表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/17

第十四話 支部長会議

 支部長会議が行われるのは、予想通り冒険者ギルド東京支部に併設された会議場だ。


 会議場には正面にスクリーンが設置されており、脇には司会進行役だろう男性が座っている。


 参加者用の席は正面に向かってアルファベットの『U』の字を書くように設置されており、指定された席に各県から来た支部長と護衛の冒険者が座っていた。


「それでは皆様。本日は『第一回・四十七都道府県冒険者ギルド支部長会議』を始めます。進行は東京支部所属の三淵が担当させて頂きます」


 会議場の時計が開始予定時間を示したことを確認し、スクリーン横の席に座っていた男性が立ち上がって一礼する。


「本日の議題は冒険者ランクの昇格試験についてです。手元の資料をご覧ください」


 司会進行役の三淵に促され会議に参加している合計九十四人に及ぶ支部長とその護衛達が、資料へと視線をおとす。

 記されているのは、各種族国の冒険者ギルドで行われている昇格試験についてだった。


「現在各冒険者ギルドで行われている昇格試験では、まず受験資格を得るために一定期間中に一定数の依頼を成功させる必要があります。この『一定期間』と『一定数』の具体的な数字に取り決めは無く、各ギルド支部長の采配に任されています」


「質問だ。何故受験資格者のラインを共通化しない? 各ギルドには魔導通信機が置かれているのだから連絡は取りやすいだろう?」


 疑問点を口にした某県の支部長は公式発言として挙手をしたものの、問いかけ自体は自分が連れてきた護衛の冒険者に向けたものだ。

 当然、続けて手を上げ発言の許可を求めたのは、問いを発した支部長が護衛として連れてきた人族の冒険者だ。


「質問にお答えします。正確に申しますと共通化しないのではなく、共通化『出来ない』のです。これは地域ごとに出現するモンスターの数やランクに違いがあるからです」


 人族の冒険者が発言を終えると、その説明に新たな疑問を持ったらしい小松支部長がチラリと私に視線を向けてから、司会に向けて手を上げる。


「違いとは、具体的にどのようなものですか?」


 これは当然ながら私に向けた質問ということになるので、先ほどの人族の冒険者に倣って挙手をする。


「例えば、帝国の首都である帝都付近ではすでにモンスターの類は駆逐されており、せいぜい小型アクティブモンスターがいる程度です。しかし人の手が入っていない辺境になると、大型のアクティブモンスターが頻繁に目撃されます。……自然豊かな土地で熊や猪の獣害被害があるのと似たようなものだと考えていただければわかりやすいかと」


 説明を終えると、参加している支部長達が口々に「ならば共通化は不可能に近いか……」と呟き唸っている。


 正直『second life』時代は全く気にしていなかったが、今や冒険者ギルドは全日本規模の組織となっている。

 昇格試験の規則を厳密に規定するのは必然だ。


 ただやはり元がゲーム上の組織なので、そこまで細かい設定は作り込まれていないし、各種族国も現状のふわっとした規則で何となく上手いこと回ってしまっているので問題にもならない。

 となればやはり日本側で新たに規定をするしかない。


 実に面倒くさい話だと思う。




 結局その後、会議は見事に紛糾してしまい、一度クールダウンする意味も兼ねての昼休憩となった。


「よう。久しぶりだな、アデル」


 小松支部長と連れだって近くのファミレスにでも入ろうか、冒険者ギルドに併設されている食堂に入るか相談しながら会議室を出たところで、声をかけられて振り返った。


「うん? あ、クレーメンスじゃない! 天空竜討伐で組んで以来だよね?」


「たぶんそれで合ってるぞ。ちなみに俺は前橋支部の所属だから」


 ひらっと手を振って、クレーメンスは現在の所属支部を教えてくれる。


 数少ないSランク冒険者の一人で、魔人族並にレア種族の『ハイエルフ』である彼は、以前ラルフとジークリンデの保護者をギルドホームに招いた際に出した紅茶の提供者だ。


 つまり、例のファンシーなパッケージの缶に入った紅茶葉の販売で成功している紅茶狂である。


「前橋っていうと……群馬県だっけ?」


「そうそう。よくわかったな」


「いや、県庁所在地くらいはわかるって」


 何を言ってんだ貴方は。と若干呆れ混じりに返せば、クレーメンスは金糸のような髪に縁取られた中性的な美貌を陰らせる。


「ギルドメンバーは誰もわかってくれなかったんだ……」


「あ……そ、そうなんだ」


 彼の所属するギルドは『second life』時代の超大規模ギルド『不変の絆』だ。


 確か立ち上げ当初はエルフ族ばかりの魔法特化ギルドだったが、クエストの効率化のために前衛職を募集し、一気に数が膨れ上がったのだと記憶している。


 というか、ギルド加盟順を巡ってPKまで発生したので、一時期は荒れに荒れたことで有名なギルドである。


 更に言うなら、廃ゲーマーがメンバーの八割を占めることでも名を馳せていたりするギルドだ。


「何故だ……ゆるキャラとか有名じゃねぇか」


 悲しげにエメラルドの瞳を曇らせる男に、いったい何と言って慰めてあげれば良いのだろうか。

 分からなかったので「ぐ○まちゃん可愛いよね、うん」と言うに止めておく。


 そして此処まできてようやく若干放置気味だった小松支部長の存在を思い出して、慌てて隣に視線を向ける。

 だが、幸いというか何というか、小松支部長はクレーメンスが所属しているという前橋支部の支部長と話し込んでいた。


「おっと。このまま立ち話をしていると昼食を食べ損ねてしまいそうですし、せっかくですからご一緒にいかがですか?」


「そうですね。では、お言葉に甘えましょうか」


 私の視線に気づいた小松支部長の提案に前橋支部の支部長が頷いて、四人そろってゾロゾロと移動する。


 昼休みが始まってから少し時間がたってしまっていたので、今から外に食べに出ると絶対にランチタイム混雑にぶち当たってしまう。


 そんなわけで、私達の足は自然とギルド併設の食堂へと向いていた。


第八話にて名前と容姿が登場しているクレーメンスですが、髪の色を「白銀」から「金糸」に変更しました。

一応「ハイエルフだから一般エルフと違って白銀の髪」という設定だったのですが、そうするとダークエルフの髪色どうするんだという事に気づきまして……。

そんなわけで、クレーメンスの髪は金髪です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ