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親離れ 大熊座流星群 そして

作者: 常先輩
掲載日:2014/03/22

親離れ 大熊座流星群 そして


                       常先輩



俺は肉を引きちぎった。

俺が魚を取りに行っている間、俺の洞窟に別の熊が居やがった。俺の洞窟に入ってくるとはいい度胸してやがる。俺はそいつを一発でのしてやった。

おれはそいつの肉を引きちぎった。


この洞窟に居座って何度かの夜が過ぎた。その暗い夜は、決まってある時間ごとに来ることはわかっている。この頃、その暗闇が俺に語りかけてくる。俺に語りかけてくるその感情は、最近わかってきた。俺は一人では居られないみたいだ。寂しいという感情が、決まってくる暗闇と同時に俺の中にやってくるようになっていた。


時より長く寒い時間が過ぎる。その前には俺はたらふくウサギと魚を口の中にほおりこみ、その時間を過ごす。その長く寒い時間も、俺に語りかけてくる。それは、おとうさん、おかあさんに会いたくないのか?と言っているようにも聞こえるし、また他の何かの感情も湧き立たせる。その他の何かの感情は日に日に俺の中に大きな躍動をもたらせた。


その感情の中、俺は目を覚ました。洞窟の外が明るいので、朝を迎えたのがわかった。いつものように腹が減ったので、今日は兎あたりを探すことにした。その辺の木の間を歩き回り、それらしき土の穴や洞窟を見つけては俺はあさった。


最近思う事がある。段々と、取れる兎や木の節々に着いている赤い物、魚、とにかく俺の食う物が少なくなってきていると。俺が獲りすぎたのか、俺以外のやつが獲っているのかわからないが、やや窮屈に思えてきた。


木の間を抜け、腹をすかして歩いていると、木の陰から俺と似た姿のやつが現れた。そいつは俺よりも体は小さく、何かわからないが、憎めない何かを俺に感じさせた。そいつが何かを口にくわえているのが見え、それを見てみると、獲れたての兎だった。

「こいつか!」

俺は最近の食う物のなさがこいつのせいだと確信した。こいつ俺の食う物を横取りしやがって!なにしやがるんだ!と思ったが、何かわからないが、どこかこいつを憎めない俺がいた。そいつは俺に気がつき、少し俺を見て動きを止めていたが、すぐ何処かへ早足で逃げていこうとした。その逃げ足は遅く、俺は何かの興味に煽られてそいつの後を着いて行った。そいつはしばらく、俺の帰る洞窟とは逆の方へと歩いた。そいつは俺が後ろから着いてくるのを感じているのか、時折立ち止まり後ろを振り返り、何故か判らないが、俺が着いてきているのかを見ているようにも見えた。やがて、ある大きな土の塊の所に着き、そこには俺の住んでいる洞窟に似た、少し小さめの洞窟があった、そいつはその洞窟へ入って行った。俺はその洞窟が、俺に似たやつの住み家と感じた為、まだ中には、俺に似たやつがいるのだろうと考え、自分を守るようにその洞窟に近付いていった。


俺はその少し小さな洞窟に顔を入れた。俺の住んでいる洞窟よりも、奥がなく、俺に似たそいつはすぐそこに丸まっていた。そして良く見るとさっきまでくわえていた兎はなかった。俺はそいつを襲う気になれなかった。

「こいつ、さっきの兎どこやったんだ?」

俺がそばに来てもそいつは怖がろうとはしなかった。そいつの眼は、俺の眼をじっと見ていた。俺もそいつの眼をじっと見ていた。

「どうした?」

俺はとたんに、そいつの事が心配になった。どうした?腹でも減っているのかと、そいつの事がとたんに心配になったのだ。この心配する感情は、俺には今までになかった。とたんにそいつの事が心配になったのだ。


そして、そいつの腹の下がもぞもぞと動きだした。

「グアァ、グアァ」

そいつが何かを言いだした。そいつの腹の下から、もっと小さな俺に似たやつが、先の兎をくわえて出てきた。

「こいつ、子がいるのか」

そいつがグアァグアァと言いながら、その小さな生き物を、大事そうにもう一度腹の下に隠した。そしてまたそいつは俺の眼をじっと見てきた。

俺のそいつらを心配する気持ちは、いつも来る長い夜が語りかけてくる事と同じだった。

「お前もそうなのか?」

そいつの眼は俺をじっと見ている。俺もそいつの眼をじっとみた。子を大切にしたいのか、俺に一緒に守ってほしいのか、何かを必死に訴えかけるそいつの気持ちが俺の中に激しく入ってきた。

「なんだよう、一緒に居ようにも、この洞窟小せえじゃねえか」

一緒に居てやってもいいが、俺の入れる場所がない。俺はそいつらに土が掛からぬよう、前足を使って、洞窟の隅を掻き始めた。

前足が疲れるほど、洞窟を掻き続けていたら、やっと俺の入れそうな場所がでてきた。あたりが暗くなり、眠る夜が来たが、俺は腹が減っていたので、大きな水の流れる場所へ向かった。そこで俺の腹が膨れるまで魚を食ったら、残りの魚を3匹ほどくわえ、あいつらの洞窟へ戻った。洞窟へ戻り、俺に似たそいつらの前に魚を落としてやった。小さな方は勢いよく魚に飛びついたが、大きな方は魚を食べようとしなかった。どうして魚を食べないのかわからないが、俺は腹が膨れているのだろうと思った。俺はその洞窟でそいつらと夜寝た。


それから俺は、前に居た洞窟へは一度も戻らず、その自分で掻いて作った洞窟で暮らした。そいつらは俺のそばを離れず、ずっと一緒に俺と居た。食いものはいつも俺が獲ってきた。獲ってきた物をそいつらの前に落すが、大きいやつはほとんど食わなかった。大きいやつは時折俺の眼をじっと見てくる。その時は俺もじっとそいつの眼を見ている。そして心配になる。こいつがいつもあまり食わないことも心配だが、もっとちがう、こいつの事を腹の底から心配してしまう何かがあった。それは夜を迎える度強くなっていく。


獲ってきた魚を、おおきいやつの口元へ、俺がくわえて運んでやった。そいつは魚の匂いを嗅ぎ、食うのをどうするか考えていたが、俺の口から魚を取っていき、魚を食った。この大きいやつは、このチビに食わせる為に食わずにいたのだとわかった。

「そうか、俺がもっと食うものを持ってこればいいんだな」

俺は大きいやつに食い物を食わせたい、チビにも沢山食わせたい、と思った。こいつらに沢山食わせることが、俺の夜にくる気持ちを散らすことが出来ることを知った。



俺はやっけになり食い物を探した。俺も食わなければいけない。俺の分も探さなければいけない。いつもは俺の分だけ探し食っていたが、もっと探さなければいけない、俺は少し困った。最近の食い物の取れなささは自分の食う分だけでも困っていたが、この大きなやつとチビの分もとなると、まる一日中食い物探しになっちまうと。俺は今まで以上に目を光らせ、土の中、水の中をやっけになって探した。


俺は、寝ていない間、ずっと食い物探しに明け暮れていた。取れないときもあった。取れないときは、あいつらにあわす顔がないので、その時には洞窟に戻らずその辺で寝た。取れたときは、「ほれ、取ってきてやったぞ」と、でかい顔をして戻っていくが、最近取れない日が続いてきた。俺が取りすぎたのか、まだ他に食い物を取っているやつがいるのかわからなかったが、ともかく取れないことが多くなってきた。


俺の足は、食い物が取れない日につれ、だんだんと洞窟より遠くへと向かっていた。あいつらのためにやっけになり遠くへと足を運ぶのだが、その遠くへ行こうとする自分の中に、また、いつか感じた俺の中の寂しいという気持ちが沸いてくる。その気持ちを感じた時はたまに洞窟へと足が戻ってしまうのだが、食い物を取れないようなら、戻れないこともわかっているので、また、さらに遠くへと向かった。遠くへ、遠くへと、足を運び、次に、足場がやけに悪い場所へときた。いつもなら爪を土に押し込み歩くのだが、その足場は俺の爪より固く、そこは爪が押し込めなかった。やけに硬い土の上で歩きにくいどころか、そこらは角ばった大きな木だらけになっており、見渡しもすごく悪かった。そこはいろいろな臭いがし、その臭いの中には食い物の臭いもあった。その食い物の臭いだけを俺は追った。

目先に見えた角ばった大きな木を通り過ぎると、俺よりも少し小さな生き物に出会った。

「く!熊だ!」

その生き物は大きな泣き声をあげ、必死に俺から逃げようとした。俺はそいつを追いかけた。そいつはまっすぐしか逃げず、すぐ俺に追いつかれ、俺の一撃でくたばった。歯でくわえるとそいつは重く、洞窟まで運べるかどうかわからなかったが、運ぶしかなかった。俺はくわえた獲物を持ち、洞窟へ戻ろうとしたが、どこからかそいつの仲間が一匹現れた。

「このやろう!はなせ!」

そいつは棒のようなもので俺に殴りかかってきた。俺は前足でそいつの頭を引っかいてやった。そいつはばたばたと固い土の上で騒いでいたが、二匹も持って帰れないので、そいつはそのまま置いていくことにした。


重たかった食い物を洞窟まで運び終えた。俺は疲れたが、食い物をもってきたあとの大きなやつとチビの喜ぶ姿が見れればそれでよかった。チビが食い物の皮が噛めないと困っていたので、皮だけ俺が破ってやった。その皮を俺は食おうとしたが、そいつの皮は噛み切ることができず、食えなかった。二匹が食っていたが、すこしだけ俺も分けてもらった。取ってきた食い物は一晩でなくなった。また俺はあそこまで食い物を探しに行かなければ行けないと思うと疲れるが、とりあえずその日は寝た。


あたりが白く眩しい冷たいもので覆われてきた。寒く長い夜が近づいてきているのがわかった。俺が一生懸命食い物を探しているのに、この白い冷たいものがなにかと邪魔をした。俺はこの白い物に腹を立てた。食い物が取れない、そしてこの白いものが食い物の目隠しをする、俺はいろいろなものに腹を立てた。毎日毎日食い物探しだ、俺もあまり食えていない、この白い物のせいで歩きづらい、チビはさらに食い物を食いだす、そして、寒い長い夜が近づいているので、もっと食い物が必要だ、俺はいろいろな物に腹を立てた。

暗い夜が三度か四度か来たが、俺はまったく食い物を探すことができていなかった。洞窟の二匹は何か自分たちで食い物を探しているだろうか?不安に思っていたが、だんだんとその不安も薄れてきた。だんだん、だんだんと、食い物がみつからないことだけに俺の気持ちは腹が立った。


俺はもう忘れていた。あの洞窟に大きなやつとチビがまっていること、寒く長い夜がもうすぐ来ること、もうどうでもよくなってきていて、そしてそれらの事すべてを忘れてしまっていた。


「食い物!食い物だ!食い物はどこだ!」


俺は洞窟から遠くの、いつか来た土が固く歩きにくい場所まで来ていた。

「ここでまたやつを獲ってやる」

俺は角ばった大きな木の隙間を渡り歩き、一匹やつを見つけた。

やつは俺に気づくことなく歩いていた。俺はやつの後ろから近づき、前足で一撃した。やつはごろりと前に倒れこみ、すぐ振り返ると、

「わぁー!」

と鳴いた。

やつはあわてて首のそばにあった小さな木の枝を口にくわえた。そしてそのくわえた木の枝からけたたましい大きな音がした。

「ピィーーーーーーーー!」

その音が白いあたり一面に響き渡ると、あたりから一人こいつの仲間があらわれた。

「修ちゃん!逃げろ!」

そして、出てきた仲間が両手で持っていた黒い木の枝から、とてつもなく大きな音がした瞬間、俺の全身に激痛が走り、そのあと俺の体すべてを、白い大きなものが包み込んできた。

「なんだ?!」

俺を包み込んできた白い大きなものは、一瞬で俺が今感じた激痛を消し去った。そして俺の体全体がガチガチになり、まったく動けなくなった。

「なんだ?!どうした?!」

今まで見たことのない、激しい真っ白な明かりが目の前にあり、それ以外何も見えなくなっていたのだ。


体がまったく動かないことと、俺を包み込む真っ白な大きな化け物が俺を恐怖にした。

次第に、俺を包み込んでいる真っ白な大きな化け物が、ゆっくりゆっくりと、大きな黒い化け物へと変わっていく。いつも来る夜よりも、もっと暗く黒くなっていく。

「夜がきたのか?」

今までになかったこの恐怖だったが、この中には自分ひとりしかいないという寂しさもあった。


何かが目の前に見えてきた。


「あ!おとうさんとおかあさんだ!」


俺はものすごく懐かしんだ。


「あ!おとうさんとおかあさんがいる!おとうさん!おかあさん!おなかすいたよ!」


俺は懐かしく、おとうさんとおかあさんにお腹が空いたことを伝えた。


「そうか、お腹が空いたのか。だったら俺について来い」

「ぼうや、おとうさんについて行きなさい」


おとうさんと、おかあさんは、いつものようにとても優しく、ボクを迎えてくれた。


「おとうさんがいるから、食べ物いっぱい食べれるね!おかあさんがいるから安心だね!」


ボクは、おとうさんとおかあさんについて行った。


                          大熊座流星群   完


      

      

      そして      小熊座流星群へと続く




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