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閑話 年末限定イベント

番外編なので作中の時期とはズレが発生しますが、『third life』に突入して一年目の年末ということでお願いします。

 日本という国は、基本的にイベント好きな民族だ。

 節分とバレンタインが同じ月に行われ、クリスマスを祝っておきながらお正月には初詣に向かう。


 それ故に、かつてMMORPGとして日本企業によって運営されていた『second life』では、定期的に限定イベントが行われてきた。

 つまり、世界の融合により始まった『third life』の世界においても、当然のように限定イベントが発生した。



 ーーいや、発生してしまったのだ。



「あー! ジークリンデ、そっち行った!」


「無理です! 手が回りません! そっちで何とかしてくださいよ、エルナの方がレベル高いでしょう!?」


「ははは! 一撃必殺主義の斧スキルだとコイツらの相手はきついだろうな!」


「よっしゃ! 雑魚狩りこそが俺の真骨頂! 此処は俺に任せて先に行け!」


「はいはい。フラグ乙」


 ギルドホームがある鎌倉で、おそらく最も有名だろう神社の鳥居前。

 私達、五穀米のメンバーがお互いに声を掛け合いながら、鳥居を潜ろうと群がってくる『コオニ』を相手に戦闘を繰り広げていた。



 コオニとは、イベント専用の限定魔物であり、見た目は三十センチ程の身長でどす黒い肌を持った一本角の小鬼だ。


 名前がそのままだとかは言ってはいけないし、気にしたら負けなのだろうと、愛用のサブマシンガンで周囲のコオニを一掃しつつ考える。


 取り敢えず。今回のイベントーーもとい、冒険者ギルドから発行された大規模クエストの概要はこうだ。



 ーー「来る年末。人々の煩悩から大量のコオニが生まれてしまった! コオニは煩悩と厄を振りまくため、寺社仏閣に襲撃してきた! このままではトシガミサマを迎える事が出来ない! 冒険者達よ、コオニを倒し、無事にトシガミサマをお迎えしろ! 無事に本殿への進入を防ぎクエストを達成すると、倒したコオニの数に応じてトシガミサマからお年玉が貰えるぞ! 奮い立て!」



 と、まあこんな感じである。

 要するに、大量発生した単一の魔物相手に戦闘を行い、討伐数に応じて報酬が貰えるタイプのクエストである。


 ちなみに先ほどサブリーダーのラルフが雑魚呼ばわりしていたが、このコオニ、これで結構面倒な魔物で、小型アクティブモンスターながら異常に多い個体数と、角と爪に猛毒を持つという特性からBランクに指定される魔物だ。


 決して雑魚ではなのだが、さすがにSランク冒険者が五人も集まっていては、雑魚扱いも致し方ないと言ったところだろうか。


「というか実に今更なんだが、どうして此処を守る冒険者がこんなに少ないんだ?」


 クルッと扇を広げて着物の袖をなびかせターンしながら、リーンハルトがごもっともな疑問を口にする。

 ちなみに、現在彼は扇スキルによる『舞』の無限コンボに突入しており、HIT数がえらいことになっている。

 しかも大体が物理攻撃だ。


 相も変わらず、優雅な見た目とは裏腹に脳筋な戦い方だが気にしない。

 的の数が多いのを良いことに、狙いも定めず通常弾をばらまいている私が何か言えた義理では無いからだ。


 いや、だってラク何だもの。

 スキルレベルがMAXまで上がっている関係で通常弾でもかなりの攻撃力があるし、わざわざ弾数制限のある特殊弾丸を使うのも勿体ない。


「確かに! これ、いくらなんでも私達の負担! 多すぎませんか!?」


「あーそれね……」


 ギルド内で最もレベルの低いジークリンデが、必死で鞭を振るいながらリーンハルトの疑問に同意する。


 いくらレベルが低いといっても、彼女だって魔人族であり、冒険者ランクは当然、Sランクだ。


 本来は苦戦するような相手ではないのだが、彼女は最近、大学進学に向けて塾に通い始めていた。


 その反動で受注する依頼の数が激減しており、久々の大規模戦闘の勘が戻らないらしい。


 ジークリンデの鞭スキルはラルフの鎌スキル同様に多数を相手にすることを得意とするスキルなので、早いところ勘を取り戻して欲しい。


 ぶっちゃけると、ジークリンデの戦闘が視界に入り込むたびにヒヤヒヤして目の前の敵に集中出来ない。


「いや、私達のホームが鎌倉にあるのって結構有名でしょう? いくら大きい神社だから攻めてくるコオニの数も多いだろうって言っても、私達が参戦するのは目に見えてるわけで……」


「ああ……。俺達と一緒だと討伐数が稼げないから他に行ったってことか」


「正解」


 今回のクエストでは、討伐数に応じて報酬が出る。

 つまり私達と同じ場所でコオニ狩りをすると、年明けに得られる報酬が少なくなってしまう可能性が非常に高いのだ。


 結果、腕に自信のあるBランク以上の冒険者は各地に散ってしまい、逆に自信の無い冒険者は地元密着型とでも表現するべきなのか、とにかくあまり大きく無い場所の守りについてしまった。


「つまり此処に来てるのは私達のオコボレ狙いってことだね!」


「いや少しはオブラートに包め」


 ブンッ。と斧を振り回して……思い切り空振りしたエルナの発言に、元々の質問者であったリーンハルトが呆れたようにツッコミを入れる。


「ま、ぶっちゃけるとエルナの言うとおり何だけどね」


 苦笑して、エルナが伐ちもらしたコオニをサブマシンガンで掃討する。


 ところで今の攻撃で私の討伐数は四桁を超えてしまったのだが、これ大丈夫だろうか。


 また「魔人族チート過ぎんだろ。俺らに報酬よこせよゴラァ!」と絡まれる回数が増えそうで頭痛がしてきた。


 別にそんなチンピラに負けないけど。


 誰に言うでもなく一人ごちつつ、押し寄せる集団にだんだん面倒になってきた私は、鬱憤晴らしも兼ねてコオニの密集地帯に向けてグレネードをぶん投げたのだった。



 それから数時間。

 私が投げたグレネードの数が五十個を超えようとした辺りで、ようやく夜明けがやってきた。

 コオニは日の出を迎えるのと同時に陽光に照らされ溶けるように消えていき、私達とオコボレ狙いの十数人の冒険者は無事、報酬を手に入れることに成功したのだった。



 余談だが、報酬はアイテムボックスのマスが討伐数と同数分だけ増加する。というものだったので私のマス数がえらいことになってしまったのは、もう不可抗力ということで勘弁して欲しいところである。




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