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一方その頃……(ってよくあるじゃん!ね!?)

どうも、はんp(ry


お待たせしました。4話連続投稿です。

第26話です!

---------フィア・エル・グレイ---------


ズゴゴゴ…………


「ようやく収まりましたか……」


突然の地面の揺れが収まると同時にクロウ君は白銀の愛剣を鞘にしまう。

彼の周りには本屋らランプやら何やらが足の踏み場がないほど散在していた。


中にはその原形をとどめないものまである。


言わずもがな、棚から降り注いで彼に危害を加えようとした品々だ。


「何やら紋章の様子がおかしいというので見に来ましたが、なかなかどうして、これはまた一大事ですね……スノーフィア様も探さなければならないというのに」


クロウ君の見据える先には直径2メートル程度の大きな紋章がある。

繊細な純白の線によって複雑かつ繊細に描かれた謎の魔方陣。


「フィア・エル・グレイの実史上、スノーフィア様のひいひいひいひいひいひいおじい様に当たる、『シェイル=ブリューゲル』が死の直前、3か月この部屋にこもって完成させたといわれる魔方陣。いまだにその用途は不明。存在理由も、効果も不明。名のある魔術師が何度もこの魔法人の解析に努めたが成果は得られず。分かることは、『この魔法陣は生きている』ということだけ。だが……」


以前、倉敷派祓はこれと対になる床の魔方陣を丸ごと持ち去ってどこかへ消えてしまった。壁にある魔方陣とは違って床にあった魔方陣はただ描かれているだけであったもの。ウンともスンとも言わずただ描かれていただけ(と言ってもいい)魔方陣。


なのに……


「彼、倉敷派祓はそれを起動させただけでなく、その効力まで持ち去ってしまった」


壁にある魔方陣と同じように描かれた床の魔方陣の上でクロウ君はため息をつく。


「しかし、今はこっちですかね。この魔方陣が他の色を呈するなんて今までの記録には無かったはずだ」


そう、今は床よりも壁。

クロウ君はこれまでにない異変を目の当たりにしていた。


地震が起きるまで純白だった魔方陣の線が、一部分だけ、黄色と茶色の入りまじった色へと変色していた。正確には、中心に描かれた、元の半分程度の大きさの円形の装飾の外側、上部分。そこだけが変色していた。


「地震といい、この色といい……まさか、な」


クロウ君はある可能性に行き当たったが、そこで考えるのをやめた。


「もしそうだとしても、私が今ここから出てどうこうできるものでもありませんね」


そうだ、彼には他にやることがある。

王国を取り戻した新たな女王の代わりに今ある国を守らなければならない。


「それに、何かあれば派祓さんが何とかしてくれるでしょう。というよりは……」


クロウ君は再びため息をつき、壁の紋章に背を向ける。


「発端は彼かもしれませんし。放っておきましょうかね」


言葉と裏腹に、クロウ君の眼は真剣そのものだった。

その内にあるものは、


「スノーフィア様に何かあったら……殺すぞ倉敷派祓」


「こえーよクロウ」


「ビリーさん……居るなら言ってください」


いつの間にか、クロウ君の背後に大柄の男が佇んでいた。ビリーと呼ばれる彼は以前派祓に「おっちゃんA」と呼ばれていた男だ。


彼はその外見からは想像も出来ないほど気配を隠すのが上手い。


「そんなことよりクロウ、その『倉敷派祓』の目撃情報が入った」


その言葉に、クロウ君の眼がわずかに細まる。


「どこですか?」


「グランツ王国。まったく、あんな遠いところまで……」


グランツ王国は、ここ、フィア・エル・グレイから見て北西にある大国。年中雪に囲まれたとの国はここからおよそ馬車で一か月はかかる距離だ。直線距離的にはもっと短いのだが、途中に巨大な山脈があるため、時間がかかる。


しかも、あそこは『大地の皇』の加護を受けているという。


(まぁ、だいたい予想通りか)

「……というか、その情報は一体どこから?」


そもそも、そんな遠いところにいる人間を良く見つけられたものだ。通信用の水晶があるにしても、クロウ君はその国に自分の部下を派遣した覚えはない。


「部下の話によると、情報源は『第三皇子(サードプリンス)』と名乗ったらしく、『転移術式』の事を知っていた。信憑性は高い」


「そうですか……」


(『転移魔法』がこの国由来だと知っている……いったい何者なんだ?それに、第三王子…?彼はまだ15にもなっていないはずだが……)


恐ろしい違和感が彼を襲った。

確かに、ここフィア・エル・グレイ王国はかなり昔から『無属性魔法』に関しては先進国であり、その集大成ともいえる『空間転移術式』は有名な話であった。しかし今はそれを扱えるものがいなくなってしまったため、大衆の記憶の中からも薄れてゆき、今知る者はサフィ、クロウ君、派祓、そして元解放軍のメンバーくらいのはずだ。


それなのに、他国(らしき)の人間がそれを見てかつ、迅速にこちらに連絡を入れてきたのだ。不審に思うのは仕方がない。


(そもそも何故我々が倉敷派祓を探していることを知っている……?)


「クロウ…?」


「なんでもありません」


そこまで考えて、横やりが入った。

咳払いをしながら彼の後を追ってその部屋を出る。彼は既に部屋を出かかっていた。


クロウ君はもう一度壁の紋章を見る。


「そちらには私が伺うことにしましょう」


「え、マジで?」


「マジです」


「……りょーかい」


2人は今度こそ部屋を出た。






---------グラン・シエル---------



「4000年ぶりの目覚めってところかしら」


大地の叫びをじかにその耳で聞く。


「お嬢様が201987歳の時にございますね。あのころはまだ幼かった」


それを聞いて懐かしむ。


「幼かったって何よ、精神的にとか言いたいのかしら?」


「いえ、めっそうもない。私はただ懐かしんでおるのです」


「歳とりすぎるのも考え物よねー」


「私はまだ若いですよ」


「どーだか」


とあるお城のバルコニーでそんな無駄口話を交わす人の姿をした龍と人の姿をした吸血鬼がそこにいた。







---------?????????---------


とある無人島。

何の変哲もない無人島。


ただしその場所はこの世界全ての漁師、船乗り、海賊、各国海軍etc…が畏怖する死の海域を超えた先に存在する未踏の楽園。


その、未踏のはずの楽園に一人の男が足を踏み入れていた。



「なるほど、最初は『大地の皇』か。道理はかなっている」



男はサングラスをかけ、白い白衣を身に着けていた。



「その理論は正しい。こちらから捻じ曲げたのだ、その『歪み』を和らげる方向に事が運んでいることに私は何の疑問も抱かない」



髪は黒、誰かと似ていて天パーだ。

ただし、瞳の色はサングラスで分からない。



「同時にそれはこの世界に『意思』があることを証明した」


「ならば場所はここでいいだろう」


「ユキがどこにいるかは知らんが、まぁいい。私は私の理論の行く末を見守るとしよう」


男は自分自身に語りかけるように言葉を紡ぐ。

男以外に人間はいない。あるのは植物と、僅かな動物のみ。


「必用なら私は『彼』を導入する準備もできている」


男は両手を空へと大きく火広げる。



「さぁ!みせてくれ!!!この実験の結末を!!!」



その声は多分、誰の耳にも入ることはない。

全宇宙史上最強最悪のキチガイ科学者がそこにいた。






---------?????????---------


少女は地面の揺れを懐かしんだ。

だが、地震は彼女に楽しさを与えることはできなかった。

普段起こらない体験に恐怖(スリル)がある……そういったスリルを楽しむ事は彼女にはできなかった。


ただし、彼女は怖がりなのではない。


「あーあ、目覚めさせちゃった…あ、紅茶こぼれた」


「ユキ様、ここは危険です。今すぐ……」


「いいわ。問題ないわよ。この建物は絶対に(・・・)倒壊しないから」


「…左様で」


白髪紅眼の少女は相変わらず、どうでもいい事のようにテーブルの上に用意されたスコーンを囓る。

『ユキ』と呼ばれた少女は、眼前に広がる5つの超大型モニターの一つに目を向ける。


「にしてもやってくれた、闇ギルド『闇夜の黒猫』。最初から大地の皇そっちのけで『M-フラグメント』狙いだったなんて。ブッ飛んでるわね。ふふっ」


ブッ飛んでいる。

その言葉がそのままブーメランで彼女に飛来することは彼女もわかりきっている。


しかし、それを自覚しているかどうかで、その『質』は変わってくる。

さてはて、この理論は誰のものだったか……。

(考えたって仕方がない。意味ないもの。きっと)


「アレがグランツ王国で採掘出来ることは王族の、しかも一部の人間しか知らないはず…」


「だから、このクーデターでしょ?王族にしか知らないことは王族に直接聞けばいい」


興味無さそうに少女は言う。

「ならなんでお前らも知ってるんだ」とツッコミを入れる人材はそこにはいなかった。


彼女の話によれば、『闇夜の黒猫』という闇ギルドのボスはとある鉱石の為だけに一国傾倒の大事件まで起こしたことになる。極論、目的の物さえ手に入れば、後はその国がどうなろうと知った事ではない。


むしろ、闇夜の黒猫(むこう)にしてみれば、国外持ち出し及び使用一切の絶対厳禁指定の掛けられた、とある鉱石『M-フラグメント』を知らぬふりしてそのまま埋めておく様な『つまらん奴ら』など死んでしまえばいいだろう。程度にしか考えていないはずだ。


そこまで相手の思考を予想してみたところで何も面白くない。

しかも、今の頭の外(ゲンジツ)はもっと面白くない。


「……向こうももう分かってるだろーけど、『エルーマリア』、『ラ・ヴォルカノン』、『グラン・シエル』各国に通達を。大地の皇『ヘリオス・グランデ』が目覚めた。と」


少女は死ぬほどつまらなそうな顔でモニターを見据える。


「かしこまりました」


男はその言葉を最後に少女の後ろから姿を消した。



「今ある事象などうでもいい。早く会いたいよ、派祓ぁ……」




手を伸ばしても何も掴み取れない。

でも今彼は同じ世界にいる。同じ空気を吸っている。同じ大地に立っている。


彼女の寂しさはそれでまぎれた。



「私は今ここにいるよ、派祓ぁ……早く」



その先を口に出すことができなかった。


彼女は両手で自分の肩を抱く。

その心はただ一つ。寂しさに震えるか弱い少女がそこにいた。

連続投稿1話目。


次話以降は一時間ごとに更新されていきます。


…そこ!フラグ立てとか言わない!

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