逃亡
いつも静かなヴァルフェル監獄
今日はドタドタとどこか騒がしい。
その時、突然両腕両足を捕らえていた枷が外れた
「一体何が?檻の鍵も開いているし・・・」
そう思いながらもこんなとこにいる筋合いも無いため、この監獄から脱走するため走り出した。
「とりあえず森に行くか。食料もあるだろう。」
「ハァ・・・ハァ・・・」
息が苦しい・・・足が棒のようだ・・・
何から逃げてるかって?…話してる時間も惜しいし簡潔に言うからメモしとけ!!
用意したか?なら言うぞ…狩人っていう俺たち異人を捕まえたり殺したりする人間の精鋭たちだ。
…俺は誰に説明してたんだ?幻聴でも聞こえたか?
「いたぞ!!こっちだ!!」
後ろで『狩人』の怒鳴り声が聞こえる
「くっそ!!・・・もっと早く!」
ぼろぼろの体に鞭を打ってさらにスピードを上げる。
そのときだった。
周りの視界が一気に開け、足元に広がる広大な大地が一望できる急な崖にたどり着いた。
「そ・・・そんな」
気配を感じ後ろを向くと銃を構えた『狩人』たちの姿が・・・
「そこまでだ、NO.156。相当お疲れだろう。今、楽にしてやる。」
この『狩人』のリーダ格の男が言うとそれを合図に照準を合わせるためスコープを覗く『狩人』達
恐怖で声が出ない・・・疲れで体が動かない・・・
まさに絶体絶命。そのとき脳裏に浮んだ言葉・・・それは『死』
「ウウァァァアアア!!!」
(いやだ!!こんなとこで死にたくない・・・!!)
「負け犬の遠吠え・・・とは違うだろうが、さようなら。撃てぇ!!」
気が動転していたのだろう、とっさにバックステップをするが銃弾から逃れられる筈が無く、急所は外したものの体は崖の向こう。重力に従い崖の斜面を転げ落ちていった。
「こちらCー35捜索部隊。NO.156は崖から転落。これよりNO.156の生死を確認に向かいます。」
『了解』
リーダー格の男は持っていた無線機で『狩人』の本部に現状報告していた。
その頃崖の下では
(死にたくない・・・こんなとこでくたばりたくない・・・やっと手にした自由・・・なのに・・・)
死にたくない一身でふらふらと立ち上がり歩き出した。しかし極度の疲労といくら急所を外したとはいえ全身に銃弾を浴びているし崖からの転落もあった。
そんな状態で立ち上がりなおも逃げようとするのはあまりにも無謀といえよう。
ドサッ
限界が来たのだろう、ついに地にひれ伏しピクリとも動かなくなってしまった。
(ああ・・・もうおしまいだ・・・)
その時明るく暖かな光が降り注ぐ。
(なんだ?・・・人?)
逆光で容姿までは確認できなかったが体つきから想像した結果だ。
(あなたをここで死なせはしません。)
脳裏に響く言葉を聞きながら意識を暗い暗い暗黒へと落としていった・・・
『狩人』について
『狩人』とは人間が作った対異人用精鋭部隊のこと
総人数150名、大半が若い男で構成されているが中には女、子供もいる。
つまり実力さえあれば老若男女問わず入隊することが出来る
与えられる任務は基本獣人や鬼人等異人の確保だが、監獄から脱走した囚人の確保、処刑するのも彼らの仕事である。
ヴァルフェル監獄について
ヴァルフェル監獄は人間が狩人達を使って捕らえた異人を保管する場所
優秀な奴には洗脳を掛け、他国との来る戦争に備えている。
普通の監獄、普通の設備では簡単に脱走してしまうため特別製の手枷と足枷、竜人のみ口枷がつけられ特殊合金製の檻に入れられる。
これらの設備は全て対魔法効果があり、基本的に壊す事は出来ないとされる。
また、管理は全て巨大なマザーコンピュータで行われてる。