第二話 - 来栖暁人の不幸のお話/3
来栖暁人は公園のブランコの上で目を覚ました。
あれ? と思うこともなく、寝ぼけた意識は深夜の澄んだ空気を吸い込む。クリアな冷たさが全身に染み渡り、意識が覚醒していく。同時に全身から痛みが迸る。
いつもの見慣れた公園、通学途中に毎日見るその場所にいることに疑問を覚える。
なんだかんだあって学生ではなくなった、そして女子五人組に引きずられて初めて女の子の部屋に入ったところまでは覚えている。
そこから先は恐怖と激痛の嵐に掻き乱されて断片的にしか思い出せない。非正規の手段でディーヴァにダイブしてまたも殺されて強制離脱をくらったくらいか、しっかりと覚えているのは。
「……女子、怖ぃ」
バスで帰るか、と。携帯電話を見れば深夜。とっくにバスは車庫に帰っている時間だ。お金が掛かるがタクシーで、そう思い財布を開けてみれば綺麗に抜き取られていた。お札を入れるところに隠しポケットがあるのだが、その中からも全部抜かれていた。
「あいつら……!」
そして一番大事なもの、キャッシュカードまで取られたぁ! 最終的にそれで頭の奥がすぅっと冷めた。暗証番号を知られなければ大丈夫、その理論があの女子たちには通用しない。今頃口座もすっからかんだろう。
「けーさつ、けーさつ……ってぇ! シムまで抜いてやがるかっ! あの女ども!」
オマケに電話帳などのデータを綺麗さっぱりクリアされていた。
いまどき連絡先の番号を暗記しているような人は少ない、そして来栖は暗記している方ではない。
「なんで、こんなめに……?」
朝から拉致られ昼には退学処分で夜には全財産が消えていく。
神様というやつに見放されたのではなく、神様のご加護が届くよりも速く全部持って行かれたという感じだろうか。




