始まりの春
今回のお話は夏織さんの初登場回!彼女は一体どんな子なのか?是非最後まで読んでみてください!
始まりの春 陽太side
諸々の手続きが終わり、病棟に入った。一人で窓辺の椅子に座りながら本を読む。外は薄暗く雨が降り続けているが僕の心は晴れだ。彼女が僕の心を曇りから晴れにしてくれた。初めての入院で、ベッドの大きさに驚いたがすぐに馴染んだ。
僕は小学生の頃から本や物語が好きだ。いつも学校に行く時も常に一冊は文庫本を持ち歩いていた。その本は、つい3週間前の入院決定の日からも僕の支えになってくれていた。
病棟診察担当の麻倉教授からは、「夕方に病棟関係者ともう一人の患者との自己紹介の時間をとるからよろしくね。」と伝えられていた。それまであと3時間程の時間がある。今回の入院は春休み前から学校を休んで入院の日程をなんとか入れたので、数日分の学校のワークなどが溜まっていた。なのでベッドの上半分を90度に曲げてベッドに座りながらワークのページを開いた。中学2年生の分のまとめに着手し始めた。
約2時間半勉強をしてワークを閉じた。自己紹介の時間前になり、病室に麻倉教授が入ってきた。「じゃあ自己紹介するから外に出よっか。」麻倉教授に促されて僕は外に出た。ちなみにこの小児病棟は他の病棟とは扱いが違い、部外者が完全に立ち入れないようになっており、ラウンジやシャワールームなども独立していて、教授たちが言った通りにほぼ貸切の状態だった。病室から出ると教授や看護師たちの間に一人、スラっと背が高く、透き通ったような瞳をした黒髪ロングの少女が立っていた。「じゃあお互いの名前と年齢と得意なことを言おう!」麻倉教授が元気よく切り込んだ。僕は少女の反応を見ながら話を始めた。「中村です。歳は14歳で、得意なことは物語を考えて書くことです。よろしくお願いします。」僕が答えると少女は恥ずかしそうに話し始めた。「富田夏織です。14歳です。得意なことはイラストを描くことです。よ、よろしくお願いします。」驚いたことに同い年だった。それと改めて顔を見ると少し違和感を覚えた。
自己紹介も終わり、夕食の時間まで時間があったので本を読んでいると、「コンコン」病室の扉をノックする音が聞こえた。扉を開けると、「あの、少しお話しませんか?」と、恥ずかしそうにこちらを向く彼女の姿があった。「いいよ。じゃあラウンジ行く?」そう言うと静かに彼女は頷いた。2人でラウンジに向かう。丸テーブルを囲むように椅子に座る。僕は言った。「改めてよろしくお願いします。」僕が彼女を見つめていると、彼女はそっと口を開いた。「あの、私の姉がこの病院で働いてるんですけど、その姉の名前、富田綾音って言うんですけど、もしかして中村さんって姉とよく話してるっていう中村さんですか?」最初に感じた違和感の意味が今わかった。彼女は僕の目標の人、『富田綾音』の妹だったのだ。「はい、そうですよ。夏織さんの姉さんとはいつもいろいろと話をさせてもらってます。というか綾音教授は僕のことを話してたんですか?」質問をすると彼女は、「はい。とても楽しそうにいつも姉が話してます。で、その聞いた話の中で本をいつも読んでるって聞いたんですけど、具体的にはどんなジャンルの本を読んでいるんですか?」彼女は若干食い気味で質問を投げかけてきた。そして僕は彼女の瞳を見つめながら言った。「基本的にはアニメとかドラマの元になった本を読むことが多いかな。」淡々と答えるとまた彼女は目を輝かせて口を開いた。「そうなんですね。私も結構本読むんですけど、ドラマの元の本でおすすめのものとかありますか?」一気に彼女は笑顔になって聞いてきた。「ドラマの元の本なら池井戸潤の『銀翼のイカロス』とかが良いと思いますよ。」そう言うと彼女は笑顔で頷いて、「うん。アドバイスありがとうございます。参考にしてみるね。」と言った。なんだか笑顔の彼女を見ていると少し胸の鼓動がうるさい。
少し間が開くと彼女は言った。「あの、中村さんのこと、なんて呼べば良いですか?」彼女の質問を聞いて確かにまだ呼び方を決めてないと思った。「別に呼び捨てでもなんでも良いよ。」そう伝えると彼女は、「じゃあこれから中村さんのこと陽太って呼んでいいですか?そのかわり私のことは夏織って呼んでいいですから、それでもいいですか?」その言葉を聞いた途端、胸と顔がすごく熱くなる。彼女にバレないように必死に冷静さを保とうとする。「う、うんわかった。」僕は短くそう答えると彼女は僕を見つめて微笑んだ。「じゃあ一つ質問があるんだけどいい?」そう言うと彼女は笑顔で頷いた。「夏織はいつぐらいまで入院する予定なんだ?」そう聞くと夏織は答えた。「まぁ3月いっぱいは入院かな。多分4月の最初ぐらいまでだと思う。」その答えを聞いて僕は一つの意見を夏織に提案をした。「じゃあ僕は3月の下旬までが入院期間だから、退院しても面会に来ていいか?」「えっ!いいの?私なんかのために?」彼女は恥ずかしそうにそう言った。「そんなに自分のことを卑下するなよ。だって夏織は友達なんだから当然だろ。」自分の気持ちをストレートに伝えると夏織は目に涙を滲ませていた。僕は慌てて夏織に話しかけた。「なんで泣くんだよ。そんな泣くほどのことじゃないだろ。」すると夏織は言った。「ごめん。私今まで友達にお見舞いに来てもらうことなんかなくて。いつも学校でも1人だったから。慣れなくて涙流しちゃった。」僕は夏織の言葉を聞いて無意識に言葉を放っていた。「もう夏織は一人じゃない。あと苦しいならちゃんとその気持ちに向き合えよ。あと周りの人間に相談しろ。」そう言うと彼女は静かに僕の胸に飛び込んできた。僕はこの時、初めて富田夏織という人を知った。この気持ちがこれからもっと形を変えていくのはまた別のお話。
ここまで読んでくださりありがとうございました!
今回のお話はどうでしたか?みんなは夏織さんのこと
どう思った?作者としてはお気に入りの人物で「こんな彼女欲しいなぁ〜」と思ったものをそのままここに
投影しました!ちなみに作者は彼女持ちです!




