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旅立ち

 異世界に転生した私はまるで別人だった。

まずめっちゃ人によっては太りすぎと言われそうな程ぽっちゃりした肉がついた体。

なぜか低身長なのは変わらなったけど…。

短かった髪は長くなって今はハーフアップの髪型がお気に入りだ。


 ちなみに身長149センチのチビぽっちゃりなのに。

胸囲だけは90センチ以上のバカ乳。

…そういえば違う世界の私はもっとすごかったけど。

多分栄養がとれてるかどうかの違いだろうな。

平行世界の同じ私でも栄養状態でこうも違うのか。


 そして…そしてなにより。

外で体が自由に動く。

前の世界ではただ暑くて鬱陶しかった太陽が。

綺麗な青空の袂でキラキラと私を祝福するかのように微笑んでいた。

こんなにも世界は軽かったんだ…。


 夕食で家族で食卓を囲む。

「おいしー」

愛情のこもった手料理を次々と口に入れて頬張っていく。

優しい両親が私が食べてるだけでニコニコと笑ってくれる。

前の世界では家族で食卓を囲むどころか笑顔になるような。

そんなことなかったのに…。


 これが家族ってやつなのか。

こんなにも温かくて優しかったんだ。

初めて知る気持ち。

心がポカポカと温かくて自然と笑顔になれる毎日。

いや初めてじゃない、忘れてたのか。

私にだって小さい頃は温かい家族だった。


 世界がこんなにも素晴らしい。

だけどその事実にふと私の心に影を落とす。



 この世界の私は恵まれていた。

ボロボロの服を着て。

板で打ち付けれた締め切った窓。

出れないよう塞がれた玄関。

エアコンの無い部屋でお風呂にも入れず。

地面にはいつくばって腐りかけ残飯を漁る毎日からは考えられない。


 美味しいごはんを食べさせてもらえるし。

綺麗な服だって、窓を開放させて涼しい部屋だってある。


 …ほんと前の人生の私のやせ細った体と比べると…。

ひどく悲しく感じられた。

優しい両親なら。

いじめがなければ。

たった一つ掛け違えがこんなにも違う結果をもたらすのだと。

人生の不平等さを憤りを感じじてしまっていた。


 幸せすぎる…。

そう考えてしまう自分がいた。

なんで私だけ…。

この幸福を兄弟達にも分けてあげたかった。


 そう考える中、5年が過ぎた。

10歳のころから変わり、15歳になった


 そうポニー夫婦の二人目の子供が死んだ原因。

国の為の徴兵の時だ。

私にも召集令状の青色の手紙が届いていた。

この国では15歳になれば男女関係なく。

国に連れてかれ兵士となる。

町の住人の中には帰らぬ人となった子供が沢山いる。

いつも。

いつもそうだ。

戦争でも虐待でも子供が犠牲になってく。


 二人はまた子供を失うのかと涙をこらえていた。

その時エマさんから素敵な水色ドレスをあしらってくれていた。

せめて綺麗な服を着せて送り出したかったとのこと。

しかも一つ一つ手作業でミシンで縫ってくれた手作りだ。

ドルフさんからは懐中時計をもらった、祖父から受け継いだ物らしい。

まぁ、兵士に送り出す子供に良い反物や先祖代々の物を持たせるのは。

この世界の常識的なものもあるけどね。


 私は小さな手提げ鞄と帽子だけで汽車へと向かう。

しかしその手を引き留められる。

「またお国の為に我が子を戦争へ行かせなければならないなんて」

「やはり神は残酷だ」

「心配しないでください」

「孤児だった私を稼ぎを費やしてまで今まで育ててくれたことを感謝してます」

「それではいってまいります」

「フーウ、ごはんはちゃんと食べるのよー!」

私は精一杯の笑顔と元気で二人の手を握り。

振り返らず汽車にのる。

涙をこらえながら。


 そうだこれもきっと罰だ。

今までが幸福すぎたんだ。

彼ら夫婦に会って。

初めて家族というものをしれた。

暖かい家族というもの。

血は繋がっていなくてもこれが本当の家族なのだと。

私にはもったいないくらいだ。

人殺しが幸せになれるはずなんてないのに。


 この先どんな運命が待ち受けてるのだろう。

そんな思いに馳せながら汽車に乗る。

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