大地の底から這い寄るこんt(ry…なんでもないです
どうも、はんp(ry
あけましておめでとうございます!
第25話です!
カラン
投げ捨てられた兜が地面で音を響かせる。
360°王族派と宰相派の兵士たちの闘争が取り囲む中、その中心で一人の兵士が顔をさらす。
「き、貴様、確かに殺したはず……!」
「その事実を証明したくば、証拠を持ってこい証拠を。死を確認できない限り生きている可能性を思考しろ。慢心こそ最大の隙になるもんなんだってーの(笑)」
派祓は兜を取ると近くに投げ捨てた。
後ろを振り返れば王たちが他の家族たちを助け出して絞首台の上で涙を流しながら抱き合っている。
「派祓さん!よくぞご無事で……!」
「ったく、遅いのよ派祓!」
そして、左側に、泣きそうな顔のミラの姿と、なぜか怒っているサフィの姿があった。
「悪かったって……さて、そろそろかな」
2人のお姫様に心配させたことを口で謝る。
そして、派祓は片手を上げてラーギィめがけて振り下ろす。
「さぁ、今こそ反逆者共を打ち取られたし!!!」
ワァァァァァァァッ!!!!!
今度は城の方向から、増援が来た。
予め打ち合わせをしていたミラの味方である王族派の騎士達だ。
「ばっ、馬鹿な!?」
「これでお前の野望もおしまいだな?」
派祓はラーギィと正面から向かい合った。
そして派祓はいつにもなくサディスティックな笑みを浮かべる。
「さて、借りを返させてもらおうか」
「く、くそっ!まだおわっとらんぞ!!!」
そういうラーギィの足元には半径一メートルほどの、黄色と茶色の入り混じった魔方陣が展開されていた。少しだけ光ったその魔方陣の上でラーギィが何かを唱えると、次の瞬間、土くれの塊が無数に飛んできた。
「ちっ…!」
ドカッ ズドン ドスッ
真後ろは王族たちのいる絞首台。
派祓は迫りくる土塊の弾丸を素手で破壊する。
もちろん、派祓の束ねた無属性魔素を前にはなすすべがない。
が、無数の土くれの塊の中の1つが突然爆発した。
「っ!?」
突然の土煙にわずかな隙を作ってしまう。
ゴッ!!「痛っ!」
土煙の中から新たに無数の土塊の弾丸が飛来する。
「くそっ!」
とっさに両腕で顔を守る。
わずかなダメージであったが、バランスが崩れ膝をつく派祓をみてラーギィが笑う。
そして、昨晩と同じ魔方陣が派祓の足元に展開され、発動する。
「あの時はうまく逃げたようだが、今回はそうはいかんぞ!」
ボコッ!「っ!?」
突然派祓の足元に直径二メートルほどの穴が開いた。
派祓は当然のように重力に従って真下へと落下する。そして落下しながら上を見ると、その穴が塞がっていくのが見える。昨日と同じ、『相手を生き埋めにする土属性魔法』だ。
「派祓!?」 「派祓さん!」
突如あいた穴に落ちて行ったかと思えばその穴が突然塞がった。
これがラーギィの言う生き埋めにしたとい言う事。
前の世界の常識なんて通用しない。
『魔術』なんて夢物語が当たり前のように存在する世界。
何かを破壊するような轟音と共に、地面は何事もなかったかのように元に戻った。
「派祓…さん」
ミラは派祓がいなくなった場所を見据える。
胸の前で「きゅっ」と両手を握るミラの手をサフィが優しく包み込んだ。
彼女はとても穏やかな表情をしている。
「大丈夫よ」
「で、ですが!」
「昨日も同じ術を食らって今無傷で出てきたじゃない」
「し、しかしですね!それとこれとは……」
ズンッ!「「「っ!?」」」
今一瞬だけ地面が揺れた様な感覚にとらわれた。
「………な、なに?」
「いま、なんか……」
ミラとサフィが地面に異変を感じる。
ラーギィも同じように感じたようなそぶりを見せたが、特に気を向けることなく、絞首台にいる王に向かって先ほどの土くれの攻撃を与えた。
「死ねっ!!!」
「っ!?」
王はそれを見て家族たちの前に立ち、先ほど派祓が置いて行った剣を取って立ち向かおうとする。
歳を食っても王族。しかも、一国の王。そして、一家の長。
「うおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
自分の家族すら守れずして何が王か。
ガキィン! ガキィン!!!
「くっ!?……まだだ!」
一発目は防いだ。2発目も切り捨てた。
ラーギィはそれを見て持ってる杖を規則的に振り回す。
それに呼応するかのように表れた新たな土塊の弾丸を逐次発射される。
だが、それが王に届くことはなかった。
ズガァァァァァァァン!!!!!!!
「「っ!?」」
その攻撃は王とラーギィを結ぶ直線の中心、ちょうど派祓が埋められた場所から突然現れた、無数の岩や土の塊によって防がれた。正確には、巻き込まれて消滅したと言った方が正しいだろうか。
突然地面が割れて、そのさらに下。
地面の中から発せられた莫大なエネルギー波がそこにあった地面を丸ごと空中へ吹き飛ばした。
「な、なんだこれは……!?」
「ま、まさか……」
ヒュン!ズドォン!!!
「かってぇぇぇ!!!どうなってんだよこの国の地質は!!!!!」
衝撃波の後に残った地面の縦穴から派祓が飛び出してきた。
そしてそのまま穴の前に着地する。
「ま、まさか、力ずくで岩盤を砕いたというのか!?」
「おあいにくさま!今はレベルを上げて物理で殴る、ゴリ押し一辺倒の戦術しか持ち合わせてないんでなぁ!!!!!」
カラン カラン ドサッ
派祓のふるう無属性魔素のエネルギーに耐えられなかったのか、着ていた鎧のつなぎ目が千切れて地面に落ち、その下から、真っ黒なスーツが現れる。
「いい加減観念してもいいころだ。諦めろラーギィ!」
「諦めろ……だと」
ラーギィの動きが完全に止まった。
もちろん、派祓はこんなことを予想していたわけではない。
サフィ、ミラ、派祓…そして王族を含む周りの騎士たちの動きがほんの少しだけラーギィに集中した。
俯くラーギィにすべての視線が集まる。
「ふふ…クハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!」
「なっ」
彼は笑った。
天に向かって咆哮するように、狂気に満ちた笑いが辺りに響いた。
「ふざけるな!!!私がこの計画にどれだけの心血を注いだと思っている!!?3年だぞ3年!!!それを貴様ごとき浮浪者ごときに台無しにされて黙って引き下がれというのか!?笑止!!!ショータイムはこれからだ!!!!!私はこの力を持ってこの国、いや、この大陸全土を支配してみせようぞ!!!!!」
「いやぁっ!?」
「っ!ミラ!!いつのまに!?」
いつ杖を振るったのかわからなかった。
気が付けば、ラーギィのもとにミラの姿があった。ミラの顔から下は土塊に埋まっており、ミラ自身身動きが取れない状況だ。それが今、ラーギィの目の前に浮いている。
「ラーギィ!貴様ぁ!!!ミラをどうするつもりだ!?」
断頭台の上からグラム王が叫ぶ。
そして、断頭台から飛び降り、派祓と肩を並べた。
「貴様ならわかるはずだ、グラム=ドラグニル!!!各世代の王族にのみに受け継がれる『覚醒の血』の存在を!!!」
「っ!?貴様、まさか…!!!いかん!あれは!!!」
「?なんだ、どういうことだ?」
グラム王とラーギィだけで会話が成立してしまっているので派祓は何が何だかついていけなかった。それだけではない、サフィや敵味方問わず兵士たちも何が何だかわからず困惑している様子。
「焦らずとも、今から見せてやる」
ラーギィはミラが捕まっている土塊の右側に手をかざし、ミラの右手が埋まっている部分だけを破壊する。そこからは、ミラの華奢できれいな腕が露出した。
ラーギィは自分の肩に刺さった短剣を引き抜くと、今度はそれでミラの右手首を軽く傷つけた。
右手の傷口から一筋の血が流れ、手首を渡って掌を伝い、終いには地面に零れ落ちる。
「つっ!」
「…………」
ぽたっ、ぽたっ
ボロッ「きゃっ!?」ドサッ
そして、ミラは役目を終えたかのように地面に突き飛ばされ地面に転がる。
土塊は壊れてあたりに散らばった。
「これで、準備は整った!」
ラーギィはその言葉とともに、両手を天高く広げた。
同時に、足元に先ほどとは段違いな大きさの魔方陣が展開される。
「ははハはハははハハははは!!!!!顕現セよ!!!かつて終点を迎えた文明を一晩で破滅へと追い込んだその力!!!『大地の皇』ノ名を冠する始祖生命体ガ一角『ヘリオス=グランデ』よ!!!!!!!!」
ズガァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!!!
直後、黒と赤の塊がラーギィの足元をラーギィもろとも飲み込んだ。
王と派祓の両方が呆然とする。
飲み込んだというよりは、掴み取ったといった方が正しいだろうか。
なぜならそれは『大きな手』だったからだ。
その『手』にはマグマが血のように脈打っていた。
鉱石のように光り、磨き上げられたかのような漆黒の皮膚。
手の甲をこちらに向けたソレはわずかな間を置き、地面に引っ込んだ。
「なん…だ、コレ……?」
「こ、これは、まさか…!?」
その『手』が再び地面に潜ると同時に、大地がうめき声を上げた。
直後、だんだんと大地が盛り上がり始める。
その隆起は大きさを増す。
「さっ、下がれぇ!!!」
ラーギィの後ろで剣を交えていた兵士の一人の声を合図に、打ち合いを果たしていた兵士達は戦闘から避難へ脳を切り替える。
「くっ!ミラ!!!」
派祓は果敢にも盛り上がる隆起のすぐ近くで腰を抜かしているミラの元へ到達し、ミラを抱えて離脱する。ラーギィの血の付いた短剣で傷つけられていたので、そこに口を当ててある程度血を吸いだしては地面に吐き捨てる。そしてそれが終わると持っていた布きれで傷をふさいだ。
「あ、ありがとうございます」
「礼はいい。それよりなんだアレは」
「あ、あれは、もしかして……」
明らかにおかしい。
ラーギィの元いた場所から生まれた隆起はいまだに膨れ上がっている。
まるで何かが生まれようとしているかのように。
ガアアアアアァァァァァァァァァッ!!!!!!!!!
直後、叫びと共に『ソレ』は生まれる。
-----その体は何者にも勝る高度と強度を持ち、
-------その身体には血流の代わりに、何物をも溶かしうる灼熱のマグマが流れる。
その姿は『人』であった。
ただし、常識外の大きさで。
大地の皇は地上に君臨した。
いよいよ終盤ですかねー