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ブーム

作者: 早田将也



「私さ~。昨日髪切りに行ったんだけど、この髪型、超良くない?」

まだ顔に幼さが残る女性が向かいに座る友達に向かって自分の髪型について意見をもとめる。

「ホントだ。超ヤバい。私もその髪型にしてもらおうかな」

ほとんど強制的にほめることを求められた友達は、素直にそれに応じる。

「亜紀はそのままの方がいいんじゃない?それよか、その服どうしたの?」

ほめてくれた友達にも何かほめ言葉の1つも言ってやらなければならない。

「あ、これ?おとといのテレビで、超セレブのマリリンが着ていたの。それ見たら、私欲しくなっちゃって」

友達の服装は有名人が来ていたものと同じであるということに驚きながら、少しうらやましくなる。

「マジ?マリリンが着ていたんだ。私もほしくなっちゃう」


お昼のファミレス。

ちょんまげの女子高生と、カーニバルの衣装を着た女子高生がお互いの身なりをほめあっている。彼女たちがほめている点は、お互いのセンスではなく、どれだけ早く流行に乗ることができたかに重点が置かれていた。

しかし、2人だけを笑うことなかれ。

あたりを見渡せば、いろんな世代の人間が様々なスタイルで自己表現をしている。

和服、アニメのコスプレ、カーボーイ、インディアン。

昔の人間からしてみれば、まるでファミレスの中で行われる仮装大会だ。

しかし、衣装の多様性はそのファミレスの窓から外を眺めても、同じことだった。

山賊。

中世の貴婦人。

馬にまたがった騎兵隊。

腰に布を巻き、槍を持った原住民。

変わったところでは、全身に毛皮を着こんだイエティといったところか。

交通も馬車、人力車、かご、蒸気機関車、最新鋭の新型車などなど。

世界各国で表現の自由を尊重した社会が実現した結果だった。

「ところで、亜紀は彼氏ってどんな人?」

最近友達の亜紀に彼氏ができたと、仲間内では有名だった。

亜紀がその男性にほれ込み、積極的にアプローチしたという噂だった。

「私の彼氏は年上の大学生で、有名大学生、金持ちで、身長が高い人よ」

亜紀は鼻高そうに彼氏の説明を始める。

「うわぁ、すごーい。かなりハイスペックじゃん」

内心複雑な思いながらも、友達の偉業をほめたたえる。

「まあね。この前結婚した、あの女優みたいにハイスペックな男性と付き合いたかったのよ」

「わかる~。あこがれるよね」

麻衣は内心嫉妬したので、今度はあらさがしをしてみようという気になった。

「ちなみに彼の性格はどうなの?」

「性格は……よくわからないわ。でも、それだけハイスペックな人だったらどんな性格でも文句言えないわよ」

亜紀はそんなことどうでもいいじゃないのと言わんばかりに話を終わらせた。

これではアラなど探しようがない。

「……それもそうね。ああ、私もそんなハイスペックな彼氏が欲しいわ」

本心だった。

それだけのハイスペックがいれば、どれだけ友達に自慢できるか。

「学校にはそんな男子はいないものね。麻衣はどんな人を探しているの?」

「ええ、最近はやりの“小動物系男子”を探しているんだけどね」

「小動物系男子、よくテレビに出ているわよね~。けど麻衣は肉食系男子が好きじゃなかった?」

「それは二週間前の話。今は肉食系男子なんて古いわ」

「さっすが、麻衣。いつも時代の最先端いくわよね~」

「もちろんよ。私はみんなのファッションリーダーだからね」

盛り上がっている二人の会話に水を差すように突然、町中からサイレンが鳴り響いた。

それと同時にお店にいる人々の携帯が緊急速報を告げる。

そこには“宇宙人の襲来か?”と書いてあった。

「なにこれ。やばいじゃん」

「これ見て」

麻衣が携帯で、テレビ中継を亜紀に見せる。

「大変です。宇宙人が侵略してきました。あ、危ない……」

街は壊され、逃げ舞う人々。

人間も攻撃を開始するが、長い年月の間、各国の戦争もなく、平和ボケし、名ばかりの軍隊が個性的な装備を推奨していたため、宇宙船に弓矢や投石器、ピストルで対抗していた。

地上では名誉と誇り高い騎兵隊も、空に浮かぶ宇宙船の前では見守ること以外、なすすべがない。

「これヤバいね」

「私達も逃げましょう」

亜紀と麻衣はお店の外に出ると、空を見上げた。

そこには巨大な宇宙船が空に浮かび上がっていた。

まもなく人類は宇宙人に降伏することになった。


しばらくしたのち……。

亜紀は麻衣と久しぶりに会った。

隣には麻衣の彼氏と思われる人物。

「麻衣。ひさしぶり~。元気?あら、この人は麻衣の彼氏?」

亜紀は麻衣の隣の人物を眺めると、興奮したように麻衣に確認する。

「ええそうよ。すごいでしょ。亜紀に見習ってガンガン攻めたら……付き合ってくれたの」

「うわあ、すごい。今テレビによく出ている宇宙人じゃないの……さすが麻衣」

隣の宇宙人は、地球人が何やら楽しそうに話していたが、翻訳機を使って、反逆の計画でないことを知ると興味が無くなり、翻訳機のスイッチを切る。

「……地球人はどうしてこう変わったやつばかりなのだ?この女など、言葉が通じないくせに私にまとわりついて何のつもりだ?まあ、捕虜に首輪をつけて散歩に付き合ってやることは私たちの間で流行っているらしいが……」


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