冬なりの星
女友達の横に
あなたはひょっこり付いてきた
ゆっくりと名前を名乗っては
差し出したお酒を飲み
おつまみを頬張りながら
会話を楽しみ
あなたとの時間を過ごした
皆が寝静まった頃
「少し酔っ払った」と呟きながら
あなたは散歩へ行こうとするので
僕は仕方なく
あなたを追いかけた
追い付いて
上着をかけてあげると
横に連なって
歩くしかなかった
深夜の田舎の山間いの吹き抜けには
二人の話し声が響いて
シンとなった夜空には
冬なりの星が
突き抜けて突き抜けて
明るく見えた
それが透き通るような
風と一緒に
遠くへと
話し声を運ばれる気がした
自然に寄り添って居たが
しかしながら
慣れないことはするものではなく
「寒さで震える」と言うと
上着を渡そうとしてくる
素直になるしかなく
酔っ払った温かさとは別の
変な温かさと一緒に
静かに俯くのでした
帰り道は
お互いの熱が分かる距離で
互いの形が分かるような
静かな足音だけが鳴り
星空をオーディエンスに変え
芝居の最後の幕引きのように
玄関の扉を開けた
寝息を聞きながら通り抜け
炬燵で暖を取った
スマホの明かりが
目の前に入ってくると
角でぶつかって
交換したものがあった
薄明かりは
知らない顔と知りたい顔を
鮮明に見せてくる
僕が見たかったのかもしれない
意識の向こうに
「おやすみなさい」と
横になったあなたが居た