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さぁ、行動開始だ!

どうも、はんp(ry


連投~


第23話です。

---------another side---------


夜、明かりの付いていない真っ暗な部屋には王座に座り偉そうに酒を飲む男とその横に付き添った、黒いローブで顔を隠している人影があった。


ここは王の城であり、玉座。

そこには、本来座るはずでない人間が腰を下ろし、グラスを片手にワインを飲んでいる。


「…………」


男はグラスに注がれたワインを揺らしながら不機嫌そうに尋ねる。


「して、第2王女の行方は?」


「まだ見つかってはおりません」


その言葉に、一瞬だけ目を細める。


「それと、もう一つ。数日前に東門の警備兵が何者かに襲われているところが発見されました。一人は軽傷、もう一人は重傷です」


「すでに街の外へ逃亡したと?」


「いえ、逆です」


その言葉にさらに目を細める。

そんな彼の表情を知ってか知らずか、部下は報告を続ける。


「軽傷者からの証言によれば、警備を突破して街に入った模様です。男女2人組で、謎の方言を喋り、片方は大きな椅子を持っていたそうです」


いろいろと突っ込みどころはあるが、今はそれどころではない。


「…………かまわん、放っておけ」


「かしこまりました」


玉座に座る男は不機嫌そうに、グラスにワインを注ぐ。

だが、それを飲むことはなく、グラスを回し中で踊る赤い液体を眺めるだけだった。


「それにしても、あのおとぼけ姫が一人でここまで逃げ切れるとは思えん。誰か味方に匿われているか、外に出て魔物に食われたか…………まぁ、前者と考えた方がいいだろうな。天然だが頭が悪いわけではない」


ちょび髭、小太りで身長は165前後。指や首に高価な装飾品をあしらい、きらびやかな服を着て王の座を手に入れる目前の宰相『ラーギィ』は取り逃がした第二王女、城内では天然お惚けで結構有名な『ミ・ラ=ドラグニル』が意外に捕まらないという事に若干のいら立ちを覚えていた。


「かの『皇』に接触し、あと一歩で制御しきれるところにまで達した。だがそのあと一歩が足りない。王族の内の誰かが持っているはずの『証』の存在が不可欠なのだ……」


「ですが、明日になれば、現れるのでは?」


ラーギィは考えながら自分の指にはめられた指輪を撫でる。

明日は見せしめの処刑。

まだ17歳のミラにはいささか刺激的な光景である。

ラーギィは怖がって逃げるか、勇敢に立ち向かって間に合わずに家族の死体に絶望するか、その二つしか・・・・考えなかった。だが、前者はラーギィにとって非常に好ましくない。


現存している王族の中に『皇』に干渉するために必要な『証』の素質を持った者はいなかった。

だとすれば、消去法で答えはおのずと見えてくる。


「果たして来るだろうか……いや、来なければ困る」


ラーギィには確信があった。


「あの姫にはここしか居場所がないはずだ」


長年彼女のそばで彼女を見てきたラーギィはそう決定づけた。

なぜなら、彼女はほとんど城を出たことがないからだ。


なのに……


「なぜ見つからない…?」




その答えは思ったよりも早く彼の前に現れた。




「……?どうした?ルイス?」


さっきからずっと、横で控えているはずの護衛がびくともしない。

本来護衛は話に応じることはないのだが、ラーギィと、ルイスと呼ばれたその男の間には会話が許されていた。なので、いつもと違う腹心の様子を不審に思ったのだ。


「おい、返事をしないか」


声をかけた瞬間、ルイスは前のめりに倒れて階段を転がった。


「は、……っ!?なにっ!?」


ラーギィは慌てて玉座から飛びのき、体系にそぐわない速さで段の下へ退避する。

そして玉座の背後にたたずむ人影に目線を合わせる。

いつの間にか、ラーギィのその手にあったグラスが消えていた。


グィッ「お、いい味だ。高いの飲んでるなぁ…」


シュッ! パリィン!!!


グラスの中のワインを一口だけ口に含み、そのまま飲んだその男はグラスを投げ捨てた。

ラーギィはそのグラスに見向きもせず、男に視線を合わせたまま動かない。


黒みがかった茶色いフードつきのマントで身を隠した男は一歩前へ出る。


「貴様、何者だ」

(コイツ、どうやってここに入ってきた…?)


「ん?あぁ、しいて言うならミ・ラ=ドラグニル様の臨時専属騎士ってとこか?」


『ミ・ラ=ドラグニル』。

その言葉を聞いたラーギィは僅かに口をゆがめる。

案外早く、手掛かりが見つかった。しかし…


「まさか、隔離結界を破ってきたといでもいうのか!?それとも……」


「あぁ、隔離結界……なるほど。どおりで外から(ココ)の状況がわからなかったわけだ」

(また結界かよ。結界大好きかこの世界は……)


初めから城の中に潜入していたのか?と聞く前にその可能性は消え去った。。

だが、安心はできない。


隔離結界。

簡単に言えば、結界内と結界外を隔離する術式である。

術者の熟練度にもよるが、外から見える結界内の様子または、内側から見える結界外の様子を偽装することも可能。


外から見た城が静かすぎた原因はこれである。


「とりあえず謎が1つ解けた。が、それ以前にこの状況は見過ごせないかな?」


「ほう、おもしろい」


何もない地面から一本の杖が浮き上がる。

それを掴んで派祓に向ける。


「ミラ姫の居場所を教えてもらおうか!」


「教えると思ってんのか?」


「よかろう、ならば…力づくで聞き出すまで!!!」


「上等。ならば、」


軽く返答するラーギィは、わずかに構えを取る。

不敵に笑う男の背後から月の光が差し込む。



「「手加減は無しだ!!!」」



2人が動き出したのは同時だった。

夜はまだまだ長いのである。








-----翌朝




「は、反乱だ!!第2王女以外が処刑されるらしいぞ!!!」





窓から見える街の騒ぎにミラの手が震えていた。

ここは最上階ではなく、ホテルの3階。

昨夜、最上階の窓を突き破って城に向かった派祓を見送り、サフィはサフィで床をブチ抜くにより脱出を果たした。ちなみに経費は全てが終わった後、王族持ちになる予定だ。


全てがうまくいけば…だが。


この街で普通に売っている庶民の服を着たミラに同じように庶民の服を着たサフィが声をかける。


「そんな…」


「ミラ、そんなに力まないの」


「ですが…!」


作戦は見せしめ処刑のやじ馬に紛れて忍ばせていた兵士を使って奇襲させる作戦。

この作戦は派祓がすべてのカギを握る。


「お二方、準備が整いました」


そんな二人の後ろから総支配人の声が聞こえてくる。

彼はここ数日の間に命かながら逃げた王族派の騎士たちを匿いっていたのであった。異常に城内の情報に詳しかったのはそのためだ。


「行きましょう」


サフィは優しく告げる。


「えぇ……でも」


ぎゅ


「スノーフィアさん?」


「サフィでいいわ」


サフィは震えるミラをそっと抱きしめそう告げた。

ミラも徐々に落ち着きを取り戻し、わずかに母性の塊に顔をうずめた後ゆっくりと離れた。


「サフィ、その胸……私の倍くらいあります…………」


「それくらい言えるようになれば大丈夫ね」


サフィがいうと、ミラが頭を下げた。


「本当に、ごめんなさい」


「なに謝ってるのよ。シャッきっとしなさい」


「で、ですが、本当は無関係なあなた達まで……」


「はぁ……まだそんなこと言ってるわけ?」

「?」


「分かった。ミラ、これから私達は友達よ」


「ふぇ?」


ミラはキョトンとした表情で固まった。

一体この状況で何を言っているんだろうと疑問に思ったミラよりも早くサフィが口を開く。


「『友達』なら無関係じゃないわよね?」


「い、いいんですか?……私なんかで……」


「意義は認めないわ!それ以上言うならあなたの胸を直に揉みしだくっ!」


ビシッ!と人差し指を向けてサフィは高らかに宣言する。


「は、はいっ!」


勢いに押されて返事をするミラ。


わずかな沈黙が訪れる。


「ぷっ、あははは!」


「ふふふっ」


耐えきれなくなった2人が同時に吹き出し、笑いあう。

そんな和やかな風景を邪魔せぬように、総支配人は無言で目をつむり直立不動になっていた。


「さ、行きましょ。派祓が待ってる」


「彼には一番危険なことをさせてしまいました……」


「大丈夫よ。あいつは簡単に死ぬようなタマじゃないわ。あいつはあいつで敵の裏をかこうって魂胆なのよきっと。だから…大丈夫」


「ですが……」


本来、派祓が提示した作戦の結果と現在の状況があっていない。

つまり、派祓は昨日の夜、自分で立てた作戦に失敗したということになる。


派祓を心配するミラに呆れたようにサフィがため息をつく。

死んで死ぬような奴ではない。それが理不尽であればあるほど、彼は逆に強くなる。


「大丈夫よ。信じなさい。アイツ、1対100でも勝利を収めたわ」


「ほ、本当ですか!?」


「そ。だから安心してラーギィとかいうやつを懲らしめてやりなさい」


「はい…(どうして、あなたはそこまでの信頼を他人に置けるのですか……?)」


ミラは納得いかないような表情をすぐに消し、強くこぶしを握る。


(ううん、ダメ。私が信じないでどうするの?私のための彼の行動を無駄にしちゃダメ。だから…!)


「行きましょう!」


「いくわよ!」


そうして二人は目立たないようにフードつきマントで全身を隠して総支配人とともに下へ降りて仲間と合流する。





これから一国の未来をかけた救出劇が幕を開ける。






「見よ!これが今までこの国の頂点に立っていた男とその直系の者たちだ!彼らは貴君らを苦しめる重い税金を使って贅沢三昧の日々だ!……そこで私は立ち上がった!この国には革命が必要だと!これからこの国はこやつらの死と共に新たな未来へ進むであろう!!!」


広場には絞首台が設置され、そこに国王、王妃、第一王女、第一王子、第三王子、刑を執行する役割の、全身鎧を纏ったフルフェイスの兵士一人、そしてそこで高らかに演説するラーギィの姿があった。国王たちにはそれぞれ首に縄がかけられ、後ろで手を縛られていて、近くのレバーを引けばすぐに刑が執行されるまで準備が整っている。


「ラーギィ……一番私腹を肥やしていたのはあなただというのに……!!!」


「ミラ、落ち着いて。まだよ。今は我慢するの!」


まだ配置が完了していない。

ミラは刑が執行されるのと配置が完了するのとどちらが速いかで焦っているのがすぐ分かった。


「では皆の衆!この王との別れの時だ!!!」


ラーギィはそう宣言するが、街の人々はなんだか煮え切らない表情で、中にはあからさまに悲しそうな顔でその処刑を見ている者が多く、なんだか全体的にしんみりとした空気になる。


ラーギィはそれをつまらなそうに舌打ちし、レバー付近のフルフェイスの兵士に号令を……


「待ちなさいラーギィ!!!」


出す前に、人ごみの中から帽子を脱いだミラが躍り出た。

続けて額に手を当てながらサフィもそのあとに続く。


「ほう、ようやく表れたかミラ姫。だがもう遅い!私は王の座を手に入れるのだ!!!」


「そんなことはありません!いい加減、あなたの妄想はこれで終わりです!!!」


ワァァァァァァッ!!!!!


人ごみの中から数十人の兵士たちが台の中心に向かってゆく。

だが、それを見たラーギィの表情は笑みを崩してはいなかった。


「ふ、甘いわ!!!」


ズガンッ!!!


ワァァァァァァァッ!!!!!


「なっ!?」


「あー、まさかの隠し玉……」


突然地面から蓋が開いたかと思うと、その中から宰相派の騎士たちが一斉に飛び出してくる。あっけにとられた王族派の兵士たちはなんとかその場で持ちこたえてはいるが、これでは王たちの救出に向かえない。


「土属性魔法……」


ミラは苦虫を噛んだような表情をする。

先ほどのは魔法で地面にスペースを作り、その中に兵士たちを待機していたのだ。


ラーギィはその表情を見てにやにやと口をゆがませる。


「ミラ姫、惜しかったですねぇ。昨晩仲間を城に潜入させたようですが、彼は私が地面の底まで生き埋めにして差し上げましたよ。大方、牢屋の兵士たちを助け出そうとしたのでしょうが……はっはっは!!!」


「う、嘘、派祓が……?」


「…………」


突然告げられた事実にミラとサフィ……特にサフィが一番驚いている。

この作戦の一番の要である派祓が一番最初に死亡した。


これが意味するところは……敗北。


「に、逃げるのだミラ!」


「はやく!今のうちに逃げるのです!」


「逃げて!ミラ!!!」


「そんな、私のせいで…?うそ、いや……ぁ」


王と王妃と第一王女がミラに叫ぶが、ミラには届かない。

自分の作戦が失敗に終わってしまったことと、そのせいで一般人を死なせてしまったことのショックで周りを見失っていた。


「そこの兵士!ぼさっとしてないでさっさとレバーを下すのだ!!!」


「くっ!」


その瞬間、サフィはミラを強引に引きずって遠ざかろうとした。

見物人たちはすでに全員逃げているので道は空いている。だが、


「離して!お父様たちが!!!」


ミラがサフィの拘束を振り切り、王のところへ戻ろうとし、あと30メートルのところでサフィに再び止められた。ミラはそれでも、力ずくで前へ進もうとする。


そして、それを見たサフィが右手を高く振り上げる。


「お・ち・つ・け!ミ・ラ=ドラグニル!!!」


パァン!「っ!?」


豪快な平手打ちがミラの右頬に直撃した。

ミラはその場で腰を抜かして座り込んでしまった。

だが、そんなこともお構いなしに、サフィはミラの胸ぐらをつかむ。


「アンタ!この国のお姫様でしょ!?あんたのためにどれだけの人間が戦ってると思ってるの!それをアンタが無駄にするっていうの!?」


「そ、れ…は……」


泣きそうな顔のミラを見たにサフィは手を放した。

そして両手でミラの頬をはさむ。


「むぐっ!?」


「いい?あんたは逃げなさい。ここは私が何とかしてあげるわ」


「でしゅが!」


「あら、私の力を目の当たりにしておいて、まだそんな泣き言言ってるのかしら?」


ミラは零れ落ちそうな涙をぬぐった。

サフィはそれと同時に両手を離した。


そして2人はうなずきあう。


((コクッ))


サフィは処刑台とラーギィに向き直る。


ポキ ポキ ポキ


腕を鳴らし、自身の無属性強化魔法を発動する。


「さぁて、私は……って、」


……だが、そこでサフィはとある単純な事に気が付き、力を緩めた。


「サフィさん?」


異変に気付いたミラが再びサフィの方に向き直る。


(あぁ、なぁんだ、そんなことか)


そういえばそうだった。

この喧噪であやふやにさせられていた。



-----どうして、あそこの兵士はレバーを引かない?



理由は単純だった。

何度も何度も命令に背くフルフェイスの兵士。

無能すぎて刑の執行ができない。なんてやつが処刑執行人なんて任されるはずがない。



-----なら、あそこにいる兵士は一体何?



「に、逃げるのだミラ!」


そう叫んでも王の言葉は届かない。



-----有能なはずなのに一個人(ラーギィ)に対してのみ無能な兵士。



王は、「かくなる上は……」と袖に忍ばせておいた短剣を取り出そうとする。

自分だけでもこの縄を解くことさえできれば家族を助けることができるかもしれない。


が、それは後ろの兵士に気づかれ、止められた。



-----命令を放棄し、この状況において異常に冷静な兵士。



「これはお預かりいたしますね」


「き、貴様……!」


王は怒りを後ろの兵士に向ける。だが、は自然に、


「こんなもの無くても端っから助けるつもりですのでご安心ください」


と、そう耳打ちした。


「は……?」


スパッ ドサッ


突然王の首にかかっていた縄が切断され、数秒後には両手を縛っていた縄が切断された。

王が後ろを振り向くと、そこには床に剣を突き立てた兵士の姿があった。


「い、一体何を……?」

彼はその言葉に耳を傾けることなく取り上げた短剣の刃を抜く。



-----こちら(ミラ)の希望にしてむこう(ラーギィ)の絶望。



「まて、貴様は……!」

その言葉は彼に届くことなく、彼は前へと進む。



-----その答えは、



「お返しだこのクソ野郎!!!!!」




フルフェイスの騎士は短剣の鞘を放り捨て、絞首台からジャンプして地面に降り立つ。

そして、その先にいる人物に向かって寸分の狂いなく短剣を投擲した。


ざくっ!「ぐぎゃぁっ!?」


その短剣は目の前の人物……ラーギィの左肩に命中した。


「き、貴様あぁぁぁぁぁぁ!!!」


ラーギィは苦痛に顔をゆがめ、地に立つ兵士の姿を認識する。

その兵士は兜を取り去り、その顔を晒す。


「死体はちゃんと確認しとけよ、おっさん」



倉敷派祓が、そこにいた。

うん。(何がだ

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