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第八話 打ち合わせ

ちょっと短いです。


クレーメンスの髪色を「白銀」から「金糸」に変更しました。(18年1月9日)

 私がギルドホームの受け取りをした翌日。

 実家が遠方にあるせいで横浜支部に登録以降ビジネスホテルに宿泊していたエルナとリーンハルトが、待ってましたとばかりに鎌倉にあるホームへと引っ越して来ていた。


「いやー。何か……予想以上の豪邸だな」


「後でどんなむちゃくちゃ言われるんだろうね、私達……」


「言わないでエルナ……」


 食堂のテーブルで昼食の宅配ピザを食べながら、五穀米の年長者三人組は気疲れしたようにため息をはく。


 ちなみに席順は、お誕生日席に私、その左右にエルナとリーンハルトなので、せっかくの大きなテーブルがほとんど活用されていなかったりする。


「まあ過ぎたことをとやかく言っても仕方ない。週末にはラルフとジークリンデの親御さんが見学に来るから、その日はホームにいてね」


 いくら『third life』が始まったことで魔人族になったとは言え、ご両親からすればラルフもジークリンデもまだまだ『子供』だろう。

 実際、二人ともまだ高校生なのだから充分『子供』であるわけだし、ルームシェア相手の顔を見ておきたいと考えるのも当然だ。


 正直な話、このギルドホームで共同生活することを『ルームシェア』と表現して良いのかは若干悩むところではあるが、その辺は気にしているときりがないので流してしまうべきだろう。


「その辺は勿論。何か俺達が準備しておくことってあるか?」


「うーん……。一応、午後二時に駅前集合で、私が迎えに行くことになってるんどけど」


「だったらお茶の準備はしといた方が良いよね。ケーキとスコーンとクッキーの用意は任せといて! 料理スキルレベルカンストの腕前を生かすとき!」


 リーンハルトの疑問に応じた私の言葉を聞いて、エルナが笑顔を浮かべながら、ぐっと拳を握って宣言する。

 料理スキル持ちが作った料理はバフ、デバフ効果が付与された食品アイテムなのだが、別に一般人が食べても害は無いので特に止めることもせずにゴーサインを出すと、エルナは早々にお菓子類の選定とレシピ確認のため、二階の自室へと走って行ってしまった。


「エルナは元気だねえ」


「あいつ俺より年上の筈なんだけどな……。それは置いといて、だ」


 たったか走って行ったエルナの背を見送って苦笑としていると、未だテーブルに座っているリーンハルトに呼びかけられて視線を向ける。


「茶菓子の用意はエルナがするつもりらしいが、飲み物の方はどうするんだ?」


 はて。と首を傾げたリーンハルトの疑問に「ああ、それね」と頷いて、私はアイテムボックスから掌よりやや小さいサイズの紅茶缶を取り出す。

 缶の上部にはふんわりとした花弁の花と小さな妖精の姿がシルエットで描かれていて、だいぶ可愛らしい外装だ。


「これ、前にクレーメンスから貰ったんだけど、使いどころがなくて死蔵してたんだよね。良い機会だから使っちゃおうかと思って」


 そう言って、紅茶缶を軽く振る。

 クレーメンスとは『second life』時代の元プレイヤーで、トップギルド『不変の絆』の幹部メンバーを務めるエルフ族の男のことだ。

 金糸の髪を長くのばし風になびかせた彼は、エルフ族を選んだプレイヤーの中からごく稀に発生する『ハイエルフ』である。

 エルフ族の上位種として存在するハイエルフは、魔人族に匹敵するほどの膨大な魔力を保有していて、エルフ族専用の草木魔法スキルと弓の上位武器スキルである長弓を自在に使いこなす凄腕の冒険者だ。


 ただ、残念ながらこのクレーメンスというハイエルフは紅茶中毒者と表現できるレベルの紅茶好きで有名で、あまりに好き過ぎるせいで調薬スキルを応用して茶葉のブレンドを行って、それを若い貴族向け商品として販売し成功しているのだから、筋金入りだと思う。


「だったら淹れるのは俺に任せてくれ。この前、冒険者ギルドの依頼で竜人国に行ったときに良いティーセットを見つけてな。つい衝動買いしたんだが、今こそ満を持して使うときだろう」


 ぱちり。と赤い瞳を片方かくしてウィンクして見せたリーンハルトのありがたい申し出に、礼を言いながら紅茶缶をテーブルの上に置く。

 そのまま軽く指先ではじいて滑らせた紅茶缶は、狙い通りリーンハルトが構えた右手へと向かい、彼によって無事にキャッチされてアイテムボックスの中へと仕舞い込まれたのだった。


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