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令和元年7月17日(水)「メール」林康子(おまけ)

 さすが可恋ちゃんは仕事が速い。

 夜、テレビを見ていると一通のメールが届いた。


『新しい練習メニューを考えてみました。根拠とした理論もまとめています。添付しましたので、印刷して顧問の先生とご相談ください』


 なんと、素晴らしいことか。

 わたしはスマホを手に感動に打ち震えたよ。


 しかし、だ。

 印刷ってどうすればいいの?

 メールだって滅多に使わない。

 まして、印刷なんてやり方がさっぱり分からない。


「お父さーん」


 わたしは自分の部屋を出て、居間でテレビを見ていたお父さんに聞くことにした。

 最近はあまり話す機会がないけど、こんな時はお母さんより頼りになるはずだ。


「ちょっといい? 友だちからメールが来たんだけど、それを印刷したいの。でも、どうやっていいか分かんなくて」


 わたしは手に持ったスマホを見せながら言った。


「確認していいか?」とお父さんがわたしのスマホを指差す。


「うん」とわたしはスマホを手渡した。


 お父さんは画面を見て、「ちょっと待ってろ」とすぐに言って立ち上がる。

 両親の部屋に向かうので、わたしもついて行く。


 お父さんは机の横にあるプリンタを起動させ、印刷の準備をした。

 わたしは立ってそれを見ている。

 やはり、こういう時は頼りになるなあ。


 ケーブルを繋ぎ、印刷を始める。

 次々と刷り上がった紙が出て来る。

 印刷の具合を確認しようとお父さんがそれを手に取った。


「ちょっと読んでいいか?」


「うん」と返事する。


 何か気になることでも書いてあったのかな。

 お父さんは空手はおろか、スポーツにも無縁だったはずだ。

 読み終わったものをわたしに渡す。

 最初は1年生と2年生の練習メニューで、細かな注意書きがみっちりと書かれていた。

 その後は理論なんだろう、漢字だらけの文章が並んでいる。

 目が泳ぐとはこのことか。

 ところどころに横文字もあり、もしかしてこれ読んでおかなきゃダメなのと叫びたくなった。


「凄い友だちだな」


 読み終わったお父さんが言った。

 お父さんもこれをスラスラ読めるんだから凄いよ。


「ボリュームこそ足りないが、大学の卒論レベルだろう」


「え? そうなの?」


 卒論レベルと言われてもさっぱりだけど。

 なんとなく凄そうだ。


「これだけのものが書ける高校生と友だちなら、仲良くなって勉強も教えてもらうといい」


「あー、そうだね……あはは」


 これを書いたのは中学生だとはとても言えない雰囲気だ。

 わたしは適当に誤魔化して自分の部屋に逃げ帰った。

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