1.勇者はまだ来てません(1)
それはまだ俺達が勇者と名乗るものに出会う前のこと
一人の男、カイト・シルバーと一人の女、リリー・ゴールドについての話。
「もうちょっとそっちいってもらえないかな?」
「いやこれ以上行けないから落ちちゃうから」
「でもすごいせまいよーー」
これは俺たちの住んでいる田舎の村から王都へ向かうまでの道中。乗合の馬車に乗り俺たちは王都を目指していた。
「それにしてもどうなるんだろうな」
「私に聞かれても困るな」
「それにしてもまず王都ってどんなところなんだろうな……」
俺たちはこれから力をもらいに行く。
この世界に存在する魔物と呼ばれる存在を倒すための力であったり、ものをつくるための力であったりである。それらはこれからの自分の将来を決める大きなファクターである。
それは神様と呼ばれる存在から渡される。
この世界には神殿や教会といったものがない。なぜなら神様が存在するからだ。王都には神様が住んでいる。彼らは新しく成人したものに特別な力を与える。ただし、多種多様な神様が存在するのでどの神からもらうかは自分次第である
長い間ガタゴト揺られているうちに馬車はかなりの距離を進んだ
と、その時前方からウィンドウルフという魔物が現れた。ここで護衛の人が前に出ていく。手に持つ剣でまず一太刀、彼らの前足を掻っ切る。そこから、魔物の中心部である魔石というものを一突きする。魔物は動かなくなり、残った魔石は彼の持つ収納袋へと入れられる。
今回の魔物はそこまで強くなかったようだが、護衛というだけで、冒険者というだけで数段かっこよく見える。
「カッコイイ……」
「カイトは冒険者になりたいの?」
リリーがそう聞いてくる
「逆にリリーは冒険者にならなくて何になりたいんだ?」
「お嫁さん……?」
俺はしばらくの間硬直した。
ただ、これがリリークオリティーである。
顔は整っていてとても可愛く、彼女の瞳はなんとオッドアイである。また、青く透き通った色の髪、少し湿っているくちびる、言うことなしであるのに加えて、優しくたまに天然な正確であり、巨乳である。もう一度いう巨乳だ。
最初の馬車の描写でどうしてそこまで狭かったのかはここまで来ればもうお分かりいただけたであろうか。
というこんなもとから男キラーのような娘の男キラー発言にどう反応すればいいというのだろうか。
慣れたは慣れたのはほんとである。
ただ、それを通り越してこちらに大ダメージだ。
……可愛すぎるだろ!!
「じゃあ誰のお嫁さんになりたいんだ?」
とは聞けない俺のヘタレ具合もどうかと思うが心の平穏のためには……ね?
ホントは昔にあんな約束をしたのに……。
「リリー、そろそろ街が近づいてくるけど向こうではどうする?」
俺は話題をそらしてリリーに聞く。
「カイトについていくよー」
「ほんとにそれでいいのか?
「カイトと一緒ならそれでいいの!」
勇気のでなくて行動に移せないヘタレな俺を許してくれと思いつつ俺はそうかと返事をする。
それからは取り留めもない話をずっとしているうちに王都に到着した。
ただ、この王都は俺の思っていたものとは異なっていた。どうしてかと言うと、想像の中の王都ではいつも必ずあった分厚く高い城壁が存在しないのである。そこんとかろを近くの乗客の人に聞いてみた結果
「ここは高くて分厚い城壁が必要ないんだ。なぜなら、名高き白銀の女神様が結界を張ってくださり、魔物はおろか、盗賊のような汚れた心を持ったものでさえ通さないような代物だからな。」
このように答えられたので納得。
だがちょっと残念だ。
ここからは乗合馬車を降りて、城門へ向かう。
そこでは王都へ入るものの身分を確認しているのである
衛兵さんが、
「身分証明書を見せてもらえるかな?」
と俺とリリーに聞く
「持ってないんですけどどうすれば……」
とアワアワしながら恐れながらに聞くリリー。かわいい。
鼻の下を伸ばした衛兵は街の中にある冒険者ギルドでギルド証を持ってきてくれればいいと教えてくれた。
これからギルドに行くこととしよう。