新すすきの中学校へ
「起立。」
日直の掛け声で生徒全員が起立した。
「気を付け。おはようございます。」
―おはようございます。
全員で挨拶をし、生徒は席についた。学級委員を務める大村は、着席するときにチラッと見えたスース姿の男に目が行った。気になる。挙動不審な不審者だ。しかし、先生方が気に留めないということは教育委員会からの調査方だろう。そんな事を考えていると、担任からの連絡となった。
「今日は、時期外れだが、教育実習生が来られた。よって、その紹介をする。では、桜丘警視長。」
廊下に向かって担任が声を掛けると、先程の挙動不審な不審者がやってきた。
「おはようございます。北海道警察から、少年指導研修と称しやってきました桜丘といいます。」
挙動不審な不審者は、警察手帳を片手に自己紹介を始めた。
「研修担当講師となりましたので、事前の下調べという形で今日から3日間、お世話になります。知らない人ではありますが、警察ですので困り事あればいつでも教えてください。また、困った人がいるけど、自分が言ったらなにかされそう…。そんな時でも我々警察は皆さんのことを守れますので、安心してお声掛け下さい。では、3日間、どうぞよろしくお願いします。」
そういうと、軽くだが、姿勢良く一礼をして教室後方に立ち場所を変えた。
桜丘警視長。警察官か。僕は、救世主が現れたような気がした。昼休みにでも声をかけてみよう。そう思っていると、加西くん達がきた。
「お前、俺達に散々指導してもらったくせしてあのサツ官にチクろうとか思ってないよな。」
やけに圧力をかけてくる。嫌な人だ。もしかして、警察が怖いのか。
「大丈夫だよ。」
そういうと、トイレに行こうとしたフリをして教室を出た。向かった先は職員室。
「失礼します。桜丘警察官、いらっしゃいますか?」
すると、事務職員の方が「今はいない。」と教えてくれた。教室に帰るのも怖いので、職員室で待たせてもらった。
桜丘さんはその日は結局帰ってこなかった。