残忍でも聖女の皮を被れば問題ありません
「やあ、ご機嫌いかがかな?聖女様」
「聖女様のお陰で安心して暮らすことが出来ますわ」
「聖女様、我が家の長男もそろそろ嫁をと思っているのですが…」
きらびやかなホールで醜い脂肪の塊や化粧した枯れ木、木偶の坊を売り込む狸が私に話し掛けてくる。
その全てに軽い会釈で返事をして流す。
こんな見栄だけのパーティなんてさっさと終わればいいのに。
微笑みを作っているのは疲れるし、パーティの場での楽しみなんて…妄想くらいしかないなぁ。
あの人は筋肉質で切り裂き甲斐が有るだろうな、あっちの子は魔法でゆっくり焼いたらカワイイ悲鳴をあげるんだろうな…ああ、早く終わらないかな。
「ギィイィィイッッ!!」
やっぱり魔物を殺すのは楽しいな♪
私は力が弱いから剣を持って生きの良い状態の魔物を殺すのは出来ないけど、魔法で動けなくしてナイフを刺したり、目玉を抉ったり、耳を削いだり、内臓を引きずり出したりして遊ぶことは出来る。
魔法って便利だな、聖女特有の魔法に身を清める魔法があるから、遊んだあとの返り血とかも綺麗になるし、下らないパーティとかどうでも良い人付き合いを我慢できるのはこの特典があるからだよね…でもそろそろ聖女の皮を被るのも限界かな?
昔馴染みの護衛を付けてはいるけど護衛一人で聖女が魔物退治は世間体的には良くないみたいだし。
それに…人間も拷問したりしてみたいって最近思い始めちゃったしね。
「聖女よ、彼と共に凶悪な魔獣退治に向かってほしい」
命じられたのは数多の人を喰らう凶悪な魔獣の討伐。
けれど私はサポーターとして参加するらしい、メインは勇者と呼ばれる男。
彼は口数も少なく必要最低限の事しか言わない。
でも後ろで彼の戦いを見ていたら解った、彼は私と同類何だと、勇者の皮を被っているのだと。
幼い頃珍妙な集団に拐われ連れてこられた事の有る場所、凶悪な魔獣の住みか。
その魔獣は縛られた私を素通りしニヤニヤと笑っていた集団を襲い私に見えるように食べ始めた。
魔獣が肉を裂き、噛み砕き、血を啜る、私はその光景に興奮を覚えた。
次は自分の番かもしれない、なんて微塵も考えなかった…いや考えられなかった。
ただただ、高揚し興奮し目が離せなかった。
魔獣は集団を食べて満足したのか私は食べられず放置され、あとから来た救助部隊に助け出された。
あの時の魔獣をこれから私達が殺す…私を助けてくれて、私を目覚めさせてくれたお礼に残酷に残忍に殺してあげるね魔獣さん♪