回想。
文章が稚拙ですが、暇な時にでも読んで頂けたら嬉しいです。
―――待って!
―――お願い!!
―――お願いだから!!
悲鳴が飛ぶ。
一目散に逃げ惑う観衆。逃げ惑う高官。
周りの支援者を蹴散らして逃げている彼を、誰よりも守らなくてはならない、という事実が、憎らしかった。
―――お願いだから!
―――助けて!
子供の声が響いた。
「お客様、お呼びでしょうか」
機内のアナウンスボタンを肘で押してしまったらしかった。CAがやってきて、仮眠をとる私に、腕を叩いて起こしてきた。
「すみません。間違えて押してしまったようだ」
そう答えると、「わかりました」と笑顔で、怒る様子もなく彼女は去って行った。
雲が、窓から見える。
―――青空。
あともう少しで山陰に着く。
東京での要人警護の職務を辞め、1年。警護と言う仕事に疲れて、私は田舎に戻ろうとしていた。昼前に東京を立って、1時間。機内は、とても静かだった。
窓辺を見ていると、白い雲の上、東京での警護体験をまざまざと思い出す。
―――間もなく鳥取です。
アナウンスが聞こえて、正志は目を閉じて息を吐いた。
ターミナルに降りると、一人の女性が、正志を待っていた。五十から六十の年頃の彼女は、手を振って、名前を呼んだ。
「平方さん、こっちだえ」
正志は軽く会釈しながら歩いて行った。
―――…。
紫の服を着た女性は、どこまでも快活で、懐かしいとばかりに笑っていた。
「久しぶりだえな。正志君。元気だったかいな?」
「えぇ」