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転生刑  作者: 徹頭徹尾▦
2/3

#2ウツミシンダ

なんとなく、窓の向こうの空に左腕を伸ばす。


綺麗な緑色の小鳥が飛んでいる。

暖かそうな空だ、春だろうか。


腕を伸ばしたまま空を眺める

空を見ていると次第に意識が吸われていく気がした。


伸ばしているはずの左腕の感覚も、掛け布団がかかっている胸の感覚も吸われていく。


こんな感覚は何年ぶりだろうか。

幼い頃、小学校の低学年くらいのときかな、芝の生えた公園でよくこうして空を見ていた。


徐々に何も考えなくなっていく……


どれくらいそうしていただろうか(実際はそんなに経っていないと思う)。


「あ、」


声がした、幼い女の子の声だ。

意識が覚醒する。

声のした方を向いたときには既に[バタン!]とドアが勢いよく閉められた後だった。


左腕を下げ、起き上がろうとする

まず、右手に違和感

「いっ、」

直後、胸に刺すような痛み

掛け布団が上半身から落ちる

胸、というより上半身には包帯がしてあった、血が滲んでいる。


刺すような痛みの正体はこれか

そうだ、シロクマに襲われて……

避けたと思ったのに胸を裂かれていたらしい。

違和感のあった右手も小指と薬指が付け根から無かった。


「はぁ…」


溜め息を一つ


こりゃぁハードモード異世界生活の始まりだな


……



なんとなく、他に何かをしようとは思わなかったので、3本しか残っていない右手で握ったり開いたりしていると(ズボンを穿いているかだけ確認した)、ドアの向こうから階段を上る足音がした。


大柄な男が入ってくる。顔が濃い、少なくとも日本人顔ではないな(髭も濃かった)。歳は30~40代くらいだろうか、ダンディーなおじ様といった感じだ。


「おぅ、やっと起きたぁ、みてーだな。」


渋い声だ。ゆっくりとした口調で話してくる。

何て言っているか全くわからない。


言葉がわからず、自分の顔を見ているだけの俺に男は再び声をかけた


「ん? もしかして、言葉が通じねぇのか?」


声を発したあと、男は考え込んだ。


部屋が静かになり視線を感じて男の脚の方を見ると、こちらも日本人顔ではない、10歳くらい? の女の子がいた。

どうやら男を呼びに行き、そのまま男を楯にして隠れていたらしい。


男が声を発した

そんなに時間は経っていない。

そして一言、自分に親指を向け


「エド」


と、だけ。


直感でわかる。名前だ。

男はエドというらしい


こちらも自己紹介しないとな

俺もエドを真似るように自分を親指で指差し言った。

そのときになってやっと自分の名前を思い出した。


内海 秦(ウツミ シン)だ」


「ウツミシンダ?」


あ、自己紹介のやり方ミスったな

なんて不吉なこと言いやがるんだ。

そうか、言葉が通じないからエドみたく簡潔にしないと。


「シン」


次は力強く自分を名乗った。




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