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令和元年7月4日(木)「合唱」渡瀬ひかり

 雨の中、今日も家まで美咲たちが迎えに来てくれた。

 正直なところ、何が危ないのかよく分からない。

 ちょっとコンビニまでと思っても親は反対するし、美咲たちもひとりで外に出ないように繰り返し繰り返しわたしに言う。

 わたしとしては、みんなと一緒にいる時間が増えているから楽しいけどね。


「ちょっといい?」


 教室に入るなり、日野さんが話し掛けてきた。

 美咲たちも足を止めて、日野さんの話を聞こうとしている。


「文化祭で有志による合唱を企画してるのよ。渡瀬さんと三島さんにはそのリーダーになって欲しい」


「え? わたし?」


 急な話に驚いた。

 それにリーダーだなんて。


「生徒会や文化祭実行委員会の人たちが色々とサポートしてくれることになってる。ふたりが合唱だけに専念できるようにね」


 日野さんの言葉にわたしより早く優奈が反応した。


「今、ひかりにそんなことをさせる意味あるの?」


 優奈の尖った声にも日野さんは平然としている。


「事件の被害者たちが辛い思いを乗り越えて文化祭で活躍するって感動的だと思わない?」


「何よ、それ」


「イメージ作り」


「あざとくない?」


「あざといくらい分かりやすい方が伝わるのよ。みんなも協力して」


 優奈はまだ不満げに口をへの字にしている。


 そこに泊里と千草さんが登校してきた。

 昨日は途中で一緒になったけど、今日は別々だった。

 日野さんはふたりも呼んで、さっきの説明を繰り返した。


「めんどくさそう」


 泊里はやる気がなさそうに呟いた。


「人集め、練習時間や練習場所の確保、メンバー間の調整など裏方の仕事はフォローしてもらえると思う。指導は谷先生の代わりに来た音楽の先生にお願いすることになった。ふたりの希望はできるだけ叶えるようにしてもらうわ。選曲とかね」


 選曲の言葉に気持ちがグラリと揺れる。


「合唱部に戻りたいのならそのための助力は惜しまないけど、今すぐって考えてないのなら協力してくれない?」


 わたしは泊里を見た。

 泊里もわたしを見ている。


「本当に歌うだけでいいのね?」


「うん」


 泊里の質問に日野さんが即答する。


「じゃあ、やってもいいわよ」


「ありがとう」


 日野さんは泊里にニコリと微笑み、今度はわたしに向き直った。


「渡瀬さんは?」


「やる」


 泊里がやるのなら、わたしもやる。

 日野さんはわたしにも「ありがとう」と言って微笑んだ。


 何を歌おうかなと心を浮き立たせていると、優奈が言った。


「合唱、アタシも参加する。いいよね?」


「え! ほんと?」


 わたしは驚き、そして、喜んだ。

 優奈と一緒だなんて。

 わたしは優奈に駆け寄り、手を取って嬉しい気持ちを伝えた。


「あんまり上手くないけど」


「そんなことないよ! 優奈ならすぐに上手くなるよ」


 わたしがそう言うと、優奈は少し不安そうな表情からいつもの自信に満ちた顔つきに変わった。


「ソフトテニス部でも何かやるんでしょ? 忙しくない?」


「平気平気」


「本当に嬉しい。頑張ろうね」


「ひかりは見てると危なっかしいのよ」


 優奈はやれやれという仕草を見せてわたしにそう言った。

今日は二話投稿です。その一話目です。

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