魂の裁判所
目の前に、沢山の目玉に天使のような羽が生えてる異形の化け物のような物がいた。
化け物は神と名乗っているがとてもそうには見えなかった。
目の前には天秤が置かれていた。
「ここはどこ」
「ここは魂の裁判所だ、そして僕は神の使いだ」
「魂の裁判所?」
目の前の目玉の天使は魂の裁判所と言った。
さらに目玉の天使は自分を神の使いだと自称していた。
「君はとっても可哀そうな人生を送ってきたね、だが君は罪を犯した」
「だから地獄でもない天国でもないとこで、君の量刑を決めるのさ」
天国か地獄行きか決める。
つまり…。
「閻魔大王みたいなもんか」
「日本人にわかりやすくいえばそうだね」
「さて君の罪はわかるよね」
目玉の天使の問いにいらつく。
そんなもの言わなくても分かってるくせに。
「親殺しでしょ、地獄行き?」
「よくわかってるね、でもだからと言って地獄行きじゃないもちろん天国でもない」
「被告人風雨に輪廻転生刑を執行する!あなたは違う人生で罪を償うべきだ」
淡々と告げられた後。
目玉の天使は徐々に違和感が増えていく。
何故だが邪悪なものに見えていく。
「おめでとう、君の人生はもう一回ある異世界に行って自分の好きな人生を喜んでいいよ」
「ふざけるな!」
私は思わず叫んでいた。
「あんたが神様だっていうなら…なんで助けてくれなった!」
「やっと死んで楽になれると思ったのに…」
「そんなことしたってもう…帰ってこないよ大切なもの」
そうだ神だ何だっていうなら。
私たちを助けれたはずだろう。
二度目の人生があったって。
本当に大切なものはもう戻ってこないのだから。
子供が死んでいくそんな世界の不公平不平等。
神への憎しみ。
ただ怒りをぶつけるしかなかった。
「これは罰だよ、そして絶望」
「苦しみは続くんだよ、まだ」
またこの違和感だ。
その違和感の正体はすぐ分かった。
次々と目玉の天使のテンションが狂っていった。
「人を殺して楽に死ねると思った!?あはは!おバカさん!」
「これは罰だよ、殺したことへのそのくせ兄弟も助けられなかった」
「君だけ一人異世界で苦しんでも幸せになってもどっちも罪悪感で苦しみ続けるそんな刑罰、それがこの裁判所の役割さ」
「異世界転移はさしずめ監獄といったものかな」
こいつは。
こいつは天使なんかじゃない。
「天使の皮を被った悪魔め…!」
悪魔だ。
矢継ぎ早に繰り出される言葉は。
前後のつながりがまったくないとりとめのない言葉になっていくように見える。
「いいかい神はトラックにでも轢かれても人を助けようとする善人を転生させる存在」
「悪魔は苦しんでる人に更に苦しみを与える意地悪をする存在さ」
「贖罪のチャンスを与えてやったんだ…感謝して欲しいな」
目玉の天使は目玉の一つの映像を映し出した。
「今から見せるのは、もしあの時、殺さなんかったら…そんな可能性の物語」
映し出されたのは、私が両親を殺さず死んでた世界。
そこには天使となって生まれ変わり顔も知らない好きな人と一緒になっている。
まるで私の思い描く理想の世界だった。
「なんだ、よかった…でも私の選択は間違ってないよ」
それを見た私は。
別の世界の私が罪を犯さずいられ、幸せな未来を送れたことに安堵するとともに。
でも自分のしたことが間違いだなんて思わなかった。
悲しみより憎しみが勝った世界、ただそれだけのことように感じれた。
「さぁいくんだこれから先は君しだい」
最後の瞬間目玉に尋ねた。
私のいた世界での弟と妹はどこにいったのか。
「最後に聞かせて、この世界の弟と妹は天国にいったの」
「ああ」
「良かった」
そうじゃなかったら死んでも死にきれない。
視界が光に包まれ。
体がふわふわとどこかに浮いていく、消えていく感覚に包まれた。