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夏の終わりの幻  作者: 衝
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夏の終わりの幻 下

後編です。

目が覚めるとそこは外だった。

病院で入院してたはずの自分が外にいるのが不思議で仕方なかった。

夢でも見てるんだろうか?と思ったがおかしい、身体のどこも痛みがない。

起きる前まであれだけ痛かったのに・・・私死んじゃったのかな。

でもだったらなんでここにいるんだろう。

なぜか帽子にワンピースのいかにも夏という格好をしていた。

せっかくだから少し歩いてみることにした。

川まで来た。

お姉ちゃんと家に帰るときよく通った道だ。

思い出に浸りながら歩いていると見知った背中を見かけた。

いつもと違うのは少し悲しそうな背中をしている。

「お姉ちゃん?」

「・・・」

返事がない・・・

「おーい!お姉ちゃーん!!お姉ちゃんってばー!!」

「・・・」

どれだけ声を張ろうとお姉ちゃんは反応しない。

ふと、お姉ちゃんの泣いてる顔が浮かんできた。

外で目覚める前泣いてるお姉ちゃんを見て大丈夫だよって私は伝えたかったのに・・・安心させたかったのに声が出なかったことを思い出した。

(やっぱ私死んじゃったんだな)

でも死んでいるのならどうしてここにいるんだろう?

私は確かに死ぬには若い年齢だったとは思うけど未練がすごくあったわけではない。

もちろんもっと生きたかったしもっといろんなことをしたかった。

でも幸せな人生だったと自分では思っている。

幽霊になるのは未練や恨みがある人だけだと思ってたけど私はそんなことはない・・・と思う。

みんな死んだら幽霊になるのかな?と思い他の場所へも行ってみるがそれらしき人・・・いや幽霊はいなかった。

私はなんで幽霊になったんだろうという疑問はあったがわからないものはわからないから考えても仕方ない。


次の日もお姉ちゃんは同じ川にいた。

昨日と同じく話しかけても返事はない。

やっぱり悲しげだ。

私のせいだろうか。

どうにか元気づけてあげたい、でも声は届かない。

また明日も声をかけてみよう!

せっかく幽霊としてだけどこうしてそばにいられるのなら元気づけてあげたい。

そして、次の日も同じように声をかけた。

また次の日もその次の日も。

しかし声は届かない。

目の前にいるのに・・・

明日なら届くかもしれない!めげちゃだめだ!


今日もお姉ちゃんはでかいため息をついていた。

「どうしたのー?」

といつも通り声をかけた。

「え?」

とこちらを振り返るお姉ちゃん。

急に声が届いて思わずびっくりしてしまった。

「わっ!?あっえ、えっと・・・ごめんなさい!いきなり話しかけちゃって!

なんだか緊張するし恥ずかしい・・・思わず帽子で顔を隠してしまう。

「こちらこそごめんなさいこんなところで話しかけられるとは思わなくて」

お姉ちゃんの声だ。

「そ、そうですよね!あんまり人も通らないですもんね!」

なぜか敬語で返してしまう。

妹だぞ!うらめしやー!とふざけて言いたい気持ちもあったがなんだか自分が妹だとばれてはいけない気がした。

もう私は死んでいるのだ。

生きているお姉ちゃんとこうやって話ていていること自体いいものか・・・

悩んでいると

「あなた見たことない気がするけどこの辺りに住んでるの?」

なんて答えよう・・・

「あ~・・・えーと・・・いえ!住んでないです!」

実際死んでるから住んではないもんね・・・

「帰省とか?」

お盆過ぎてるけどある意味帰省だね・・・

「そ、そんなとこ・・・です。」

変な子だと思われてそう・・・

まあいいや!私はお姉ちゃんを元気づけてあげたかったんだ!まずは何に悩んでるのか聞いてみよう!

「なにか落ち込んでるんですか!!」

しまった力んで大きな声になってしまった!

びっくりさせてごめんねえ・・・

「私そんな負のオーラ出てたかな?」

「ご、ごめんなさいそんなつもりじゃないんです!ちょっとため息が聞こえてきて後姿が暗くて・・・えーと!そう!暗かっただけです!!」

はっ!フォローになってない!

ここは無理やり元に戻そう・・・!

「そ、そそそそれで!なにかあったんですか?」

そういうとお姉ちゃんが笑い出した。

「な、なんで笑うの!」

「ごめんごめん可愛いなと思っただけ。なんでそんなに気になるの?」

「なんとなく気になって・・・だってあんなでかいため息初めて聞いたんですもん!」

あれは本当にでかかった・・・。

「ちょっとね、悲しいことがあってここでぼーっとしてれば少しは気分も晴れるかなーって思ってたんだ。ほら!日光浴びたほうがいいって言うじゃん?」

それでも夏の日光はむしろ女の敵じゃないかな・・・お姉ちゃん・・・

「夏の真昼間にずっと浴びてるのは逆に健康じゃなくなりそうではありますけどね・・・」

お姉ちゃんは確かに・・・という顔をしていた。

「お姉さんは今悲しいんですか?」

話が逸れそうだったので無理やり戻してみた。

「悲しいというか・・・寂しいというか・・・妹がね、病気で死んじゃったの。」

やっぱり私のことか・・・

「元々体が弱かったんだけどまさかこんなに早くいなくなっちゃうなんて思ってなかった。だから何も・・・姉らしいことができなかったんじゃないか・・・もっと優しくしてあげられれば良かったんじゃないかとかずっと思いながらここでぼーっとしてたんだ。」

私は黙ってお姉ちゃんの話を聞いた。

そんなことを思ってくれてたんだとびっくりした。

私は自慢のお姉ちゃんだよ!と言いたかったが今にも涙が出そうでしゃべることができなかった。

なんとか涙を抑えて話そうとしたとき

「ねえ・・・私は良い姉だったのかな?」

そんなの・・・

「ごめんね!そんなこと言われても困るよねってうわっ!」

思わず私はお姉ちゃんに後ろから抱き着いた。

「妹さんはきっと幸せだったはずです!今の話だけでも妹さんのことをよく考えている優しいお姉さんだと私は思いました!大丈夫です!」

私は涙を抑えることができなかった。

「今の話だけでそこまでわからないでしょー」

茶化しているようなことを言われたけど私は素直に思っていることを伝える。

「わかりますよ。だって妹さんのことが大好きなのは十分伝わりましたから。それだけで十分ですよ・・・妹さんだってお姉さんのことが大好きだったはずです!私が保証します!」

言い終わった後お姉ちゃんの返す言葉も待たず泣きわめいてしまった。

そんな私を見てお姉ちゃんは頭を撫でてくれる。

本当に優しいお姉ちゃんだ。

「ごめんなさい泣いてしまって・・・私が泣いてどうするんだって感じですよね。」

「ううん。良い姉だったかはあの子にしかわからないけどあなたのおかげで少しは自信持てたし元気出たよありがとう。」

そっか私は幸せだったことをお姉ちゃんに伝えたかったのか。

「大丈夫、お姉ちゃんは素敵なお姉ちゃんだよ。」

あふれる気持ちが抑えられなくなりぎゅっとさらに強くお姉ちゃんを抱きしめる。

そういえばお姉ちゃんって呼んじゃった・・・!

「ごめんなさい!ついお姉ちゃんって呼んじゃいました!恥ずかしい・・・」

「そんな謝らなくても気にしてないって、大丈夫だから。」

また頭を撫でてくれる。

「うん・・・」

もう少しこうしていたかった。

でももうお別れが近いみたい、そんな気がした。

「そろそろお家帰らなきゃ・・・」

「じゃあ帰ろうか。」

別れるのがとても寂しい。

「あなたのおかげで元気出てきた!まだこっちいるなら明日も私はここにいるからまた会ってお話ししようよ。」

またお話したいね・・・できるのかなぁ。

「明日には帰っちゃうから会えないかも・・・」

「そっかー正月とか来年とか来るならここ見に来てよ!私いるかもしれないからさ」

来年か・・・会いに来れるのかな。

だめだだめだ!せっかくお姉ちゃんが元気出たのに私がしょんぼりしてどうする!

最後くらい元気でいないと!

「うん!また来たらここに来てみるね!お姉ちゃんに会うの楽しみにしてる!」

「約束だからね!またね!」

お姉ちゃんらしい笑顔だ。

笑顔・・・見れてよかった。

「うん!約束!またねお姉ちゃん!また来年!」

お姉ちゃんは指切りをして家へと帰っていった。

私は見えなくなるまでお姉ちゃんの背中を見送った。

(ばいばい、お姉ちゃん元気でね。)

また会おうね。


後日談も読んでくだちゃい。

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