橿原のクリスマス事情「兎に角リア充に物申す」
ある日、ネットゲームにたくさんの時間を費やしていると、寒くなってきたと感じ、窓にかかっているカーテンを開けてみると、雪が降っていた。
「雪か……」
小さく呟いた俺―――橿原 錬は、誰にも聞こえないくらいの音量で小さく呟いた。実際、ここには俺一人で住んでいて、誰にも聞こえないのは当たり前なのだが、もう一人の住人にも気づかれていないようだ。
俺の住んでいるところはあまり雪は降らず、雪が降ることが稀であった。
そして、雪が降ってくるということは、イベントが舞い降りてくることに等しかった。それともうひとつ、俺にとってもいやなイベントがもうひとつある。
まず、俺にとって最大のイベント。それは、ゲームである。毎年この時期になると、中古のゲームが安値で売られている。そこへ群がるネトゲ廃人とともにここぞとばかりに買いに行く。そして年末の大感謝祭とかなんとかで、中古のゲームが沢山売られているのだ。俺は、毎年この時期を楽しみに待っている。
そう、待っているのだが、俺にとっての嫌なイベントなのだが、ここぞとばかりに年末ということで家族と過ごす奴らが多い。その中で、俺が最も嫌うやつらがいる。俺が最も重視している奴らが―――”リア充”である。
リア充というのは、俺らネトゲ廃人のことを「世界の塵」だとか、「キモイ」、「きたない」ものと扱われ、俺らのことを悪く言うやつらのことである。もっとも、これは俺の勝手な推測にすぎないが、俺がこの世界に入る前は、リア充は俺達一般人のことを普通の人間だと思われていたみたいなのだが、いざこちら側の世界に足を踏み入れた途端、手のひらを返したように先ほどの言葉を無造作に扱い、俺たちの心にぐさぐさと突き刺さっていく。
俺は、そういう考えを持つ人間が大の苦手である。もうこの際はっきり言っておこうではないか。大嫌いだ。
俺がまだこちら側に入っていない時だが、俺の友達に彼女ができたという話を聞いた。俺は当時おめでとうと、声をかけて祝福をしてあげた。してあげたまではよかったのだが、俺がネットワークの世界に入った途端、その友達は俺のことを汚いものを見るような視線で、見つめてきたのだった。
俺は当初、なんで?と思っていたのだが、いざ現実を見つめなおしてみたところ、ネットワークの人間は、高校を中退している奴らと、30才を超えてもいつまでたっても独身という人たちが多く、そのうえ腐っている奴らが多い。
リア充は、そんな奴らをここぞとばかりに心身ともに傷つけていくのだ。
何度も言うが、俺は、そういう考えを持つ人間が大の苦手である。もうこの際はっきり言っておこうではないか。大嫌いだ。大事なことなので二回言いました。
俺が言いたいのはこれだけだ。俺は兎に角リア充に物申す。