侵入成功、繰り返す、侵入成功、おーばー?
どうも、はんp(ry
お待たせしました!第24話です!
---------数時間前---------
ズガン!
夜もまだ明けきらない頃、城の内部に重低音が響く。
ズガン!!
その音は、地面を破壊するような……
ズガン!!!
いや、地面を破壊している音で間違いない。
ズガァァァァァン!!!!
「っつつ……あの野郎、いきなり人間離れしやがって」
(人の事は言えないか……)
城の地下にある小部屋のような場所の天井をぶち破りそこへ落下した派祓は頭をさすりながら悪態をつく。周りは、槍や鎧、西洋剣やこの国のシンボルマークを飾った旗などが保管されていた。
どうやらここは武器庫らしい。
「あんな無茶苦茶な理論がまかり通る世界だってのすっかり忘れてた」
ラーギィと対峙した派祓はあれほどかっこつけていたにもかかわらず、相手の術にハマりこのザマである。とはいっても、相手の術が反則過ぎたのも理由の一つだ。
「落し穴があんな簡単にできたらかなわねぇわ」
そう、落とし穴。
突然に足元に現れた落とし穴。
派祓はなすすべなくそれに落下したのだ。
しかもそれは派祓を落とした瞬間に埋まり始めた。
「生き埋めとか残酷なことしやがるぜまったく……」
……とはいえ、その状況にもかかわらず、とっさに地面を砕くことで埋められた後でもわずかなスペースを確保することができたので派祓はこうして今も息をすることができている。
「ミラに地図書いてもらってよかったわ」
言いながら派祓はA4サイズ程度の羊皮紙を取り出す。
そこにはかなり詳細まで書かれた城の内部全体図が描かれていた。
派祓はそれを侵入前に頭に叩き込み、落とし穴に引っかかったところでとっさに今いる場所の真下にこの部屋があることを思い出したのだ。
そして、今に至る。
「なにもなしにここまで詳細なモノを……意外と頭いいんだなあいつ」
(あれでも立派な王族か……)
「さて、ずいぶん時間もたったし、そろそろ動くとするか……もうじき夜明けだ」
現在時刻は午前5時24分27秒。
ラーギィたちの口ぶりから夜が明けて日が昇り、昼くらいには人を集めて処刑を実行するであろう。
派祓はそれまでに『やるべきこと』をやらなければならない。
「……あそこが牢屋か」
派祓がいた武器庫からでて、通路を右、巡回の警備兵をやり過ごしながら牢屋へ続く階段を見つけた。
廊下の下からは笑い声が聞こえてくる。
「いよっしゃ!また俺の勝ちだ!」
「くっそ!イカサマでも使ってんじゃねぇのか!?」
「証拠はあるのか証拠は?」
「ぐっ……」
(甲冑の左側、ベルトのあたり、カードの形が浮き出てんぞ……)
ばれないように階段を下り、地下牢の入り口を覗くと、見張り役の兵士がサボってポーカーをしていた。案の定イカサマしていた見張り役は偉そうに「見回りよろしくー」と同僚らしきもう一人の見張り役の背中をたたく。
「次は絶対勝ってやる!」
言いながら見張りの兵士の一人は牢屋の奥に消えてゆく。
「さて。」
「むぐっ!?」ドサッ
背中ががら空きの見張り役を無力化することは容易い。
猿轡をかませて近くにあった縄で柱に縛り付けて無力化完了。
さて、残りは奥に消えた見張り役だが……
「き、貴様!恥を知れ!!!」
「くっ……うるさい!」
奥の方から何やら叫び声が聞こえてきた。
派祓はその声のする方へと向かうと、牢屋の中に数十人の男たちがいるのが見えた。
その中の一人が先ほどの見張り役を怒鳴りつけているようだ。
「我らが王、グラム=ドラグニル様から受けた恩を忘れたか!?サーシャ様、レ・ア様、ハイドン様、カイラ様……そしてミ・ラ様が我々騎士だけでなく城下の民の暮らしを良くしようと尽力なさっていたことをよもや忘れたとでも言うのか!?」
「……あのお方たちの恩を忘れたというわけではない!でも、ダメなんだ!!!今のままじゃ、我が国は……俺の夢見てきた国とは、ちがうんだ……!!!」
割れている。
ミラの言った通りだ。
『良くしよう』とする意思は同じ。でも、方向性は全く違っている。
全ては自分たちの国のため。敬意を表するほどの愛国心。
それでも、運が悪かった。
「俺は、ミラの味方になっちまったんだ」
「っ!?」
バキィン! ズダァン!!!
砕けた。
何かしらの金属で作りこまれた鎧が砕けた。
見張り役のその男は何が起こったのか一瞬理解ができなかった。
理解したのは彼が壁にクモの巣状のヒビを作り上げてからか。
口から鮮血を吐き出し、その男は意識を絶った。
「彼の言葉にも、あなたの言葉にも、一理ある。だが、今回はあなたの運が良かった様だ」
「な、何者だ…?」
「んー、しいて言うならミラの臨時専属騎士ってとこか?」
派祓は言いながら鉄格子を掴む。
そして、
「せいっ!」
ガゴンッ!
かなり間の抜けた一声とともに、鉄格子は引っこ抜かれた。
中にいた男たちは唖然としている。が、状況を把握した瞬間、騎士たる屈強な男たちは一斉にそこから出ようとした。
が、
「待てや」ズドン!!!
「「「「「っ!?」」」」」
派祓は右足を軽く上げ、地面を踏みつけた。
もちろん、自身のうちに眠る莫大量の『無属性魔素』の一部を束ねて踏みつけた。
地面は陥没した。
もちろん、それで動きを止めないほど脳筋集団ではないようだ。
「落ちつけよお前ら。大体、ろくな装備のないお前らが厳戒警備体制(笑)のこの城内で何ができる」
※(笑)とは、派祓からしたら…なんだからねっ!byゆきちぃ(神)
今何かいた気がするが気のせいである。
「し、しかし……」
「時を待て。俺はまだ捕らえられた王族を見つけられていないんだ……」
時間に割と余裕が生まれたので、当初には無かった行動に移る。
地下牢はこの牢屋で行き止まりになっていたが、途中で王族どころか、捕らえられている人間を見つけることはできなかった。
つまりは、別の場所に軟禁されているということであろう。
男たちに聞いてみても心当たりはないという。
「……とにかく、武器庫に案内する。ついてこい」
(あ、そうだった)
城内俺より詳しいじゃんこいつら。
言ってから気づいてももう遅い。
後ろの兵士たちはそんな些細なことを気にしている余裕が無い様なのがせめてもの救いか。
「さて、」
派祓は男たちを武器庫に案内し終え、一人だけそこから出て行った。
『合図』をしたら、王族派に加勢しろ。とだけ伝え、男たちにはそれまでどこかで身をひそめていろとも言った。
「俺は早く『役』を手に入れないとな」
派祓は思考を始めた。
なんの考えもなく、思考を始めた。
始めてしまった。
派祓を邪魔するものは何もない。
どうすれば最善の結果に辿り付けるのか。
この案では、ゴールにたどり着けない。ならば、と次を考える。
彼の強みは『数』。
種類、物量、値……あらゆる『数』を彼は操る。
それでさえ、研究の副産物。
「どこにもいない重要人物。これだけ探してもどこにもいない人物。そんな、彼らに一番簡単に接触できるポジションは?」
そんなものは簡単だ。
「ラーギィ」ではない。
もっと近い人間がいるはずだ。
「兵士。」
これだ。
ここにいた。
刑を執行する兵士なら、だれにも怪しまれることなく彼らに近づくことができるだろう。
結論を得た彼の眼は大きく見開かれていた。
ただし、その瞳に光の宿ることはない。
自然科学の生んだ倉敷派祓が、そこにいた。
この章もそろそろ終盤ですかねー?