイッチを持ってきました」


 包みを開ければ、中には2種類のサンドイッチ。

 お茶うけ用にと一口サイズの小さめだ。


「具材はハムとレタスとチーズ、もう一個は卵サンドでーす!ポイントはコンビニみたいなふわふわ卵サンドなとこっ!男性陣はそっちね。こっちは手出し禁止!!」


 そういって大きい方の包みをレオンへと渡せば、レオンがその半分をクルトの皿へと盛った。


 ……そうしないとマヨラー勇者が大半を食べ尽してしまうから。


「なんですのこれっ?本当にすっごくふわふわですわ」


「本当だ。食感がすごく軽い」


「美味しいです」


 初体験の三人は今日も今日とて新作マヨ料理に驚いている。


 ある意味彼らもすっかりマヨ大好きさんに仲間入りだ。


「これってどうやって作るんですか?コンビニのってどうしてあんなにふわふわなのか不思議だったんです」


「あー、それね。卵の白身と黄身を別々にするの。一般にお家で主流なのは一緒に粗みじんにしちゃうけど、コレは白身だけを刻んで黄身ははボウルで滑らかになるまで潰してから混ぜて和えるのよ」


「なるほど」


「ミレーヌちゃんは料理とかは?」


「……お恥ずかしながらぜんぜん。だからエマさんは料理上手ですごいなって思います」


「ありがと。でも女子高生ならそんなもんかも。私の場合は元々料理は好きだったし、早くに両親失くして一人暮らしも長かったから。……もっとも最後の方はレトルトとかばっかだったけど」


 恥ずかしそうに頬を染るミレーヌは前世JKだったらしい。


 なんでも道路に飛び出した子猫を助けて事故にあったとか。

 幼い頃に高熱を出して、その時に前世の記憶を思い出したそうだ。


 一方クルトは、大学生で火事に巻き込まれ周囲の避難を優先させて煙にまかれたらしい。

 前世の記憶を思い出したのは、何百年と岩に突き刺さったままの剣を力試しに抜いた瞬間。


 ものすごくヒロイン・ヒーロー感がつよつよなエピソードにエマは思った。


 なんで私だけギャク要因っぽいの?!!


 死因が過労死、前世を思い出した切っ掛けはマヨチート。


 どう考えても前者2人と落差がひどい。



「もう明日には旅立ちですのね……」


 ふいにしんみりとエリザベスが呟いた。

 薄っすらと瞳には涙も浮かべてぎゅっとエマとミレーヌの手を取る。


「どうか気をつけてくださいましね。お兄さま、勇者さま、どうか2人を守ってくださいね。もちろんお兄さまたちもどうぞご無事で」


「もちろんだよ、ベス」


「まかせて」


 しんみりしたエリザベスの空気を拭うようにエマはあえて明るく笑いかける。


「がんばってくるね!ベスもお勉強とかがんばって!あとダイエットも」


「もちろんです。次にお目にかかる時には違う私をお見せしましてよ」


「ふふっ、楽しみにしてます。でもいまのベスさまも可愛いですわ」


 ミレーヌの言葉にうんうんと頷く。


 ぶっちゃけ、いまのぽっちゃりも可愛い。


 王家一家もそう思って甘やかしつづけてきたようだが、本人が気にしているとなれば話は別だ。


 運動量の少ないお姫さまが、豪華な食事やお菓子を思う存分食べていれば太るのは当然!


 エマとミレーヌはカロリー制限やお部屋でできる筋トレなどダイエット知識を伝授した。それと……食事はバランスよく、野菜もきっちり食べるように!とも。


「あとで厨房寄るね。マヨネーズ、がっつり多めに提供しとく」


「ありがとうございます!!」


 魔法の鞄(マジックバック)もそうだが、状態停止の魔法のかかってる入れ物なら賞味期限の問題もなし。


「けどマヨネーズはかなり高カロリーだから使いすぎはダメだよ」


 そんな会話をしつつ、カロリーハーフのとかあればな……と思ったときだった。


 急に音楽が響いた。

 それとなーく、“お風呂が沸きました”を彷彿させるメロディーが響き、エマの周囲がキラキラと光る。


『そのことなんだけどね、なんと!カロリー低めのも出せるよ!』


「は?」


 脳裏に響いたエアリスの声に思わずそう返す。


「どうしたエマ?」


「どうした……って、もしかして聞こえてない?」


「なにが?なんか光ってはいるけど……」


『君とは波長が合うっぽくてさ。たまに居るんだ、僕の声が届きやすい人。電波状態良好、みたいな?』


「電波……」


『それでね、マヨビームだけどカロリー低めも平気だよ。毎日使ってレベルも上がってるから出せるようになってるはず。ほかにもコレステロール減らすやつとか、出し方も細めとか星口とか色々試してね!からしマヨとかもイケるよ』


「ムダにハイスペックッ!!」


『もっとレベルをあげていけばケチャップとかソースとか、ほかの調味料もだせるようになるし』


「もはやマヨビームじゃないじゃんっ!!」


 エマは思わず叫んだ。


 マヨビーム、ムダに高性能……!


 けど、他の調味料も手に入れられる可能性があるのは正直うれしいエマだった。


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