骨董品。
#1
小高い丘の上にある一つの町。その外れでお客と店主の口論が行われていた。
「おい旦那ァ、よくもこんなガラクタ俺に買わせたなァ‼︎」
お客は筋骨隆々な男で少女の胴ほどあるだろう腕には古傷が目立つ。スキンヘッドに鋭い目付きのその双眸は、獣を彷彿とさせる獰猛さを孕んでいる。
「誤解だよ、お客さん。それは正真正銘本物の品さ。」
店主は何も騒ぐことでないと落ち着いた対応を見せている。
まだ年若い青年の店主は、青みがかった黒髪を長くし後ろで一つにまとめていた。長身痩躯の、同じく青みがかった黒い瞳には、真っ直ぐ自身よりも身長も体格も大きいお客を見据えていた。
「はァ⁈てめー何腑抜けていやがる。俺の仲間が、これはニセモンだって言ったんだよォ‼︎」
お客は店主の胸倉を掴むと簡単に宙に浮かせた。
そして荒々しい物言いに大声を上げるため、近隣住民たちが何だ何だとぞろぞろ出てきた。
ふふ、と口を僅かに弧にして笑う店主は
「いやいやそれは、お客さんのお仲間は目利きができないと言うことだよ。この店にある骨董品の数々はどれも嘘偽りない本物だよ。この俺が言うんだ、間違いない。」
「はーん、とんでもねぇ自信じゃねぇか。こんなガラクタを売っているだけの詐欺師がよ。こんなもん、売られた俺が馬鹿みてぇじゃねぇか。」
男は、手に持っていた骨董品。柄に黒い蠍が二匹。描かれた短剣を振り回し、
「やっぱ、要らねぇよ。こんな、オンボロ。」
と言って、店主の足元に投げ捨てた。
男はニヤリと笑いながら、
「じゃ。せいぜい、そのガラクタ共で詐欺を続けな。」
店主は、男のことは見ず足元に投げ捨てられた短剣を、俯き見ていた。
男はそんなことには気も止めず、その場を離れようと歩き始めた。
瞬間。
場の空気が、変わった。




